そもそも神戸・阪神間でたこやきと言えば、卵に少量の小麦粉をまぜて溶いたものにタコを入れて焼き、だし汁にからめて食べる……いわゆる“明石焼き”を指した。
近年になって大阪風たこやきに押されて言葉としての合致性は失われつつあるが、今でも祭りや初詣の会場ではこちらのほうがメインとして堂々たる地位にあるようだ。
その中でも代表的なものが今回ご紹介する『清荒神名物 たこやき 鹿野』。
鹿野の屋台はたいてい広く、座席に腰かけてお皿でたこやきを食すことができるようになっている。
注文して数分で運ばれてくるたこやきはアツアツで芳醇無比。
初めは手で持つことすらためらわれるほどの熱さだが、フゥフゥと冷ましながら爪楊枝で根気よく、少しずつ口に運ぶのがよろしい。
この世のものとは思えないほどフワフワとしたそれは、口内にからみつき、ほどけてやがて典雅な後味を残して溶けてゆく。
そして、そのうち皿に口をつけられる塩梅になったところで一気にジュルっとすすりこむのは口福の限りだ。
鹿野のたこやきは他店のものにくらべて生地がやわらかく、だし汁ときわめて一体になっている。
またそのだし汁が上品過ぎず、下卑すぎず出来がいいので何杯でもおかわりしたくなっていけない。
神戸、阪神間を訪れる方にはぜひ一度味わっていただきたい珍味だ。
鹿野はいくつかの流派にわかれて主に祭り会場に出店しているが、宝塚市の清荒神清澄寺の参道駐車場横では総本家とされる屋台が常設で営業しているので、シーズン外はこちらに行かれるのがいいだろう。
以上、中将タカノリによる2016年のグルメ紹介書初めとさせていただく。
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(執筆者: 中将タカノリ) ※あなたもガジェット通信で文章を執筆してみませんか
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