Nintendo Switch向けで2023年12月21日に発売された新作ゲーム『SPY×FAMILY OPERATION DIARY』を簡単に説明するとそんな作品だ。原作やアニメのファンにはそれだけでオススメできる。
特に注目したいのが原作の再現度のスゴさで、その神髄はミニゲームで発揮されている。アニメのエピソードでも描かれた「イーデン校ドッジボール」、敵の目をかいくぐって美術品を調査する「ロイドの脱出」、そして「無双」系のアクションゲームのように迫りくる敵を次々倒していく「いばら姫のお仕事」など、どれもキャラクターの個性を活かしながら病みつきになれるゲームばかりだ。
特にヨルが作ったゲテモノ料理を「うまいうまい」と言いながら次々食べていく「ユーリのおいしいごはん」はクセがスゴイ。出される料理には宿敵(!?)ロイドが作ったデザートも混ざっており、おいしそうだがユーリは嫌がるので、隣にいるアーニャに渡さねばタイムロスになってしまう。明らかにマズそうな料理を頬張りながらユーリがいちいち「うまい、うまいよ!」「姉さーん!」と叫ぶ様子はシュールすぎて笑ってしまうが、タイミングと判断力を問うゲームとして奥深い。
「アーニャの授業」も個性的だ。ヘンダーソン先生が板書している間はボタン連打でノートを取りつつ、先生が振り返って指を差したら誰よりも早く手を挙げることでスコアを稼ぐ。だが先生が振り返っても単に「であるから、このとき……」など解説が続くだけというフェイントもあり、その時に動作をするとタイムロスが発生してしまう。言ってみれば「だるまさんが転んだ」を発展させたようなゲームで、ゲームの題材としても非常に面白い。
またそんなゲームの中に何食わぬ顔で混じっている、どこかで見たようなゲームが2種類。「<ぴーつー>のおいかけっこ」は、アーニャを操作して敵から逃げながらエリア内のピーナッツを集めていくゲームで、BGMからして『パックマン』のオマージュ作品だ。エリアでは「パワーエサ」の代わりに「マカロン」が置かれており、取ると一定時間アーニャが強くなって敵を倒すことができるようになる。
続いて「<ぴーつー>のセキュリティ」は、ドアやトランポリンを使って追手を避けながらお宝を回収していくゲームで、こちらは『マッピー』をオマージュした内容だ。『SPY×FAMILY』のゲームで遊びながら、ナムコの往年の名作ゲームをキャラが置き換わる形で楽しめてしまうのは、バンナム作品ならではという印象を抱いた。
これらのミニゲームは、本編の中で遊ぶ場合はストーリーの進行に合わせて少しずつ解放されていく仕組みだ。だがタイトル画面から直接ミニゲームのモードを選ぶと、最初から全17種類、すべての難易度を選択することができる。中にはオフラインで2人対戦できるものもあり、家族や友達と一緒に楽しめるようになっている。
ゲーム本編に関しては非常にカジュアルで、「学校・家・おでかけ」というアーニャのありふれたごく普通の日々を体験できる。何か事件が発生するわけでもなければ、推理力や判断力が問われることもない。原作のコメディパートを存分に楽しめて、ゲームが苦手な方でも非常にとっつき易い内容となっている。
もちろんプレイヤーに目的はある。それはアーニャの「すごい絵日記」を完成させるため、学校・家・お出かけ先にあるさまざまな「気になるもの」を調べて写真に撮り、思い出を集めていくことだ。
撮影は「フォーカス」「アングル」「タイミング」の3つで評価が変わるが、カメラ操作時にガイドのサポートがあり、撮影自体も1回の挑戦の中で何度かやり直せるので、一部を除いてはさほど難しくは感じないはず。できない場合も根気強くチャレンジすれば突破口は必ず見つかるはずだ。
また、ゲーム内の1日の終わりには「今日の出来事を思い出す」という形で前述したミニゲームに挑戦でき、スコアに応じてPP(プレイポイント)が貯まる。ショップでPPを消費すると、コスチュームやお出かけ先へ持っていくアイテムが購入できる。
コスチュームは非常に豊富な分、全種集めるにはかなりのPPを必要とする。ただ「そのために毎回ミニゲームをやるのは面倒」という方も安心だ。ゲームが進むとミニゲームをスキップしてPPだけを得られるようになるので、そこからは着せ替えや物語に集中すればよい。
本作は『SPY×FAMILY』初のゲーム化作品として、意欲的な一作であると感じた。原作の内容、展開から考えてみると、今後はよりアクション性の高いものや、RPG色の強いものなど、専門性の高い作品がリリースされていくかもしれない。それでも本作こそが『SPY×FAMILY』のゲーム化作品の記念すべき第一作。たくさんの人に楽しんでもらえる仕上がりなので、原作・アニメファンはもちろん、劇場版公開で『SPY×FAMILY』旋風が吹き荒れているこのタイミングだからこそ、ひとりでも多くの人にプレイしてもらいたい。
文/平原学
(執筆者: ガジェット通信ゲーム班)
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