ランプの灯りが揺れ照らす室内。ほかに光源のないその薄暗がりの中、帳場台に置かれた一枚の金貨が、光を映して微かに煌めいていた。
「……なるほどのォ、透明化した追跡者」
店主は皺の寄った手指で金貨を摘まむと、椅子にもたれ、目の高さでくるくると回す。少しの間を置いて、乱反射する光の向こう、店主の眼光がこちらを射た。
「んで、おたくの団長さんが儂んとこにって?」
「出どころ不明な霊酒も呑んでしまえば証拠は残らん、だそうだ」
「ふーむ、そうきたか……それで金貨一枚、ねぇ」
「足りないか?」
狭い肩幅をさらにすくめた店主は、おどけ呆れたような表情を浮かべた。何も言わぬまま金貨を帳場台の引出しに仕舞い込んだ後は、おもむろに体を背もたれに預ける。しばらく腕組みをしたまま俯いていた店主だったが、やがて天井を仰ぎ人差し指をひらひらと翻すと、何か考えがまとまったのか「よし」と立ち上がり、店の片隅へと私を促した。
店主が向かう先に、手を伸ばせば端へと届くほどの小振りな机が見えてくる。それは部屋の隅、壁と壁にぴたりと寄せられており、雑然としたこの店には珍しく、そこだけ異様に整えられているのが分かった。
机の中央には、二羽の鷲が互いの翼を絡める意匠の台座が置かれ、そこにこぶし大ほどの透明な球体が抱かれている。いかにも魔術的儀式に用いられそうな水晶玉然としたそれは、ただランプの揺らめきを受けて静かに輝いているだけでも、異質な存在感を放っていた。
「それは?」
「んふふ、まァ見とれ」
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