不特定多数の人々がインターネットを介して乗り物・スペース・モノ・ヒト・カネなどを共有するシェアリングエコノミーの波は、日本にも押し寄せています。外国人観光客の急増と宿泊施設不足に伴い、近年活発化しているのが「民泊」です。成長が続く民泊市場について見ていきましょう。

2016年度のシェアリングエコノミー市場は503億4,000万円に

矢野経済研究所の調査によると、2016年のシェアリングエコノミー市場規模は前年度比26.6%増の503億4,000万円です。2016年度に旅館業法施行令が一部緩和されたことや、2017年の「住宅宿泊事業法(民泊新法)」の成立により、一気に民泊への参入機会が拡大したことが市場成長に寄与しました。

2018年に6月施行される民泊新法では、180日の「営業日数制限」が設定されることになります。既存の営業施設にとってはマイナス面もあるものの、同法の施行によって合法的なサービスが提供しやすくなるでしょう。そのため、個人事業者のみならず大手企業や外資が参入し、民泊市場全体を押し上げると予測されています。

2020年の外国人訪日客、4,000万人目標に

民泊仲介サイト最大手Airbnb(エアビーアンドビー)の2018年上期の予約状況に基づく調査結果では、もっとも予約が多かった都市として東京が世界1位になりました。3位には大阪もランクインしており、トップ3に日本の都市が2ヵ所入ったということは、それだけ需要が高いということでしょう。

民泊への需要が急拡大している背景には、やはり外国人観光客の急増があります。2017年の訪日外国人数は過去最多の約2,869万1,000人です。中国や東南アジアからの訪日ビザ条件を緩和したことや、新興国の経済成長、過去20年のデフレ経済で日本の物価が他の先進国に比べて抑えられてきたことなどが、要因として考えられます。

政府は、2020年の訪日観光客数目標を4,000万人と掲げており、さらなる増加が予測されています。観光客が増加する中で、宿泊施設の整備が急務になっています。ホテルを建設するには、計画の立案から完成・開業まで数年がかりの事業です。観光客が急増したからといって、すぐに施設を増やすというわけにはいきません。そこで注目されたのが、Airbnbのような住宅物件を宿泊施設として貸し出す「民泊」です。

民泊新法でサービスはどう変わる?

民泊によって、観光客が一般市民の居住する住宅街にも立ち入るようになった結果、ゴミ出しや騒音などのトラブルが発生するようになりました。民泊物件での事故や事件、盗撮などのプライバシーに関する問題も発生しています。そこで、2018年6月施行の民泊新法では、下記のようなものが義務化されます。

・衛生確保・安全確保のための措置
・外国人観光客への利便性確保
・騒音防止のための宿泊者に対する説明
・近隣からの苦情への対応窓口の設置
・宿泊者名簿の作成・備付けなど

法整備を行ったうえで健全な民泊サービスの普及を目指していくことになります。また、民泊新法では、民泊の年間営業日数が180日以下に限定されます。

民泊の繁忙期は、観光シーズンと重なる4~10月ごろとされているので、その約半年間を民泊として貸し出し、残りのシーズンは何か別の方法で物件を貸し出すというスタイルが定着するかもしれません。月単位での賃貸の場合は、賃貸借契約に相当するので、民泊とは契約形態が異なります。ある程度の広さがある物件であれば外国人留学生向けのシェアハウスとしたり、ワンルームならマンスリーマンションとして貸し出したりすることが考えられます。

不動産運用形態の広がりで新たなビジネスチャンスも

民泊新法の制定によって、これまで野放図に営業されてきた民泊市場が整備され、空き家や空き室などを活用しての民泊運営が合法的になります。不動産投資の側面から見ても、これまでの月決め家賃による長期入居者だけでなく、さまざまな形態での不動産運用が可能になるでしょう。そのため、新たなビジネスチャンスの広がりが期待できます。