こうした状況なので、「今買うのは得策ではない」と考えている人は少なくないだろう。一方で、「不具合の状況によっては別に構わない」と考える人もいると思う。そこで、パフォーマンス低下や不具合の状況も含めて、『サイバーパンク2077』のプレイレポートをお届けしたい。
レポート対象はPlayStation4版! PlayStation5でプレイ
今回のプレイレポートの対象は、PlayStation4(PS4)パッケージ版『サイバーパンク2077』だ。動作環境はPlayStation5(PS5)。インストール先はPS5に外付け接続したハードディスク。このため、PS5本体内蔵のSSDにインストールした場合よりも、読み込み速度などの面でパフォーマンスが低下していると思われる。
なお、今回筆者は『サイバーパンク2077』を自腹で購入している。編集部に用意してもらったものではない。そもそも筆者は本作を心待ちにしていた。タイトルが発表されるや否やメルマガサービスに登録、メールの到着を楽しみに待ち、予約開始と知るや即予約。
幾度となく行われた発売延期についても「それでクオリティが高くなるなら……」と、むしろワクワクを募らせていた。つまり、この原稿は、「ゲームライターが仕事で書いた」のではなく、「作品を超楽しみにしていた一ゲームファンが、自分の懐を痛めた上で書いた」ということだ。
壁にめり込んだ車! PS5でも発生した不具合
まず、現在起きている不具合について切り分けたい。現在発生している不具合は、スペックに依存する表現の問題と全機種で発生する不具合とに分けることができるようだ。スペックに依存する表現の問題というのは、初期型PS4など一部の端末で動作させた場合に、画面表示がおかしくなるというもの。これについては、ゲーム機のスペックに依存しているため、PS5やXbox Series Xなどでプレイした場合には改善する。
次に、全機種で発生する不具合について。こちらはゲームが突然落ちるなどの不具合で、機種を問わず発生する。実際、筆者がプレイしてても、「エブリン」というキャラクターとの会話イベントの後、メニュー画面に切り替えた直後にゲームが突然落ちた。
ほかにも、「デラマン」というAIタクシーに乗るイベントにおいて、AIタクシーが急発進して壁にめり込み、その後仲間キャラクターが空中に座る……などの不具合が発生した。後者は壁にめり込んだタクシーに接近することでなんとか乗車でき、イベントが続行できたものの、前者については当然、直前のセーブデータからやり直し。
さすがに不具合発生時には「おいおい、勘弁してくれよ……」と感じたものの、今のところこの2回しか不具合に見舞われていないため、そこまでのストレスは感じていない。なお、現時点でプレイ時間は10時間ほどだ。
『サイバーパンク2077』はサイバーパンクだ! でもそもそもサイバーパンクとは
次に、こうした不具合とは分けてゲーム内容にのみ触れたい。シナリオやゲーム性といった純粋なゲーム内容において本作がどうかというと……正直、最高だ。何が最高かって、もちろん、サイバーパンク。本作はガチのサイバーパンクなのだ。
筆者が本作を買う前に最も心配した部分がこのサイバーパンクという部分。本作はタイトルがサイバーパンクだし、高度に機械化された都市、降り注ぐ雨、電脳化された人間達……という見た目的にもサイバーパンク。だから心配することはないのかもしれないが、それでも、ビジュアルや設定といった上っ面だけサイバーパンクっぽくしたものかもしれない。
はたして、その精神の部分においてもサイバーパンクなのか!? だが、本作はそんな筆者の杞憂を一撃で吹き飛ばした。本作はまごうことなきサイバーパンクだ!
