今春、惜しまれつつも地上波での放送を終了してしまった『勇者ああああ〜ゲーム知識ゼロでもなんとなく見られるゲーム番組〜』(テレビ東京系)では野田ゲー披露や、18禁ゲームをアツくプレゼンしていたあの野田クリスタルが、ついにNintendo Switchでゲームをリリースするとは、同番組の熱心な視聴者だった筆者としては、謎の感動を覚え、発売日に即購入。
しかし、パーティゲームといえば、対戦プレイで燃え上がったり、2人以上でキャーキャー楽しんだりで、“みんなで盛り上がる”ことを前提に作られているものだが、果たして本作は1人でも楽しめるのか? 一緒にゲームを楽しむ相手のいない筆者が、1人で黙々と全種類を一通りプレイしてみた。
どんなゲームがあるの?
マヂカルラブリーの代表作ともいえるコント「つり革」を題材にした、その名もズバリ「つり革」や、R-1グランプリでも披露された「太ももが鉄のように硬い男てつじ(本作は「令和も!平成も!昭和も!」)」、大宮セブンの盟友・すゑひろがりずが登場する「世直しすゑひろがりず」、ジャングルポケットのおたけが登場する「おたけさいこっちょーゲーム」、既存の野田ゲーのリメイク「ボルダリング姉さん ~アルティメット・エディション~」、先輩芸人デッカチャンが登場する「ブロックくずして」……等々、何も考えずに直感で遊べるものから、細かいルールが作り込まれた奥深いものまで、様々なバリエーションの野田ゲーが楽しめて、思わず「なるほどなぁ」と唸ってしまった。
ちなみに、ほとんどが2人プレイに対応しているが、前出の“もも鉄”と、タマネギ農家が冒険の旅に出る「オニオンクエスト」は1人プレイ専用である。
今回はそんな16種類のなかでも、特に秀逸だった作品を紹介する。
ひとつは「凄六」。このゲームはひたすらサイコロを振り、相手よりも先に1兆マス先のゴールにたどり着けば勝ちという“インフレすごろく”である。
通常時は1兆のマスに6面サイコロが1つしかないが、途中には「○億進む/戻る」などと書かれているマスがあったり、道中で手に入るカードを使うことで、サイコロの数だけ進める桁数を増やしたりできる。ただし、何億マスと進む場合、移動する時間がかかるので、STOPカードで相手の進行を途中で止めることができる。しかし、カードも対戦中ずっと持っていられるわけではなく、カード没収マスなどで失うこともあって、使うタイミングが重要となってくる。
サイコロの桁を増やすタイミングや、相手を妨害するタイミングなど、判断のスピードが勝利のカギとなる。ヒリッとするような一瞬の駆け引きがとにかく燃える。すごろくの体を成しているが、実は非常にストイックなレースゲームではないだろうか。それゆえに、2人対戦では一番“リアルファイト”が勃発しそうなゲームだろう。ちなみにCOMも相当手ごわく、筆者は数週間挑み続けて未だに1勝もできていない。
もうひとつは「将棋II」。このゲームは、場外の概念、取られるまで「王」不明、プレイヤーにライフを設けて直接攻撃……等々、“将棋”というには尖りすぎた、大胆なルールの数々で度肝を抜かれた。
駒の動きも各自“個性的”で、本家将棋の桂馬のトリッキーな動きさえ霞むほどだ。動かし方はその駒を掴むまで確認することができず、さらに、駒を一度掴むと、どこかに動かすまで離せなくなる。プレイヤー自身が動きを覚えられればいいが、いかんせん駒の種類が多すぎな上に、配置される駒もランダムで決まるので、すべて覚えるのはまず不可能に近い。よって、前出の通り“場外”にしか動かすことができず、駒がそのまま退場してしまうパターンもよくある。動かし方のヒントは、駒に描かれたイラストをよく見ればわかる……こともある。
「将棋II」は駒を取られるまで、どれが王かわからないので、駒も少なく劣勢に見えても、思わぬところで一発逆転が可能となっている。よって、もともとの将棋の腕前は勝敗に影響せず、将棋初心者やルールを知らない人でも、百戦錬磨のボードゲーム愛好家と、対等かつ互角に対戦することも可能だろう。
