任天堂は、同社の株式を最高レベルにまで押し上げた驚くべきヒット作ゲーム『ポケモンGO』で利益を得ている。しかし、ゲーム『ファームビル』やゲーム『キャンディ・クラッシュ・サーガ』のファンなら知っていることだが、『ポケモンGO』は世界現象となった初のモバイル・ゲームではない。大ヒットを生み出した会社の裏側には苦い経験があるように、1つのヒット作がウォール・ストリートの重力を一時停止している期間には限界がある。
この話題は、2016年7月20日の本紙ヴァラエティに最初に掲載されている。購読はこちら。
2009年、カリフォルニア州サンフランシスコに本拠を置くジンガは、『ファームビル』で成功を収め、2010年の業績に基づいて株式公開を促進した。しかし、同社は売上高成長率を維持するのに苦労しており、株式公開以来利益を出せていない。
スウェーデンに本社を構えるキング・デジタル・エンターテインメント(以降キング)は、2011年に大ヒットゲーム『キャンディ・クラッシュ・サーガ』を送り出した。しかし、それ以降売上高は半分に低下し、同社の制作する他のゲームタイトルで違いを生み出せずにいる。2016年初頭に米ゲームソフト大手のアクティビジョン・ブリザードに買収された同社の利益は、これまでのところジンガよりも持ちこたえることができている。
しかし任天堂は、ゲーム『クラッシュ・オブ・クラン』が打ち立てた前例のおかげで希望を抱くことができる。2012年にiOS向けにリリースされたオンライン・ストラテジー・ゲーム『クラッシュ・オブ・クラン』を開発したスーパーセルは、2016年6月に中国インターネットサービス大手のテンセント・ホールディングスに86億ドルで売却され、その運命を変えた。スーパーセルがキングの倍の評価を得たことは、その売上高成長率を反映しているからであろう。それはジンガよりも早く、キングよりも緩やかであった。しかし、キングとは異なり、スーパーセルの上昇はその出現の瞬間から2年間続いた。
出典:COMPANY REPORTING, JACKDAW RESEARCH ANALYSIS
スーパーセルが、ジンガやキングなどの先行者たちと同じ問題に直面することはあるだろうか?2015年度の売上高成長率は鈍化したが、横ばいになることはなかった。さらに同社は、ジンガとキングが行った収益の急上昇に伴う早急な人員拡大という間違った行動を避けた。ジンガはIPOの時点で2000人の従業員を抱え、その後も数回に渡って増員を繰り返した。そして数回のレイオフを行った後もなお、1500人以上の従業員を雇用している。キングの従業員数は2011年度末には144人であったが、2014年度末には1200人へと拡大した。
スーパーセルの2015年度末の従業員数は、前年の148人から180人へと増加した。ジンガの昨年度の従業員1人当たりの売上高が500ドル未満であったのと対照的に、スーパーセルは1300万ドル近い従業員1人当たりの売上高を2015年度末に記録した。仮に同社の売上が今後2年連続で減少したとしても、少なくともコストの観点から同社にかかる影響は少ないとみられる。
成功するビジネスモデルは明白だ。病みつきになる無料のダウンロードアプリを作り、フィーチャー機能のロックを解除するために、毎月ざっと100人に1人のユーザーに支払いを納得させれば良いのだ。しかし他にも明らかなことは、奇跡的なヒット作が同じ会社で2回起こることは殆どないということだ。それゆえ、大成功を収めてもスリムな経営体制を維持するスーパーセルのようなビジネスは、非常に正しい道を辿っていると言える。
ジャン・ドーソンは、コンシューマー向け技術市場のコンサルティング・ファーム、ジャックドー・リサーチの創設者兼チーフアナリストを務めている。
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