ふみ切のブロマガ

レティリリ小話

2015/07/08 18:50 投稿

コメント:2

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 桜の蕾が膨らみ始める季節。リリーホワイトがチルノを背負ってやってきた。この子は性懲りもなく、今年もリリーに挑んで負けたらしい。チルノは妖精としては破格の力を持つけれど、この季節のリリーに対抗するのは妖怪でさえ危険だと、毎年言っているのだけれど。
「迷惑をかけるわね」
「なんのなんの、ですよー」
 リリーは息も上がっていないようだ。目を回したチルノを、リリーの背中から引き取る。ぶらんと垂れたチルノの右手には、スペルカードが未使用のまま握られていた。どうやら発動する余裕もなく突貫し、あの分厚い弾幕をまともに受けたらしい。リリーが体力を使わないはずである。
「手合わせも、何度かしてあげたのだけれどね。身についてなかったか」
 距離をとって戦うことも、弾幕に変化をつけることも教えた。衝動に身を任せる性質のある子だけれど、普段はそれでももう少しは思慮がある子のはずだ。リリーが嫌いというわけでは勿論ない。現に、私が居なくなった後は、大妖精も交えて、三人で仲良く遊んでいたりもするようだ。それでも、春先にリリーを相手にすると、チルノはいつも後先を忘れてしまう。
「仕方ないですよー」
「そうなのかなぁ」
「チルノちゃんは、レティさんが大好きなんですから」
 春を呼ぶ妖精を倒せば、冬は去らずに済むのではないか――と。
 いや、そんなことすら考えていないだろう。ただただ、チルノは冬が好きなのだ。いつだって元気の有り余っているあの子が、何の気兼ねもなく、体いっぱいに冷気を操れる季節。彼女にとっては、常時大きな遊具に揺られているような心地だろう。私という妖怪を好いてくれても居るのだと思う。幸福な時間にタイムリミットを告げに来る者に対して、何かしらの反抗を示してみたくなるのは、大人だって同じだ。思い通りに行かないことは多い。私一人の世界ではない。遊具にだって順番が在る。自然の理に抗っても、虚しいだけだと解っている。
「ねえ、リリー」
 循環する四季の、どれか一つに属することを定められたのは、私だけじゃない。静葉や穣子もそうだし、他ならぬリリーもそうだ。誰もがその領分の中で、弁えて生きている。……けれど、まれに、それを破ってみたくなることもあるのだ。理に従うことの意義を、知らないふりをして無視してみたくなることがあるのだ。止められるものなら止めてみろ、と。
「はい。大丈夫ですよ」
「……申し訳ないわね」
「いいえ。私もその気持ち、よくわかりますから」
 チルノが目を回してくれていて良かった。彼女の前では保護者を気取っているものだから、こんな風に我侭で好戦的な自分は出せない。
 リリーと違って、私は自分の季節でも、思い切り遊ぶことが難しい。全力で寒気を煽ってしまうと、人里に被害を出してしまい、巫女に異変認定されてしまうことになる。普段からそれなりにセーブしているのだ。私の力が弱まった今、私はようやく目一杯遊ぶことが出来る。寒の戻りで、里には多少迷惑をかけるかもしれないけれど。これくらいなら巫女も目を瞑ってくれるだろう。
「それじゃ、いざ尋常に――冬符『ノーザンウィナー』!」
 決着をつけずに終わることは出来ない。目を凝らさないと見つからないほどに、冬の残滓は姿を消した。対して春は暖気を全身に吸い込んで、はちきれんばかりに蕾を膨らませている。極彩色に目を灼かれそう。戦わなくたって、勝負は見えている。それでも、抗わなければ。最後のひと足掻きをして、決着をつけなければ。私は、冬の妖怪なのだから。私のために戦ってくれたあの子の、私は保護者なのだから。


コメント

kyoudai
No.1 (2015/07/08 23:43)
遊具にだって順番が在る……そういうものなのですね。
yoshiki
No.2 (2015/07/09 20:22)
きっとチルノは死神にも挑むタイプだな。他人を迎えに来た死神を自分の為に迎え撃つタイプ。
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