ふみ切のブロマガ

メイフラ小話

2015/05/15 19:19 投稿

コメント:4

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「私とお姉様が喧嘩していたら、美鈴はどっちの味方になる?」
幾度と無く繰り返された質問だ。従って答え方も決まっている。
「勿論お二人の味方に」
「そうじゃなくて」
「では仕方ないので、妹様の味方になります」
「そうよねっ」
 実際そうすると思う。一つには、お嬢様の側についたら、却ってお嬢様はお怒りになるだろうから。もう一つは、私とお嬢様が本気で戦っていたら、妹様は止めたいと願ってくださるだろうからだ。外から見た「戦い」を、人一倍悲しめる方なのだ、妹様は。……あくまで外から見た場合、だけれど。
「あ。こぶができてる」
「居眠りしました」
「居眠りで後頭部を打つの?」
「生憎後ろに壁がありまして」
「可哀想に」
 妹様は他者の怪我に敏感だ。それは紅魔館の皆が感じていることだと思う。お嬢様や咲夜さんが外出するときにも、口癖のように「怪我をしないでね」と呟く。果物を剥いている妖精メイドにさえ声をかけておられるのを何度か見た。痛みというものが怖いのだろうと思う。それは痛覚そのものへの恐怖ではなく、痛みが解らないという「未知」に起因する恐怖だ。
「痛いの痛いの飛んでけー」
「あはは。ありがとうございます」
 気を読むことのできる私にとって、痛覚は大して尊重すべき感覚ではなかった。真の重大ごとは気が教えてくれる。早々に治るであろう小さな傷からさえ、痛覚の信号は逐一送られてくる。正直煩わしかったし、基本的には無視していた。武術のそれに比べて日常動作は随分と大雑把だったし、切り傷擦り傷は日常茶飯事だった。誰かにそうと言われなければ気付かないほど。
「懐かしいおまじないですね」
「咲夜が教えてくれたのよ」
「私が咲夜さんに教えたんだったりします」
「そうなの?」
 妹様と私は似ている、と言ったら複数の方面から怒られそうだけれど。怪我をすることの痛みを、辛さを、自分で掴むことが難しいという、その点において私と妹様は確かに一致していた。誰かが顔を歪めているのを見て、ああ辛いのだろうと推測することしか出来ない。だから、過剰に守らなければいけない気がしてしまう。本当は、その子は一人で立てるかもしれないのに、手を差し伸べたくなってしまう。そうすることによって、自分は誰かの痛みを理解できたのだと、気遣えたのだと思いたい。そんなこと、ありはしないのに。
「今はもう、言うこともなくなりましたけれどね」
 怪我をしないで、とあの子は言った。貴女が痛くなくても、私が痛いから。それを聞いて初めて、私は自分の怪我が誰かの痛みになっているのだと知った。なんて心優しい子なんだろう、と思う前に、自分の為に怪我をしないでなんて、なんて不遜な言葉なのだろうと思った。でもそれは不思議と不快ではなかった。心の不可侵の部分を、一瞬だけくすぐられるような、おかしな心持ちだった。そして私は、傷つかないでいて欲しいと願うことが、在って良いのだと知った。たとえ私の我侭であっても、それは願って良いのだと。私が本当の意味で何かを守ろうと思えたのは、その時が最初だったと思う。
「フランドール様」
「なあに」
「喧嘩はしてもよいですが――本当は少し嫌ですけれど――どうか、傷つくことだけはしないでください」
「どうして」
「私が悲しみます」
「うん」
 優しさと残酷さは、一つの肉体に同居しうる。そのどちらもを、私は愛したいし、愛せると思う。妹様の中で、両者の在り方が緩やかにでも融和しますように。その最中の葛藤を、どうか傷つかずに越えられますように。そのために、私ももっと強くなろう。逞しくなろう。私が傷つくことで、妹様を傷つけてしまうことのないように。


コメント

yoshiki
No.2 (2015/05/15 20:34)
ほんっとメイフラって素敵!
音無
No.3 (2015/05/15 20:42)
傷をみて いたみに気づく 絆かな
mada
No.4 (2015/05/16 01:39)
直接触れたら壊れてしまうような、そんな脆くて儚い感じがするメイフラ  大好きです
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