日本のインディーゲームを世界へ発信する目的で昨年立ち上がったイベント『BitSummit』が、第2回のイベント『BitSummit 2014 -京都インディーゲームフェスティバル-』を3月7日から9日にかけて京都・みやこメッセで開催しました。第1回は1日のみ、開発者とプレスのみ参加のイベントだったのに対して、今回は会場の規模を拡大して日程は3日間、週末には一般入場も受け入れ5000人以上が来場したという大規模なイベントに。約120チームのインディーゲーム開発者が開発中の作品を含む新作を出展し、来場者はそれらを実際にプレイして開発者と交流できるのが特徴の同イベントは、今回も会場に独特の熱を生み出していました。イベントの模様とその後の動きをレポートします。
『BitSummit』は、海外ゲームメディアでジャーナリスト経験を持ち、当時キュー・ゲームスでプロデューサーだったジェームズ・ミルキー氏が個人で立ち上げたイベント。昨年開催された第1回は開発者による成功事例の講演、開発者をサポートする開発環境や配信プラットフォームを提供する企業による基調講演が設けられ、作品を出展した開発者に「自分が作りたいゲームを作ろう」とメッセージを投げかけていたことが印象に残りました。
参考記事:
「自分が作りたいゲームを作ろう」 日本のインディーズゲームを世界へ発信するイベント『BitSummit』レポート
http://getnews.jp/archives/298243
作品が海外メディアの目に触れる機会を提供し、開発者を鼓舞したのが第1回とすると、第2回のテーマは「開発者が“主役”になること」だったように思います。事実、第1回の成功に刺激された開発者たちは今回に向けて新作を準備し、スポンサー企業もインディー開発者に積極的にアプローチ。開発者の中には、イベントの運営に携わって自分たちが“主役”になる舞台をサポートするという動きもありました。
●開発者にスポットライトを当てた『BitSummitアワード』
「開発者が主役」という意味でのイベントのハイライトが、最終日に発表された『BitSummitアワード』。ビジュアルやゲームデザイン、音楽、シナリオ、革新性などの部門別の優秀作品、そして大賞が発表され、受賞者にステージ上でトロフィーが手渡されました。受賞作品は次のとおり。ここでは、受賞者だけでなく次点となった開発者も掲載しておきます。
ビジュアル最優秀賞:Team Poyhaymen(『ラクガキ忍者』)
http://www.playism.jp/games/rakugaki-ninja/
次点:Visiontrick Media (『Pavilion』)
http://visiontrick.com/
ゲーム・デザイン最優秀賞:Little Big MMO (『Gangs of Space』)
https://www.gangsofspace.com/en
次点:Funktronic Labs (『Nova-111』)
http://www.funktroniclabs.com/
オーディオ・デザイン最優秀賞:Winning Blimp (『Stratolith』)
http://www.winningblimp.com/
次点:オニオンゲームス(『Million Onion Hotel』)
http://oniongames.jp/
ストーリーテラー賞:Flying Carpets Games (『The Girl and the Robot』)
http://flyingcarpetsgames.com/
次点:Artifacts (『Magic Potion Stories』)
http://artifacts.xii.jp/
革新メビウスの帯賞:RIKI(『キラキラスターナイト』)
http://riki2riki.com/
次点:Japanese Flash Game Developers & mogera.jp(『シュココーココ』)
http://mogera.jp/
メディア・ハイライト賞:オニオンゲームス(『Million Onion Hotel』)
http://oniongames.jp/
次点:グランディング(『街コロ』)
http://www.g-rounding.com/
ビットキング人気賞:オニオンゲームス(『Million Onion Hotel』)
http://oniongames.jp/
次点:Silver Second (『片道勇者』)
http://silversecond.net/
特別功労賞:ドラキュー(『重装機兵レイノス』)
http://www.dracue.co.jp/
次点:NIGORO(『LA-MULANA 2』)
http://nigoro.jp/ja/
朱色賞(大賞):Vitei(『MODERN TAXI DRIVER』)
http://www.vitei.com/jp/
次点:
RIKI(『キラキラスターナイト』)
http://riki2riki.com/
