不動産投資コラム

【マンション経営コラム|第145回】不動産投資市場も“シニアシフト”へ?

2018/04/25 08:21 投稿

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ご存知の通り、日本は世界に先駆けて高齢化を迎える“課題先進国”。内閣府の「平成29年版高齢社会白書」によると、2016年時点の総人口1億2693万人に対して65歳以上の高齢者人口は3459万人となり、総人口に占める割合(高齢化率)は27.3%となっている。

少子化も拍車をかけ高齢化率は高まる方で、2025年には団塊の世代が後期高齢者になり、2060年になると40%を超える見込み……。日本は類を見ない“超高齢化社会”に進展しようとしている。

こういった状況は社会環境にも変化を与え始めている。公共交通機関であれば、エスカレーターやエレベーターの設置、商業施設でもバリアフリーの徹底、サービス産業ではシニア向けの商品が登場するなど、これまでは現役世代をターゲットにしていたマーケティング戦略を高齢者にフォーカスする“シニアシフト”が起きているのだ。

確かに、マイナーよりマスに訴えかけた方が効率的で、かつ国内資産のほとんどは高齢者が握っている。シニアマーケティングが活況になるというのは、ごく自然なことかもしれない。

サ高住は7000棟を突破! 増える高齢者住宅

住宅市場でも“シニアシフト”は始まっている。広く住環境という点では、かつて郊外に住み子育てをしていた家庭が、子どもが独立すると広い戸建てを持て余し、買い物や通院などに便利な駅近くのマンションに引っ越すのもそのひとつだし、建物の内装や設備もバリアフリーや手すりの設置が増えてきた。

高齢者向けの住宅も増え続ける一方だ。例えば「サ高住(サービス付き高齢者向け住宅)」の登録状況は、2012年3月時点では889棟、3万1094戸だったのが、その2年後には5000棟を突破、2018年3月末時点では約7000棟、およそ23万戸までに拡大している。

都道府県別にみると、北海道や首都圏、大阪府、兵庫県など、基本的には都市部が目立つ。

そもそも、サ高住とは、「床面積は原則25㎡以上」「バリアフリー構造」「安否確認・生活相談サービスが必須」といった登録基準を満たす建物のことで、60歳以上、または要支援・要介護認定者といった入居要件を満たすと住むことができる。

高齢者向けの住まいというと「有料老人ホーム」をイメージするだろうが、多くが利用権方式を採用していて、入居の際に一時金を支払うことで終身にわたり居室と共用施設を利用する権利と、介護や生活支援を受ける権利を保障するという契約形態だ。他方、サ高住は、住宅部分は賃貸契約を結ぶのが前提で、生活支援サービスは別途契約を結ぶというもの。

利用権方式に比べると居住の権利が確保しやすく、「高齢者向けにカスタマイズした賃貸住宅」といった捉え方になるだろう。

介護や支援を必要とするシニアは増え、今後もその傾向は続くだろう。核家族化により家族介護をできる家庭は減っていて、いまは「手間をかけさせたくない」という理由から、積極的に外部の介護サービスを選ぶケースも多い。

遠くに住む子供たちにとっても、シニア向けでサービスも受けられる場所となれば安心だ。そういった点から、住まいの選択肢のひとつとしてサ高住に対するニーズは高まっていて、それが登録状況にも表れている。

大手不動産会社、鉄道各社、建設各社など、幅広い業界からの参入も目立つ。不動産や建設との相性の高さは言うまでもないが、沿線開発を得意とする鉄道会社が取り組むというのも納得できる。

サ高住の数はまだ足りないとされ、所轄の国交省を中心に政府も推進の姿勢を崩していない。ハード・ソフトの要件を満たす必要はあるが、ニーズは高いので事業としての安定性も見込めるだろう。個人レベルで始めるケースもあるようだ。

空き家を介護事業者にレンタルして家賃収入

人口減少の影響で空き家も増え続け、いまでは全国で820万戸もあるという。防犯や景観の観点から社会問題になっていて、貸し手や借り手をマッチングするサービスが自治体・民間レベルで始まっている。

ここでも“シニア”は大きなキーワードで、訪問介護・看護ステーション、デイサービスセンターといった介護・福祉関連の拠点として空き家を貸し出す事例があるようだ。

実際に、空き家を利用したフランチャイズ型のデイサービス事業を展開しているところも。一部自治体では、空き家をグループハウスやデイサービスに転用する事業者に対して補助も行っている。

介護が必要になった高齢者が住み慣れた家や地域で暮らし続けられるように、「医療・介護・介護予防・生活支援・住まい」のサービスを一体的に受けられる「地域包括ケアシステム」の構築を国は進めていて、サ高住をはじめとする住まい、デイサービスなど介護拠点は、必要不可欠なピースであることは言うまでもない。

不動産活用の手段として、ますます注目を集めるのではないだろうか。

引用・健美家編集部(協力:大正谷成晴)

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