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『ELDEN RING(エルデンリング)』レビュー:冒険の果てにエルデの王となるのは自分! 苦難も達成感もプレイヤー自身が味わう真のアクションRPG

2022/03/02 19:30 投稿

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フロム・ソフトウェアの新作アクションRPG『ELDEN RING(エルデンリング)』がとうとう発売! 注目タイトルなだけあって、「仕事にならない人もいる」というすごい理由で発売日を休日とする企業も現れるなど、話題を呼んでいる。もちろん筆者も自腹で購入し、早速プレイしたのでその模様をお届けしたい。

オープンワールド×正統派ファンタジー! 美しい世界観が魅力

フロム・ソフトウェアのアクションRPGといえば、なんといっても『ダークソウル』に代表される「ソウル」シリーズが人気。ではこれまでのシリーズと今回の『エルデンリング』がどう違いは、今回がオープンワールドだという点。

改めて説明すると、オープンワールドとは舞台となる世界を自由に動き回り、探索できるゲームのこと。

多くのゲームでは、ストーリー展開に基づいて訪問可能な場所が制限されていたり、ダンジョンの攻略順が決められていたりする。そこではダンジョンAを先に攻略するか、ダンジョンBを先に攻略するか……といった形で、ある程度選択の幅をゲーム側から与えられることも。とはいえ、基本的にはゲーム側が設定した流れにしたがって進めていく。

これに対し、基本的にプレイヤーの意志でどこへでも行けるというのがオープンワールド。今回の『エルデンリング』も広大な世界を自由に冒険できてしまうわけだ。

……となるとがぜん「どんな世界なのか?」が重要になってくる。『エルデンリング』は、ドラマ『ゲーム・オブ・スローンズ』の原作者ジョージ・R・R・マーティン氏とフロム・ソフトウェアがタッグを組んで開発されており、その世界観は、剣と魔法のファンタジーを正面から描いたもの。『ゲーム・オブ・スローンズ』のように神々しく壮大で、冒険したいと思わずにいられない世界観だ。

実際、チュートリアルを終えて広大な世界に触れた時、その美しさに思わず息をのんだ。やはりなんといっても、黄金樹が美しい。

『ネバーエンディング・ストーリー』に『ロード・オブ・ザ・リング』、『ハリー・ポッター』、『ゲーム・オブ・スローンズ』とこれまでファンタジー映画/ドラマを何本も観てきて、その度にワクワクしてきた。本作のビジュアルは、そうしたファンタジー映画の世界に自分が入り込んだかのような高揚感を味わわせてくれる。

筆者は大のホラー好きなので、「ソウル」シリーズのダークなビジュアルも大好きだが、本作は正統派ファンタジーとしてのワクワク感を与えてくれるのだ。

難易度は安定のフロムゲー! 心折れることなかれ

『エルデンリング』はファンタジーアクションRPGとしてトップレベルの世界観・ビジュアルを持っている。正直、日本のゲーマーとしては『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』に本作と、日本からファンタジーものオープンワールドの名作がリリースされてとても嬉しい。だが、本作は単なるオープンワールドゲームではない。

“死にゲー”と称されるフロムゲー(フロム・ソフトウェアのゲーム)でもあるのだ。

「ソウル」シリーズに代表されるフロム・ソフトウェアのアクションRPGは、高難易度で有名。何度も何度も繰り返し挑戦しては死に、死にながら攻略法を体で覚えることから「死にゲー」とも呼ばれている。

当然、挫折し、遊ぶのをやめてしまうプレイヤーも少なくない。そのことを象徴する言葉が「心が折れる」。「ソウル」シリーズのひとつ『デモンズソウル』中に出てくるのだが、プレイヤーの気持ちを表す意味でも使われている言葉だ。

ただ、『エルデンリング』は「ソウル」シリーズではない。何よりビジュアル的にやや間口が広がったようにも思える。もしかすると若干、難易度が緩和されているかもしれない。

