訪日外国人が爆買いしているのは、電化製品やファッションアイテムだけではありません。今や東京の不動産も対象です。このコラムでは、海外投資家が東京の不動産に注目する理由について考えていきます。
中国人・台湾人が積極投資する東京の不動産
今、東京の不動産投資市場は、日本人の投資家だけでなく、外国人の富裕層からも脚光を浴びています。この外国人の投資熱は、東京の新築マンション価格を押し上げる要因のひとつになっていると言われます。
最近の訪日外国人の数は2,000万人台まで飛躍し、さらに 2018年度は3,200万人(JTB推計)が見込まれています。もちろん観光で日本を訪れる外国人がメインですが、不動産市場や物件の視察のために訪れる方も数多くいます。
国別で見ると特に東京の不動産に注目しているのは、中国や台湾の富裕層。ある不動産投資会社の社長によると、台湾に行って東京のマンションに関するセミナーを開催すると、「入れ食い状態だ」と言うほど東京の不動産が大人気だそうです。なかには、台湾法人を立ち上げる不動産投資会社もあります。
アジアの個人投資家だけではなく、欧米の国家単位の投資も行われています。ノルウェーの政府年金基金、あるいは、アゼルバイジャンの政府系ファンドが東京の不動産投資に参画していると言われています。
追い風を受ける首都圏の不動産価格の値動きは?
海外からの投資の追い風を受ける、首都圏の不動産の最近の値動きをデータで確認したいと思います。
不動産経済研究所のレポートによると、首都圏の新築マンション販売価格は、2014年12月には5,022万円でしたが、3年後の2017年12月には6,019万円(東京単体では6,192万円)と躍進しました。3年間で約1,000万円伸びています。
また同レポートでは、首都圏の新築マンションの契約率は、60%台後半から70%台前半を中心に推移しています。 さまざまな要因から単月だけ60%台前半になることがありますが、全体的には安定した市場動向と言えます。この安定した市場動向には、海外投資家の存在が寄与していることは間違いありません。
東京の不動産を買う理由。割安、ブランド力、資産分散…
海外投資家が東京の不動産を買い漁る理由でよく言われているのが、世界の主要都市(ニューヨーク、ロンドン、シンガポールなど)の不動産と比べて、東京の不動産は割安というものです。価格が上がった現時点でも割安感があり、グローバルで見ると高い利回りを確保しやすい状況です。
また、実際に外国人を顧客にしている不動産会社からは、心理的な面が購入動機になっているという意見もよく聞きます。
人口減少などで輝きを失いつつあるとはいえ、経済大国として世界をリードしてきた日本にはブランド力があり、「東京に不動産を所有しているのはアジアの富裕層にとってステータスがある」という見方です。
違う心理面の動機としては、「日本の安定した国内情勢」も大きいという意見があります。たとえば中国で見てみると、人民元の不安定さから海外に資産分散をする富裕層が増えています。
この海外への資産分散の選択肢のひとつとして、東京の不動産への投資がされているという見方があります。
東京オリンピック前後の海外投資家の動きは?
今後の海外投資家の動向については、2つの意見があります。ひとつは、海外投資家は、短期的な値上がり狙いが多いので、オリンピック前後に反動があるという意見です。もう一方は、日本の投資家と同様、海外投資家もインカムゲイン狙いが多いので反動はそれほどないという意見です。
オリンピック前後の動きは読みにくいですが、先に挙げた通り、海外投資家の中心である中国・台湾の資産家においては、「東京のブランド力」や「資産分散」というモチベーションもあるので、一斉に売り抜けるという行動は考えにくい面もあります。
いずれにせよ国内投資家それぞれがこの部分をどう考え、積極策(買い増し)、消極策(売却・様子見)どちらの立場をとるのかが、オリンピック後の資産形成で明暗を分けそうです。
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