今回は、マンション経営を法人化した際のメリットとデメリットを解説します。
法人化のメリット
マンション経営を法人化するメリットは3つあります。
● 支払う税金が安くなる
個人が支払う所得税は、所得金額に応じて税率が変動する累進課税率が採用されていますが、法人税の税率は一律となっているからです。
● 役員報酬が節税対策になる
個人経営を法人化すると、経営者がもらう給与は役員報酬になります。役員報酬は一定のルールを守れば損金算入することができ、法人税の課税金額が小さくすることができます。結果として、支払う法人税額を抑えることができるようになるのです。
● 社会的信用を得ることができる
法人化するためには定款を作成し、公証人による認証を受け、法務局で設立登記をする必要があります。個人経営は開業届を税務署へ提出するだけで簡単に起業することができますが、法人の場合は設立登記によって法人格が形成されるため法的な効力が生じます。
民法や会社法の権利主体としてさまざまな事業展開をすることが可能となるため、法人化することで社会的な信用や信頼性を確保することができるのです。
法人化のデメリット
マンション経営を法人化するデメリットは2つあります。
● 法人化するための手続きが煩雑
法人化するためには定款の作成・認証、設立登記などの他にも、労働保険への加入や法人新規設立届の届出、法人口座の開設など、さまざまな手続きをすべて行わなければなりません。多少費用がかかることはあっても、専門家へ依頼すればデメリットを解消することができます。
● 役員報酬を損金にするためには一定のルールを守らなければならない
役員報酬は税務上、損金にすることで法人税の節税効果が上がるメリットとなりますが、事業年度の途中で役員報酬を増額したり減額したりすると、変更前から増減した部分については損金算入できなくなる可能性があります。
役員報酬を損金にするためには、定期同額給与や事前確定届出給与、利益連動給与のいずれかに該当する必要があり、定期同額給与を採用するのが一般的です。事前確定届出給与は予め税務署へ届出をしなければなりませんが、定期同額給与は事前の届出は不要です。利益連動給与は有価証券報告書に役員報酬の額を記載する必要があることから、原則として上場企業のみ適用するものとして考えます。
定期同額給与を採用した場合は、業績に応じて支給額を変更すると損金不算入として取り扱われてしまいます。支給額の変更が減額の場合であったとしても、です。そのため自由に役員報酬を設定することができない点が、デメリットとして作用することがあります。
結局、個人と法人化どっちがいいの?
個人と法人化のどちらがいいのかは、経営者の考え方によります。とにかく税金を抑えたいと考えるなら、手続きの煩雑さや役員報酬が変更できないデメリットはそれほど負担にはならないでしょう。しかし毎月同額という制限なく事業のお金を自由に使いたい人にとっては、税金を抑えることができても不自由を感じることがあるかもしれません。
経営者が最も大切にしている価値観は一人ひとり違うため、個人と法人化のどちらがお得なのかということを一概に結論づけることはできません。
法人を個人事業に戻すことも可能
法人を解散して、個人事業に戻すこともできます。その場合は解散登記が必要になるため、登録免許税の費用がかかります。また入居者との賃貸借契約を再度締結する必要があるなど、それなりに手間もかかります。法人化のメリットとデメリットをよく理解して、慎重に検討するようにしましょう。
コメント
コメントを書く