不動産投資には、さまざまなリスクが存在します。空室リスク、家賃下落リスク、家賃滞納リスク、火災・天災リスク、事故物件リスクなどが挙げられます。
想定されるリスクが明確になっているとはいえ、なぜ投資で利益を得ている人といない人に分かれてしまうのでしょうか。それは、不動産投資の成功と失敗の分岐点が、購入前の物件選びから始まっているからなのです。
その1 3つのPに注目する
物件を選定する際に、最も重要視するべき指標として3つのPがあることをご存じでしょうか。このPとは、物件の価格(Price)、場所(Place)、構造(Plan)を指しています。
物件の価格(Price)とは、市場の取引価格を把握することを意味しています。一般的に取引相場は坪単価で表され、物件価格を面積で割り、更に3.3平方メートルで割ったものです。この坪単価を基に近隣の類似物件と比較することが大切で、坪単価が高い場合は設備・機能が付加されているなど、明確な理由があれば価格的に妥当であるといえるのです。
物件の場所(Place)とは、最寄り駅からのアクセスや周辺環境を意味しています。最寄り駅への徒歩時間、最寄り駅に行くまでの道路状況、商業施設・教育施設・病院などのインフラが近隣にあるかどうかで、利便性・快適性が異なってきます。また、立地の選定に際しては、対象とするエリア人口の転入・転出動向、世帯数や再開発・交通関連の整備状況、大学の移転動向など賃貸の需要に影響を及ぼすことも調べておいたほうがいいでしょう。
物件の構造(Plan)とは、間取りや収納スペースといった部屋の形を意味しています。壁や床の厚さ、天井の高さ、窓の構造などは物件毎に異なっており、床暖房やキッチン・トイレなども含めて、必要な設備は何かを明確にしたうえで決める必要があります。また、賃貸の対象を独身・単身者層とするかファミリー層とするかでも、場所・間取りなどが異なってきます。さまざまな切り口で、何を重視するかを明確にして物件を選定する必要があるのです。
その2 キャッシュフローと返済比率に注目する
物件の利回りを気にする人は非常に多いですが、利回りとはあくまでも目安でしかありません。非常に高い利回りの物件であっても、詳細に収支計算していくと毎月残るお金が少ない場合があるのです。理由としては、物件のキャッシュフローに注目していないことが挙げられます。
キャッシュフローとはお金の流れを意味し、不動産投資においては毎月得られる家賃収入からローン返済額と管理費等の必要経費を差し引いた、残りのお金を指します。毎月のお金が多く残れば、物件自体の修繕や室内設備の取替えなど、急な出費に対応することができます。
不動産投資は、物件がもつ利回りではなく、どれだけ毎月のキャッシュフローを得られるかが成功と失敗の分岐点になるのです。
キャッシュフローに関係する返済比率とは?
キャッシュフローと密接な関係があるのが返済比率は、毎月の金融機関へのローン返済額を家賃収入で割った割合で、一般的には満室時の家賃収入で計算される場合が多いものです。この返済比率は50%以下である方が望ましいとされています。理由は、物件の維持管理には管理費、固定資産税などの必要経費、修繕費がかかるため、返済比率が大きいと、空室が増加したり修繕費が増大するなど、キャッシュフローが赤字になるからです。
返済比率を小さくするには、毎月のローン返済額を抑える必要がありますが、融資期間を長期化できればそれは可能です。
金融機関で決定する融資期間は、物件の構造ごとの耐用年数(使用できる期間として法的に定められた年数)に委ねられています。鉄筋コンクリートで47年、重量鉄骨で34年、軽量鉄骨で27年、木造で22年とされています。つまり、多くの金融機関では、融資期間は耐用年数内とすることが多く、購入しようとする物件の構造と築年数によって、融資期間に差が生まれ、返済比率も変わってくるのです。
その3 修繕履歴に注目する
物件の築年数が経過すると、老朽化が進んできます。特に築10年以上の物件を購入する場合には、修繕履歴を確認しておく必要があります。なぜなら、購入後に雨漏れなどの予想外の損傷が発生した場合は、数百万円規模の出費を余儀なくされ、キャッシュフローに影響を及ぼすからです。今までに修繕した箇所が把握できれば、これからどの部分が壊れやすいか、予防保全的にどこを交換すればよいか把握でき、計画的な資金繰りができます。
修繕履歴にさまざまな修繕実績がある物件ならば、きちんと管理されていた物件と評価できます。裏を返せば、修繕履歴がない物件は、外観がきれいでも見えない所でリスクを抱えている可能性があるので、注意が必要です。
不動産投資成功への道は物件選びから始まっており、極力手がかからない物件を選定するだけでなく、入居者が求めているものを考えながら選定することが重要です。また、物件の価格と返済期間、借入金の利息などを総合的に勘案して、無理が生じない物件を選定することも大切です。
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