ふみ切のブロマガ

リグルミ小話

2015/07/07 18:50 投稿

コメント:3

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 短冊には「長生きできますように」と書かれていた。妖怪の願い事としては些か珍しいものだったけれど、私もそれと同じ願いを持っているので、笑ったりはしない。七夕の夜の寺子屋前。
「リグルは、虫達の名前ちゃんと覚えてるもんね」
「うん。流石に、何年分もは覚えられないけど」
 幻想郷の虫を統べる妖怪、リグル・ナイトバグ。その無数の名前を、一匹一匹覚えているのは彼女だけだ。九尾の狐とて、そんなところに記憶容量を割いたりはすまい。だから、その全てが確かに存在したことを、覚えていてあげられるのも彼女だけ。
「誰か一人でも覚えててあげられれば……その子は、生きていられると思うんだ。命が尽きた後でも」
 だから人は、お墓を作る。記録を作る。長く生きることで、忘れられていくものはとても多い。出来事も、感情も、その一つ一つを記録することは到底できない。残しておきたいものは増えていく一方なのに、どうすればいいのだろう。――簡単なこと。だから私が覚えておくのだ、と。
「幽香が、そう言ってたんだね」
「……バレたか」
 リグルは恥ずかしそうに頭を掻く。解るよ、勿論。
「出会ったり別れたりを繰り返すのは、幽香も同じだもんね」
 引用元を当てられたのに、リグルはどこか嬉しそうに微笑んでいる。東の空に輝く、今夜の主役たちを見上げながら。
 リグルは、幽香のことが好き。最初にそれに気付いたのは、多分私。けれど、今や寺子屋の皆が知っている。人を好きになるのは素晴らしいことだ。相手の見ている世界が、感じている鼓動が見えてくる。相手の好きなものは、自分も好きになる。影響されすぎて、困ることもしばしばだ。――最近ではすっかり、私まで幽香のことを好きになってしまった。
「幽香さんは、何を願うかな」
「何も願わないんじゃないかな」
「あはは。そうかもね」
 強大な力を持ち、美しい花に囲まれて。彼女はとても満たされているように見える。或いは、満たされることなどないという諦めを、正しく持つことができているのかもしれない。いずれにしても、強さを持つ者だけができる心の持ちようだ。弱い者達は、いつでも何かを願わずにはいられない。
 短冊に書く願い事を、目一杯悩むことができるのも、私達のような弱い妖怪の特権である。私達が欲張って、流星に色んな願いをかける間、強いものはただ風情を味わうのだろう。幸福も、長命も願わず。……巫女や魔法使いが、突然どこかに去ってしまったりするのは、彼女たちが未だ見ぬ未来にすら満足できるほど、「今」に満たされたからなのかもしれない。
「私達は、まず、生きなきゃね」
「うん」
 例えば、幽香とリグルが結ばれたとして。――幽香の態度を見るに、叶うとしてもまだまだ先のことだと思うけれど――私は、二人を心から祝福できると思う。花の妖怪と虫の妖怪という、誂えたかのような素敵な縁を、心から尊び、祝えると思う。そして、そのことによって、自分の好きという気持ちを消したりもしない。私はあくまで闇の中で、息を潜めて待ちつづけるつもりだ。
――長生きしてね、リグル。
 強大さと寿命が、比例するとは限らない。二番目に結ばれるのだって、全然構わない。兎に角、生きていれば良いのだ。私と私の好きな人が結ばれる、その可能性が現実となる日まで、何千年だって。


コメント

ukiuki_7
No.1 (2015/07/07 22:14)
あ、今日は七夕かあ。。。
ふみきりさん、気づかせてくれてありがとう。
ふみきりさんにいいことがありますように。
yoshiki
No.2 (2015/07/08 20:20)
強大さと寿命が比例するとは限らない。なるほどてゐがその代表格だ。まあでもあの兎は能力がチートかw
kinnji
No.3 (2015/07/12 20:32)
激しい愛もありゃあ静かに願い募らせる愛もある・・・てか
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