日本政府観光局によると、2015年は過去最高となる約1973万人の外国人旅行者が来日するなど、海外からの注目が高まっている中、課題となっているのが言葉の問題。特に小規模なショップなどでは高価な通訳サービスを利用できずに、コミュニケーションに不便をきたすケースが増えているといいます。
兵庫県豊岡市にある城崎温泉でも、前年度比で2.3倍となる約32000人弱が来訪と外国人旅行客が急増。それを受けて、在宅のクラウドソーシングのワーカーを活用した動画チャット通訳サービスの実証実験を2016年4月4日から実施しています。
志賀直哉の小説『城崎にて』をはじめ、多くの作家に愛された城崎温泉。旅行ガイドブック『ミシュラン・グリーンガイド・ジャポン』に掲載され、二つ星(寄り道をして訪れるべき場所)とされたこともあって、外国人旅行客からの注目が高くなっているとのこと。実際、温泉地の中央を通る湯の里通りでは、アジア系から欧州圏からの来訪者、南米系とおぼしき人たちが行き交い、国際色が強まっていることを感じさせました。
そんな中、今回の動画チャット通訳サービスの実証実験に参加している店舗の一つが、外湯・一の湯の向かいにある『いたや商店』。
江戸時代に旅館として創業し、戦後になって土産物店になったという『いたや商店』。大正期にはジャーナリスト・思想家の徳富蘇峰の娘が嫁いでおり、現在の店主は蘇峰の曾孫にあたるとのこと。
今回の実証実験の対象となっている14店舗には、共通のマークを表示。無料で通訳サービスを提供していることを表しています。
この動画チャット通訳サービスは、関西電力系の通信会社ケイ・オプティコムが、城崎温泉の海外向け無料WiFiの整備を手がけた縁で豊岡市に提案。FacePeerが提供するプラットフォーム『FaceHub』を利用し、在宅ワーク支援サービスを展開しているうるるが20人の通訳を教育・管理・運営を担当しています。
通話の画面。この日はアメリカ・ユタ州在住の菅原桃子さんが通訳として対応しました。相手の顔と、自分がどのように見えているのか、同時に分かるインターフェースになっているのが特徴といえるでしょう。
実際に子ども用の浴衣を買いたいという外国人客に対して、菅原さんが店主に通訳。特に齟齬もなく、スムーズに話をつなぐことができました。
この“クラウド通訳”の実証実験は2016年4月28日までの予定。7箇所ある外湯でも使えるようになっています。
今回は英語・日本語の通訳のみで、中国語やフランス語といった言語には未対応。実際にどの言語を使う人が多いのか、市側もサービス運営側も把握しない中での実験となっており、「実際は中国語の方が使われているという結果になることもあり得る」(豊岡市担当者)といいます。
また、温泉街全体にWiFiが完備されているとはいえ、屋内では繋がりづらいところもある様子。通信によるストレスが少なくて済むことが、サービスを本格的に導入するためのカギになりそうです。
城崎温泉観光協会ホームページ
http://www.kinosaki-spa.gr.jp/ [リンク]
FacePeer(フェイスピア)
https://www.face-peer.com/ [リンク]
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