干支のジンクスは当たる?
株式相場には「辰巳(たつみ)天井、午(うま)尻下がり、未(ひつじ)辛抱、申酉(さるとり)騒ぐ、戌(いぬ)笑い、亥(い)固まる、子(ね)は繁栄、丑(うし)つまずき、寅(とら)千里を走り、卯(う)跳ねる」というジンクスがあります。
2017年は「申酉騒ぐ」のトリ年ですが、この干支の過去の動きを見る前に、そもそもこのジンクスが全体としてどのくらい当たっているか調べてみました。日本取引所グループのウェブサイトでは、1949年から2016年までの68年間のTOPIX(東証株価指数)の年間データを公表しています。干支の12年でいえば、5回り半、つまりそれぞれの干支で5~6年分のデータがあります。
年間の騰落率は、その年の年末に前年末からどのくらい上下したかを計算しますが、各干支の単純平均では大きく上下した年に偏ってしまうため、真ん中の値である中央値(メディアン)を見ます。また、年間に株価がどれだけ大きく動いたかを見るのに、便宜的に「変動率=最高値÷最安値の比率」とし、これも中央値を使います。
この68年間の騰落率の中央値は6.2%の上昇、変動率は34%です。言い換えると、1949年以降のTOPIXは総じて年間6%強上昇し、年間の高値と安値には34%の開きがあったということです。「上昇割合」と「翌年上昇」は、各干支5~6年のうち当年と翌年に上昇した割合を示します。この68年間の上昇割合の平均は50%ですから、上昇、下落の年が半々だったことがわかります。
平均または中央値以上の数値は太字の網掛けにしていますが、これらは例年に比べ上げ幅や変動が大きいことを表しています。表には冒頭に紹介した「相場つき」も入れ、これと実際がどうだったかを比べます。この相場つきの表現の中には、解釈が難しいものもありますが、ここでは「天井」は翌年の下落を見越して売る、「辛抱」と「固まる」は株価が下がっても翌年以降の上昇を期待して保有継続、押し目買いをする意味だと考えました。
ジンクスが外れたのはトラとサルだけ
最終欄「当たり?」は、それぞれの干支のジンクスが当たったか、外れたかの判断です。これを見ると、ハズレ(×)はトラとサルの2つだけです。
この結果からジンクスはかなりの確率で当たるといえそうです。例えばネズミは、年間上昇率が24.2%と、平均の+6.2%を大きく上回っているので「繁栄」は大当たりといっていいでしょう。
他方、トラは△4.3%のマイナスであるうえ、49年以降の6回で上昇したのは1年だけです。「千里を走る」とはお世辞にもいえません。タツとヘビはともに「天井」ですが、タツの場合は6年のうち、翌年に平均の+6.2%を下回ったのが3回とほぼ平均並みなので微妙(△)です。ヘビは6回のうち翌年に上昇したのが2回だけなので、当たっている方でしょう。
2017年の干支であるトリは、変動率が平均34%を若干上回りますが、ネズミやウサギの42%よりかなり低く、「少し『騒ぐ』」というところでしょうか。ただ、上昇割合は80%、つまり5回のうち4回と抜群の勝率を誇り、その内訳を見ると下がったのは最初の1957年(△16%)だけで、他の4回は+10~43%といずれも平均の+6.2%を大きく上回っています。
今年のトリは大きく騒ぐ?
2017年のトリは、これまでより「騒がしい」かもしれません。米国では、大幅な減税やインフラ投資拡大などの大胆な政策を掲げるトランプ新政権が始動することや、フランスやドイツなど欧州主要3ヵ国で国政選挙が相次ぎ、先行きの不透明感が強いからです。
これらの選挙で極右勢力が躍進すれば、移民排斥や、2016年の英国に次いでEU(欧州連合)離脱気運が高まる恐れもあります。また、今夏に多額な返済を控えるギリシャで債務問題が再燃するかもしれません。これら政治、経済のイベントの成り行き次第では株式市場が大きく動揺する可能性があります。
もう一つ、2017年に当てはまるジンクスとして「末尾が7の年は荒れる」があります。
1987年はNY株式市場の大暴落(ブラックマンデー)、1997年はアジア通貨危機、そして2007年には翌年のリーマン・ショックにつながるバリパショック(サブプライムローン問題)で市場は大きく揺れました。このときのTOPIXは、1987年には年初から6月高値まで43%上昇したあと、年末にかけて24%下落し、1997年と2007年はそれぞれ21%、13%の大幅下落となりました。v
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