最初に本作のPVを観た時、筆者はそんな風に思ったが、もちろんそんなことはなかった。フロムゲーファンが心から安心できる、安定のフロムゲークオリティだ。

本作のゲーム性は概ね3種類に大きく分けられる。一つ目は、オープンワールドとして作られたフィールドマップ。二つ目がダンジョンで、三つ目がボス戦だ。

このうち、オープンワールドに関しては『ソウル』シリーズと比べると、やや難易度が低い。というのも、自由に行動可能なので、敵と正面から戦う必要がないのだ。敵に発見されづらいしゃがみ移動で近づき、背後から倒す……いわゆるステルス・キルが狙いやすいし、そもそも戦いを回避したっていい。

もちろん自由に行動できるので、その時点のキャラクターでは太刀打ちできないような強敵と遭遇してしまうこともある。ただ強敵はビジュアル的に雰囲気が違うから、遠距離からでも気づきやすい。なので、無理な戦いを回避しやすいのだ。

一方で、ダンジョンに入ると様相はガラリと一変する。なんといってもダンジョンは狭く、死角が多いので敵がどこに潜んでいるかわかりづらいのだ。

そして、敵もそんな死角を利用して奇襲を仕掛けてくる。

死角に注意しつつ探索を進め、奇襲に遭遇した場合、その場所を記憶しておかないといけない。危険な場所を覚えながら慎重に攻略していくこのプレイ感は、まさしくフロムゲー! 「ソウル」シリーズに近いプレイ感が味わえる。

そして、ダンジョン以上に難易度が高いボス戦もいつものフロムゲーの味わい。理不尽ではないが、鬼畜難易度だ。

理不尽ではないというのは、ゲーム的な都合や運に左右されないということ。ボスキャラクターの行動はパターン化されており、回避すべきポイント、攻撃可能なポイントが明確に設定されている。なので、確実に回避と攻撃を成功させれば必ず勝てる。

これを証明するのが負けイベントのボスであっても、倒すことが可能というフロムゲーの仕様だろう。

負けイベントというのは、プレイヤーが敵に負けることを前提としたイベントのこと。負けることが前提なので、負けてもゲームオーバーにはならず、ゲームが進行する。またゲームによっては負けイベントでは敵がダメージを受けないなど、そもそも絶対勝てないような設定となっていることも多い。

しかしフロムゲーでは、プレイヤーが上手ければ勝ててしまうのだ。

ここまでを読んで、「適切に行動したら勝てるんだったら、そんなに難しくないんじゃない?」と思った人もいるだろう。なんなら書いている筆者ですら「適切に行動したら勝てるんだったら、そんなに難しいとはいえないのでは……」と思い始めたくらいだ。

だが、やはりこれが難しい!

「わかっている」ということと「対応できる」ということは違う。敵のこの攻撃が来たらまず避けて、その後でこちらの通常攻撃を2発ヒットさせて……と、頭ではわかっているのだ。でも、いざその攻撃が来ても対応できない。

フロムゲーの難しさとは、そういう難しさなのだ。

40回の死の末に倒した還樹の番犬! 言葉にできない達成感

死にゲーだの鬼畜難易度だのと書いてきたが、では『エルデンリング』は難しいだけのクソゲーなのか? もちろん、そんなことはない。ちゃんと名作だ。だからこそ期待する多くのファンがおり、話題にもなるのだ。では、本作の何がおもしろいのか?

筆者が本作のおもしろさにシビれたのは、「嵐の麓の地下墓」に登場するボス「還樹の番犬」戦。「嵐の麓の地下墓」は、ゲームスタート地点からそう離れていない場所に存在するダンジョンだが、順当に進むと「林脇のダンジョン」へ先に到達することだろう。なので、筆者も先に「林脇のダンジョン」から先に攻略していれば、多少は楽だったかもしれない。

「嵐の麓の地下墓」ではとにかく苦戦した。だが、それがシビれるほどおもしろかったのだ!