Funktronic Labs (『Nova-111』)
http://www.funktroniclabs.com/
インティ・クリエイツ(『蒼き雷霆 ガンヴォルト』)
http://www.inti.co.jp/
120近い出展者の中から優秀作品を選ぶという作業は想像を絶するものがありますが、会場では目立たないブースでも作品を評価してスポットライトを当てるこの試みは、開発者を“主役”にしたいという運営者の意志が強く感じられました。ここで注目された開発者が今後どうブレイクしていくのか、今後に注目です。
●話題=知名度? 注目を集めた作品は
『BitSummitアワード』で2部門を受賞した『Million Onion Hotel』は、PS『moon』やPS2『チュウリップ』を手がけた木村祥朗氏率いるオニオンゲームスが新作として開発中のiPhoneアプリ。『BitSummit』でお披露目されることが開催前から話題を呼び、今回の『BitSummit』の“台風の目”ともいえるタイトルになりました。
コンシューマー機で活躍した開発者の作品としてはほかにも、インティ・クリエイツが稲船敬二氏と開発を進める『蒼き雷霆 ガンヴォルト』を発表し、飯田和敏氏は故・飯野賢治氏が企画・原案の『KAKEXUN』を開発するクラウドファンディングのプロジェクトをステージイベントで発表。ピグミースタジオは『ボコスカウォーズ』を手がけたラショウ氏の新作『野犬のロデム』、グランディングは『パンツァードラグーン』シリーズを手がけた二木幸生氏による『街コロ』を発表し、いずれも話題に。
コンシューマー用タイトルで培ったクリエーターの知名度が出展作品への注目度につながるのは致し方ないところですが、インディーの開発者の中には『BitSummit』に向けてストーリーを構築していき、“主役”として注目を集めたケースも。
その代表が『LA-MULANA』のNIGORO。彼らは昨年の『東京ゲームショウ2013』で続編『LA-MULANA 2』の開発を発表してデモ版をプレイアブル出展。同時期に開催された開発者コミュニティの立ち上げパーティーでは『LA-MULANA』のPS Vita版がピグミースタジオから発売されることを発表していました。さらに、今年1月にはクラウドファンディングサービス『Kickstarter』で『LA-MULANA 2』開発の資金調達プロジェクトを開始して20万ドルの目標を超える26万ドルの資金調達に成功。ディレクターの楢村匠氏がステージイベントに出演するなど、日本のインディーゲームの顔役として今回の『BitSummit』に凱旋しました。
参考記事:
世界デビューを果たした国産インディーズゲームの続編『LA-MULANA 2』が『Kickstarter』で資金調達プロジェクトを開始
http://getnews.jp/archives/498193
1チームでここまでの流れを作り、知名度を獲得していくことは難しいかもしれません。しかし開発者同士の“横のつながり”で大きな流れを作っていく動きが今回の『BitSummit』開催への過程で見られました。それが次項で紹介する『Indie Stream』です。
●運営をサポートした開発者コミュニティ『Indie Stream』
ミルキー氏を中心に、キュー・ゲームス、インディーゲームの配信プラットフォーム『PLAYISM』を運営するアクティブゲーミングメディア、京都府が主催するコンテンツ見本市『KYOTO CMEX』などから組織するBitSummit運営委員会により主催された今回の『BitSummit』。その運営には、開発者が組織したコミュニティ『Indie Stream』が深く携わっていました。
『Indie Stream』は、2月にリリースしたiPhoneアプリ『Tengami』をヒットさせたNyamyamの東江亮氏とNIGOROの楢村氏が発起人となり、『PLAYISM』、ソニー・コンピュータエインタテインメントジャパンアジア(SCEJA)と共同で立ち上げたインディーゲームの開発者コミュニティ。『BitSummit』では『Indie Stream』参加メンバーが、出展者への情報提供やスタッフとしての参加で運営をバックアップ。自らが“主役”として上がる舞台を自分たちで作っていくという精力的な活動が目立ちました。
Indie Stream Bitsummit2014
http://bitsummitmmxiv.indie-stream.net/
『東京ゲームショウ2013』の終了後にVita版『LA-MULANA』が発表された前述のパーティーが、この『Indie Stream』の立ち上げパーティー。この場では、たとえば『Steam』や『Kickstarter』へ展開するノウハウを共有するなど開発者同士の“横のつながり”が持てる情報交換、プレスキットの集約によるメディアへの露出サポートといった機能を持つコミュニティサイトの立ち上げを予告したほか、『PLAYISM』によるインディーゲームのPlayStationプラットフォームへの展開サポートといった今後の活動が紹介されました。
