今年もTGS会場において『日本ゲーム大賞』が発表され、大賞の『とびだせ どうぶつの森』以下、年間を代表するにふさわしい13作品が各賞を受賞した。だが、このところの受賞作品を見ると、単に販売本数の多かった作品か熱心な(少数の)ファンをつかんでいる作品、あるいはゲームメーカーの力関係が透けて見えるような作品ばかりが選出される傾向が続いている。続編だらけになってしまっているのも新鮮味がない。
●続編だらけの日本ゲーム市場に「異議あり!」
このような問題を抱える『日本ゲーム大賞』の反省から設立されたのが『ゲームデザイナーズ大賞』だ。日本を代表するゲーム開発者11人が審査員となり、独創性・革新性に評価軸の重点を置いて“知る人ぞ知る”面白いゲームを発掘し、称えてきた。
そんな『ゲームデザイナーズ大賞』を今年受賞したのは『The Unfinished Swan』。PS3オンライン配信専用タイトルのため知名度は低く、コアなゲーマーでもこのタイトルを知っていた人はほとんどいないであろう。恥ずかしながら筆者も授賞式で初めて知った……と思ったのだが、プレゼンテーターを務めた桜井氏のデモプレイを見て、実は5年も前の2008年に一度、目にしていたことを思い出した。
というのも、この『The Unfinished Swan』は、2008年の東京ゲームショウ会場の片隅でひっそりと行われたインディーズゲーム発掘イベント『センス・オブ・ワンダーナイト2008』においてプロトタイプ出展されていたから(※)。そして筆者はその第1回目のイベントを取材していたのだ。だが、当時見たプレゼン映像はただのアイデアレベルで、ここからどう肉付けして商品としてのゲームになるのか想像もつかないというのが正直なところだった。そのため、この作品名も記憶の彼方に置き忘れてしまっていたのだ。
しかし2008年の当時からこの斬新なアイデアにいち早く目を付けていたのがSCEだった。
●インディーズゲームに人知れず投資してきたSCE
SCEは初代プレイステーションを発売していた頃から、クリエイター発掘支援プロジェクト『ゲームやろうぜ!』および『PlayStation C.A.M.P!』を実施しており、その中からは『XI』のように実際にプレイステーションで発売され、ミリオンヒットとなったゲームも生まれた。プラットホームホルダーとして斬新なゲームを提供するため、新たな才能を発掘し、投資して育てるという地道な活動をし続けてきたわけだ。
『The Unfinished Swan』も、SCEの地道な投資活動があったからこそ陽の目を見ることができたインディーズゲームだ。南カリフォルニア大学の学生による単なる技術デモにゲームとしての価値を見出したSCE担当者の先見の明には敬服するしかない。昨年のゲームデザイナーズ大賞を受賞した『風ノ旅ビト』も、SCEが南カリフォルニア大学出身の青年に3年間も資金提供を続けた末に発売にこぎつけた作品であった。
●次世代機では遊べるインディーズゲームがさらに増える?
家庭の中心に置かれるべき総合エンタテインメントマシンを標榜するPS4でファミリーとカジュアルゲーマー層を獲得するためにはインディーズゲームが欠かせないと考えるSCEは、今年の基調講演の中で、PS4で発売が予定されているインディーズゲームのラッシュ映像を上映したが、その中にはインディーズゲームとは思えないクオリティの作品も散見された。来年はこれらの作品の中から受賞作品が選ばれることもあるかもしれない。
カジュアル層のみならず、大作・続編が大好きで保守的な日本のコア・ゲーマーにも、尖ったアイデアにあふれる斬新なインディーズゲームに目を向けて欲しい。そんな思いを強くした今年の『日本ゲーム大賞』授賞式だった。
※『センス・オブ・ワンダーナイト2008』におけるプレゼン(YouTube)
https://www.youtube.com/watch?v=1uHZWB4zcOE&feature=player_embedded
画像:公式サイトより引用
(c)2012 Sony Computer Entertainment America LLC
※この記事はガジェ通ウェブライターの「ろくす」が執筆しました。あなたもウェブライターになって一緒に執筆しませんか?
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