RPGあるあるとして、一見強力なボスも、そのダンジョン内で手に入る装備やアイテムを使えば途端に楽勝……というパターンがある。もちろん、フロムゲーに関してはそんなはずもなく、プレイヤー自身の技術がなければボスを倒すことはできない。

「還樹の番犬」もそんなボスの一体。攻撃に隙がなく、どのタイミングで攻撃すればいいかわからない。攻撃終了後の隙にこちらの攻撃をヒットできるものの、その後の回避が間に合わないのだ。

そう思っているまま、まったく攻略の糸口が見つからずに、10回ほど負けてしまった。

筆者の勘が鈍いことは認めよう。

しかしそんな筆者でも、さすがに10回も死ねば、「還樹の番犬」の行動パターンが見えてくる。「還樹の番犬」は、確かに近距離攻撃だとまったく隙がないのだが、遠距離攻撃の後には大きな隙が生まれるようだ。そこで、距離をとって戦うことにした。

遠距離攻撃には2パターン存在する。3歩ほど進んでから剣を振り下ろすパターンと、ジャンプして落下と同時に剣を振り下ろすパターン。いずれも隙が大きいので、これらの攻撃を回避した後で、こちらの攻撃を与えれば勝てる……ハズ。

だが、これがうまくいかない。3歩ほど進んでから剣を振り下ろすパターンはバッチリ回避できるのだが、ジャンプ攻撃に対しての回避がどうしても間に合わないのだ。

さらに10回ほど死亡を重ねると、ボス戦はあきらめた方がいいのではないかと思い始めた。オープンワールドゲームなので、フィールドを探索してより強い武器や防具を獲得し、改めて挑んだ方がいいのでは……と。

というのも、この時点で安定して「還樹の番犬」のHPを半分以上削ることはできていたのだ。ということは、攻撃力や防御力がアップし、回復アイテムの量も増えればなんとか勝てるのではないか?

……しかし、ここで諦めるのは悔しいと思い、そのままボス戦を継続した。

すると、30回ほど死んだタイミングで気づいた。どうやら、ジャンプ攻撃に対しては回避が間に合わないのは、回避方向などの問題ではなく、純粋にタイミングが合っていないようだ。そこで、装備を変えることにした。

より強い装備にするのではなく、その時点での装備をすべて外し、無防備状態に。

結果的にこれが正解だった。装備を外してすぐに勝てたわけじゃないが、40回目くらいの挑戦で、見事「還樹の番犬」を打倒! 思わず口から「うをおおお!」という声が漏れ、脳内に達成感を伝達するドーパミン的物質が駆け巡った。

ちなみに、後でわかったのだが「還樹の番犬」を無視して先に嵐の関門を目指していれば、レベルアップ機能を解放できていた。『エルデンリング』はゲームスタート時点ではレベルアップできない。復活ポイントである祝福を3つアンロックした際に、巫女であるメリナと遭遇し、レベルアップ機能が解放されるのだ。

だが、これこそが『エルデンリング』の楽しさじゃないかと思う。

つまり、苦労の果てに強敵を倒すフロムゲー的な楽しさ。そして、オープンワールドで、自分なりの攻略順で冒険を進める楽しさだ。

自由・苦難・達成感……「真の冒険」が味わえる一作

レベルアップが解放されると、騎乗機能もアンロックされ、より自由な移動が可能になる。こうなってくると、おもしろさはさらにアップ。これまでのフロムゲーとは違うおもしろさが解放される印象だ。

壮大で美しいマップを自由に探索。そこには確かに強力な敵がいるが、戦いを重ね、パターンを覚えることでやがては倒せるようになる。また、基本的に自分自身の技量を高めることが前提だが、レベルアップや装備の強化なども決して無駄ではない。

確かにレベルアップや装備だけで倒すことはできない。しかし、少しずつ戦いは楽になっていく。この感覚は、キャラクターではなく、プレイヤー……つまり、自分自身が強くなっているような感じだ。

つまり、本作の主人公は、ゲーム内のキャラクターではなく、プレイヤーなのだろう。

小説やアニメ、映画では、お話の中のキャラクターが主人公として登場し、苦難の果てに偉業を達成する。そして、鑑賞者である我々は、その苦難や達成感を「共有」する形で味わう。

しかし本作の主人公はプレイヤーなので、苦難も達成感も味わうのはプレイヤー自身。キャラクターと「共有」するのではない。そう考えると、本作がなぜ難易度が高いのかも、なぜ達成感が圧倒的なのかも見えてくる。

エルデンリングを獲得し、エルデの王となるのはプレイヤー自身。「真の冒険」を味わいたい人は、ぜひ本作をプレイし、この楽しさを味わってほしい。

最後に一言、心折れることなかれ。

文/田中一広

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