その『Indie Stream』は3月の『BitSummit』を経て、4月1日にサイトを正式にオープン。現在は事前登録者がプロフィールページを公開し、プレスキットやフォーラムは登録会員が利用できるようになっています。開発者やプレスの登録はサイトから受け付け中。
Indie Stream
http://indie-stream.net/
●企業出展者が見せた“本気”
今回の『BitSummit』の特徴としてもうひとつ言えるのは、企業出展者がこの場に向けてかなり力を入れて出展・発表内容を準備していたこと。主催者メンバーでもあるキュー・ゲームスは、『BitSummit』開催に合わせて新作『nom nom GALAXY』を発表。ユーザーからのフィードバックを開発に反映する『Steam』のアーリーアクセス版としてα版を3月14日に配信することを発表したほか、デモ版を会場でプレイアブル出展しました。
nom nom GALAXY
http://nomnomgalaxy.com/
ソニーブースではVita版『LA-MULANA PORTABLE(仮)』や『野犬のロデム』、FullPowerSideAttack.comの『TorqueL(トルクル)』といったインディー作品をVita、PS4でプレイアブル出展。ドラキューがメガドライブ作品をPS4向けにリメイクする『重装機兵レイノス』もデモ版がプレイアブル出展されました。
プラットフォーム側の動きとしては、SCEがPlayStationプラットフォームでゲーム開発環境のUnityへの対応を発表したほか、インディー開発者を募るページ『PlayStation loves indies』を公開。
PlayStation loves indies
http://www.jp.playstation.com/pdr/
マイクロソフトは、開発機材やUnityライセンスの無償提供を含むXbox Oneのインディー開発者向けプログラム『ID@XBOX』を発表しました。プログラムに参加すれば、2台の『Xbox One』開発機が提供されるとのこと。
ID@XBOX
http://www.xbox.com/ja-JP/developers/id/
ユニティ・テクノロジーズ・ジャパンはインディーゲームの販売やローカライズをサポートするプロジェクト『Unity Games Japan』を発表、第1弾タイトルをブースでプレイアブル出展していました。
Unity Games Japan
http://www.unity-games.jp/
これら企業はイベントのスポンサーでもあるのですが、開催に合わせて発表や出展内容を準備してくるところに企業出展者の本気を感じました。“主役”となる開発者と、彼らへの支援を約束するスポンサー企業が共に日本のインディーゲームシーンの活性化を目指した今回のような動きが、次回以降も大きな熱を生み出すことに期待したいと思います。
●第1回の目玉『Gero Blaster』のその後
最後に、昨年の第1回でサプライズ発表され話題となった開発室Pixel天谷大輔氏の新作、『Gero Blaster』のその後の動きをお伝えします。
日本のインディーゲームの代表格である『洞窟物語』の生みの親である天谷氏は、昨年の『BitSummit』で新作iPhoneアプリ『Gero Blaster』を発表。その後「2013年春」とされていたリリース時期は延期となり、今回の『BitSummit』では天谷氏の出展はありませんでした。同作品はタイトルを『Kero Blaster』と改め、5月11日にiPhoneアプリと『PLAYISM』で配信するWindows版が同時リリースされることが発表されています。
ケロブラスター - トレーラー (日本語) by 開発室 Pixel(YouTube)
http://youtu.be/YI3h5u8Lb6M
Kero Blaster
http://studiopixel.sakura.ne.jp/keroblaster/index.html
『PLAYISM』は『Kero Blaster』と『LA-MULANA 2』、えーでるわいすの『アスタブリード』を4月11日から米国ボストンで開催されるイベント『PAX EAST』のIndie Megaboothに出展。海外にもファンが多い天谷氏の新作について、まもなく海外からの反響が聞こえてくるのではないかと思います。
以上、『BitSummit 2014』とそれに関連する日本のインディーゲームシーンの動きについてまとめてみました。120チーム近い出展者の個々の作品はこの記事では紹介できませんでしたが、取材できた範囲で可能な限り紹介していく予定です。
BitSummit
http://bitsummit.org/index-jp.html
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