筆者が特に秀逸だと思ったのは上記2本だが、それ以外では、「まぁまぁあぶないじゃん」もおすすめ。画面の端から飛んでくる麻雀牌の中から、自分の和了牌(両面待ちもあり)を探し、接触していくというシンプルなアクションゲーム。それ以外の牌や点棒に接触するとアウト。クリア時に獲得できる点数は役によって変わる。
クリアしていくとレベル(難易度)も上がり、牌も避けにくくなってくるので、文字通り“テンパる”こと間違いナシだ。
クラファンならではの“豊富すぎる”素材
2020年夏に、クラウドファンディングサービス『SILKHAT』(現FANY)にて実施した、「超面白ゲーム『スーパー野田ゲーPARTY』をみんなで作りSwitchで発売したい」では、2000人近いサポーターから、目標金額の400万円を大きく上回る、1300万円以上の金額を集めた。
このクラファンではゲーム出演権や、サウンド・イラストの使用権などのリターンが用意されており、一例として、「ゲーム内の主人公になれる権」に7人、「ゲーム内のヒロインになれる権」に10人、「ゲーム内の中ボスや、レアキャラになれる権」に26人、「あなたのペットが出演できる権」に53人、「あなたが描いたイラストや落書きがどこかに使用される権」に265人、「あなたが描いた背景イラスト、なんでも採用権」に43人、「BGM制作に参加することができる権」に92人と、かなりの“素材”が集まった。
このような経緯によって誕生したという性質上、「お前誰だよ!?」という思わず突っ込みどころを入れたくなるような登場人物も多数登場する。ゲームでは実写の顔に2Dイラストの胴体となっており、例として、顔は子どもだが首から下はおねえさんという、アンバランスなキャラクターが現れることも。また、なかには、主人公として登場したキャラクターが、別のゲームでは対戦相手として現れた……というように、2つ以上のゲームに出演するキャラクターもいた。この人はやはり2枠分支援したのだろうか。
余談だが、前出のペットたちは「新・干支レース」に登場。“新しい十二支”を決める横スクロールレースゲームだが、レース結果の上位がほぼ「ねこ」で埋まることもあるほど、ねこを出演させているサポーター(飼い主)が多かったようだ。
それにしても、イラストや落書きがどこかに使用される権の265人は多すぎでは。そのうちのほとんどが「将棋II」の駒だと思われるが……。
単なる“タレントゲー”に終わらないやり込み要素! 今後のアプデ&eスポーツ展開にも期待
本作はお笑い芸人・野田クリスタル制作で、いわゆる“タレントゲー”に分類される。しかしながらタレントゲーといえば、『たけしの挑戦状』『さんまの名探偵』『所さんのまもるもせめるも』『田代まさしのプリンセスがいっぱい』『ラサール石井のチャイルズクエスト』など、伝説級の怪作揃いだが、本作も例外ではなく、“良い意味で爪あとをのこした”タレントゲーと言えるだろう。
「つり革」や、「まぁまぁあぶないじゃん」など、単純ルールでも記録を伸ばしたくなる“謎の中毒性”があるゲームばかりで、「(ダウンロード限定販売とはいえ)これで1000円は安いのでは?」と思えるようなボリュームだった。“みんなで盛り上がる”パーティゲームといえど、1人でも黙々とやり込める楽しさがあった。決して野田クリスタルの人気や知名度だけで売れているタレントゲーではないと断言できる。
ただ、全16種類すべてがそうというわけではなく、「おたけさいこっちょーゲーム」のように淡々と2分の1を当てるだけという大味なものもあったが、斬新なルールに膝を打つゲームが大半である。
今後は新作ゲーム「漫才王」「人面ニャ」の配信も予定されており、さらに、発売前イベントに続いてeスポーツ大会も開催予定だという。これからも注目度は上がっていくことは確実で、まだまだ野田ゲー、そして『スーパー野田ゲーPARTY』から目が離せそうにない。
文/浦和武蔵
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