……と、サイバーパンクサイバーパンクと繰り返しているが、そもそもサイバーパンクとはSFの1ジャンル。シンプルにジャンルを言い表すのであれば、<人間の脳とコンピューターによる情報処理との融合技術が進んだ社会を舞台にした物語>と言えるだろう。小説『ニューロマンサー』に映画『ブレードランナー』、映画『マトリックス』に『攻殻機動隊』……。サイバーパンクと言われる作品は、いずれもこの要素を持ち合わせている。
ただ「この要素を持ち合わせていればそれでいいのか?」と言われれば、NOだ。少なくとも筆者にとってはNO。100歩譲って「サイバーパンク」というジャンルに分類されるのかもしれないが、それだけだと単なる上っ面に過ぎない。というのも、SFの重要な要素として「ある技術が存在すると仮定したときの、シミュレート」があるからだ。
もし、人間の脳内とコンピューターによる情報処理が融合したら、そのとき、社会や人間はどう変わっていくだろう? 融合するということは、人間の脳や神経といった生体系をコンピューターが代替可能となるはず。となると、アンドロイドやロボットといった技術は現在より飛躍的に進んでおり、実用化されていてもおかしくない。
そのとき、アンドロイドやロボットたちに人権はあるのだろうか? 機械だから人権なんてあるわけない? ……いやいや、人間の脳とコンピューターは完全ではないにしても「融合」しているのだ。我々の思考も、感情も、コンピューターを流れる電子信号に置き換えることができる。逆に言えば電子信号も思考や感情に置き換えることができる。
人間の脳内とコンピューターによる情報処理との融合技術が存在するという前提でシミュレートしていくことで、こんな風に様々な問題が浮かんでくる。こうした問題を提起し、その作品ならではのアンサーを出しているか? これが筆者が「サイバーパンク」というジャンルに期待するものだ。
そして本作、『サイバーパンク2077』はこの期待に今のところ、しっかり応えてくれている。現在、プレイ時間10時間を持ってようやくテーマの片鱗が見えてきたところ。どうやら本作は「自分とは何か」を巡る物語のようだ。これ自体はサイバーパンクでよく扱われるテーマだが、本作はこれまでの作品とは異なる見せ方をしているのが興味深い。
本作の場合、不具合騒動が落ち着いてから改めて手を出すという人も多いだろう。なのでこれ以上詳しいことを書くのは避ける。だが、確実に言っておきたいのは、本作は「サイバーパンク」のジャンルでしっかり期待に応えてくれる作品だ。
多彩な見せ方で迫る! 圧倒的なゲーム体験
一方、本作のゲームシステム面はどうか。基本的な流れは、舞台である「ナイトシティ」の住人達から依頼を受け、こなしていく……というもの。オープンワールドRPGの基本に従った形式だ。「ナイトシティ」は物騒な街なので、依頼は基本的に揉め事の解決。このため、たいていの場合は戦闘が伴う。
本作の戦闘解決手段は大まかに4つ。1つめは、銃による攻撃で、FPSの要領で敵を撃ち、倒すという正面突破な解決手段だ。2つめは、素手を含む近接武器による攻撃。ダメージを与えるために敵へ接近しなければならないため、銃に比べてリスキー。
3つめは、ハッキング。敵が装備するサイバーウェアをハッキングすることで、ダメージを与えたり行動不能にしたりといったことができる。
そして4つめはステルス。敵に見つからないよう背後に忍び寄ることでステルスキルすることもできるし、状況によってはそのまま戦闘を避けて逃げることも可能。この4つの手段を状況に合わせて取捨選択し、時に組み合わせて依頼を達成していく。この部分だけでも、アクションRPGとしてのアツさがバッチリ味わえる。
また、依頼の過程ではアドベンチャーゲーム的な要素も堪能させてくれる。たとえば、そのひとつが「ブレインダンス」……通称「BD」を使った探索シーン。「BD」は他人の脳が認識した情報を記録しておいて、それを第三者が体験できるという機器だ。「ナイトシティ」においては、ポルノ目的で「BD」を使うのが一般的なようだが、依頼の過程ではこの「BD」を解析、他人の脳の記憶から依頼解決に必要な情報を見つけ出そうとする。
