さてガジェット通信のふかみんです。今回はリッカルド・ムーティ指揮のシカゴ交響楽団の演奏を聴いてまいりました。特に印象に残ったのがチャイコフスキー交響曲第4番第2楽章の冒頭。非常に美しく、まろやかであたたかくそして分厚い低弦の音に魅了されました。10台のチェロがまるで1台の楽器のように融け合っていました。今回の演奏会、とにかく低弦の響きがすばらしく深みがあったのですが、この第2楽章は特に際立っていました。さらに中盤のクライマックスへ到達する部分は天上の音楽といってもいい響きでした。
シカゴ交響楽団は今年、創立125周年を迎えていて、記念すべき年なんだそうです。この交響楽団はこれまでにレコーディングで62回グラミー賞を受賞している世界でもトップクラスの交響楽団です。現在シカゴ交響楽団の音楽監督であるリッカルド・ムーティ氏は、イギリスのエリザベス2世、ロシアのプーチン大統領、ベネディクト法王16世、イタリア共和国などから数多くの国際名誉賞を授かっており、また、世界中の20以上の大学から、名誉称号を与えられている音楽家です。74歳だそうですが、非常に力強さを感じる指揮で、まさにマエストロの中のマエストロといった風格を感じました。
演奏会の第1ステージは、プロコフィエフの「古典交響曲」でしたが、まったくふざけた曲だなぁというのがよくわかる演奏でした。この交響曲はプロコフィエフの交響曲第1番なのですが「ハイドンがまだ生きてたらこんな曲つくるに違いねぇ」ということで作られた楽曲らしいです。その発想がそもそも変ですし、作曲家にとって大事なはずの、はじめての交響曲でそれやっちゃうのも変ですよね。相当の自信家なのですね。そして演奏自体も、その変な感じとか、ちょいとふざけた感じがメリハリ効いてよくわかる演奏になっており、こちらも面白おかしく聴くことができました。
シカゴ交響楽団は、金管セクションがすごい、というのは噂ではきいてましたが、確かにそうでした。2ステージ目のヒンデミット『弦楽と金管のための協奏音楽』は、木管楽器がないというちょっと変わった編成の曲。木管楽器は通常、弦楽器と金管楽器の橋渡しをする役目だったりするのですが、それがナシということなのです。ほぼ初めて聴いた曲なのですが、金管と弦楽器がうまく融け合っており独特の響きとシカゴ響とムーティ氏のキレのある演奏がマッチしていました。
もちろん、金管セクションはチャイコフスキーの第1楽章と第4楽章でも大活躍。この交響曲は全般暗い曲なんですが、なんだかんだでチャイコフスキーも最後は盛り上げ上手だし、シカゴ響も盛り上げ上手で、フィナーレは温度感がグッと上がってました。
マエストロがシカゴ響の音楽監督になったのは2010年頃なのですが『リッカルドムーティ自伝(音楽の友社)』によればこの時期、「この年齢になって、音楽に生きるのはただ素晴らしい演奏をするだけでは充分ではないと思う」と考えているところだったそうです。自伝は「これから先何年かシカゴで行うべきことも含めて、音楽の喜びを伝えていこうと心に決め、実現させていきたいと思っている」という言葉で締めくくられています。素晴らしい演奏だけではなく、色々な場所で音楽の喜びを伝える試みを広げていきたいと考えているとのこと。
近々、また来日公演があるとのことですが、これら日本での活動もマエストロの「音楽の喜びを伝えていく」試みのひとつなのかもしれません。また演奏を聴ける日が楽しみです。
(ガジェット通信 ふかみん/深水英一郎)
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【演奏会データ】
■2016年1月19日(火)19時より
リッカルド・ムーティ指揮 / シカゴ交響楽団
◆演目
プロコフィエフ:交響曲 第1番 ニ長調op.25「古典交響曲」
ヒンデミット:弦楽と金管のための協奏音楽 op.50
チャイコフスキー:交響曲 第4番 ヘ短調 op36
◆会場:東京文化会館(上野)
※写真はすべてオフィシャル提供のもの(Todd Rosenberg)
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