このシーンでプレイヤーはビデオのように「BD」シーンを早送り、早戻ししつつ、目当ての情報を探していく。刑事映画のワンシーンに立ち会っているような臨場感が楽しい。
紺碧プラザ潜入イベントでの、ドローンを使った潜入イベントもスリリングだ。こちらは、光学迷彩を使ったドローンを遠隔操作し、ダクトなどを開けつつ潜入していくというもの。本作の不具合続出について擁護するわけではないが、これだけ異なるタイプの演出を一作品に盛り込めば、不具合が出るのもそりゃあ無理ないよね……と感じてしまった。それだけ、多彩な見せ方で楽しませてくれる。
多彩な見せ方と言えば、各イベントの臨場感がとりわけ素晴らしい。依頼を受注する段階においても、「対面している相手から依頼される」「フィクサーからデジタルメッセージが届く」「車の中でフィクサーから告げられる」「個室でフィクサーから告げられる」……など、様々なバリエーションが存在。このため、各イベントにゲーム的な作業感が発生せず、没入感が維持される。
また、イベント上の会話シーンにも組み伏せられ、銃を突き付けられた状態だったり、敵に囲まれたソファに座らされているという状況だったり…と、多彩な状況が存在する。会話シーンは選択肢を選ぶ形で進行していくスタイルなのだが、状況によっては選択肢にタイムリミットがつく。とくに緊迫した状況下での交渉はたいていタイムリミットつき。
なので、「ナイトシティ」の物騒さがヒシヒシと伝わってくるし、どんなイベントにおいても「何が起こるかわからない」というスリルが味わえる。サイバーパンクというジャンルを脇に置いたとしても、圧倒的に楽しいゲーム体験だ。
買いかどうかで言えば買い! 問題はいつ買うか?
つまり、本作のゲーム内容はただただ圧倒的におもしろい。不具合の件さえなかったなら、「神ゲー」と呼ばれるに相応しい作品だったろう。では、ゲーム内容と不具合を天秤にかけた上で、買うべきか? 買わないべきか? 筆者の答えとしては、プレイ環境がPS5などの次世代機であれば、「買い」だ。
確かに不具合はある。けれども、現時点の不具合発生状況について、筆者はそれほどストレスと感じていない。というのも、少なくとも筆者の環境ではそれほど頻繁に不具合が発生しているわけではないからだ。不具合が起きたら、「へッ…ハッキング攻撃を受けたぜ…。これだからナイトシティは油断できねえ…」というノリで受け止められる程度。
また、最近のゲームはプレイ時間が長い。30時間ほどでクリアして終わり……というのではなく、おもしろいゲームだと追加ダウンロードコンテンツをプレイしながら、1年、2年とプレイして楽しみ続けることもザラではない。となると、アップデートによる改善を気長に待ちながら、「ナイトシティ」の隅々までじっくり味わう……というのはそんなに悪い体験ではないはずなのだ。
このため『サイバーパンク2077』について筆者が返金を依頼することはない。むしろ、このまま遊んでいたい、返金してなるものか。また、仮の話になってしまうが、現在買っていない状態だったとしても、不具合のレベルを知っていたなら、それでも多分、買っていただろう。
こうしたことを総合した上で、プレイ環境がPS5などの次世代機なのであれば「買い」というのが結論。一方、プレイ環境が前世代機となる場合や、「ちょっとの不具合でも許せん!」という人は、今後のアップデートで、致命的な不具合が改善されるのを待った方がいいだろう。
繰り返しになるが、ゲームの面白さ自体は本物。なので、不具合が直ったなら迷いなしで「買い」。今買うか、不具合の改善後に買うか、タイミングの問題でしかないと考える。
サイバーパンク2077 | スパイク・チュンソフト:
https://www.spike-chunsoft.co.jp/cyberpunk2077/[リンク]
文/田中一広
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