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躍動する歴戦の勇士 ~独ブンデスリーガでプレーする日本人の前半戦~

2015/01/30 23:36 投稿

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 歴戦の勇士が躍動した。1月30日(現地)から後半戦に突入する独ブンデスリーガ。その前半戦では、彼の地で長きに亘(わた)り奮闘する日本人が、“匠の技”を尽くして声価を高めた。間もなく渡独から4年になる岡崎慎司(マインツ)は、8ゴールを叩き込んで得点ランキングの4位に名を連ね、5季目を迎えた内田篤人(シャルケ)は怪我を押して攻守にチームを牽引。8度目の冬を過ごす長谷部誠(フランクフルト)は日本人で唯一全試合に先発し、要所を心得たプレーで中盤に落ち着きを与えた。4季目に突入した乾貴士(同)も、昨季の不振を払拭。多くの好機を創り出した。研鑽の日々の数と厚み。彼らの輝きは、その重要性を雄弁に語る。

○歴戦の勇士が存在感を発揮

 独ブンデスリーガの2014-15シーズンでは、17節を終えた時点で13人の“侍”がピッチに立った。



 プレー時間と得点で最多を記録したのは岡崎だ。プレー時間は1440分、得点は8を数えた。8得点はリーグ全体でも4位で、上にはマイヤー(フランクフルト、13得点)、ロッベン(バイエルン、10得点)、チュポ=モティング(シャルケ、9得点)しかいない。さらに、岡崎と同じ8得点のベララビ(レバークーゼン)も含めた「得点ランキング上位5傑」を決定力(得点÷シュート数で算出)で並べ替えると、マイヤー(25.5%)、岡崎(24.2%)、チュポ=モティング(22.5%)、ロッベン(17.2%)、ベララビ(12.3%)の順。優れた決定力を証明した。

 アシストは、内田と清武弘嗣(ハノーファー)が3で並んだ。チャンス創出数は乾が65でトップ。清武(57)、岡崎(52)、香川真司(ドルトムント、45)と続く。パス成功率は、香川が首座。回数は412と少なめだが、それでも83.3%は立派だ。クロス成功率は、10回以上の試行を対象とし、16回で31.3%の内田が1位。酒井高徳(シュツットガルト)も17回で29.4%と好結果を残した。1対1の勝率は、61%の酒井宏樹(ハノーファー)が他の追随を許さず。とりわけ空中戦は63.8%と高い。

 メディアの評価では、内田と岡崎が株を上げた。特に前者は「キッカー」で39位、「ビルト」で47位と、両方の50位以内。一段の進境を示した。後者もキッカーで73位、ビルトで85位と、共に100位以内だ。2桁の順位は2人だけで、酒井高や酒井宏、細貝萌(ヘルタ・ベルリン)は厳しい数字をあてられた。日本人の姿が“当たり前”になった今、助っ人に相応しい質を求める視線は、鋭さを増しつつある。

○リーグを代表するストライカーに登り詰めた岡崎

 そうしたプレッシャーを跳ね除け、チームの“エース”を担うのが岡崎だ。今季は指揮官が交代し、戦術も再構築されたが、序盤から得点を量産。8得点1アシストを計上した。


出典)独ブンデスリーガ公式サイト


注)△はプラス、▲はマイナスを示す

 得点とアシストは昨季と同じだが、“中身”では今季が上回る。パスやクロスが減少しているように、より中央の高い位置でのプレーを課され、激しいマークに遭いながら、残した数字だからだ。出足の鋭さ、こぼれ球への反応の速さといった長所には磨きがかかり、短所だったキープ力も日進月歩で向上。ゴールのバリエーションも増えており、リーグを代表するストライカーに登り詰めた。

 貢献度では、内田も負けていない。


出典)独ブンデスリーガ公式サイト


注)△はプラス、▲はマイナスを示す

 大手メディアの採点では、日本人でトップ。攻守に気が利き、右サイドに平穏をもたらした。攻めてはビルドアップの起点になりつつ、時にペナルティエリア内まで侵入。前線に厚みを加えた。課題とされたクロスの成功率も昨季の28%から31.3%に上昇。出場は昨季より2試合少なかったが、アシストは1つ増えた。守っては名立たるアタッカーを封殺。地上戦での1対1の勝率は、昨季から4.6ポイントも改善された。失点を瀬戸際で阻止する値千金のブロックもあった。

 復活の狼煙を上げたのが乾だ。


出典)独ブンデスリーガ公式サイト


注)△はプラス、▲はマイナスを示す

 昨季はフェー監督(当時)のシステム変更で居場所を失い、限られた出番も生かせず、失意の日々を送ったが、今季はテクニシャンを愛するシャーフ監督の就任で甦った。元々、途中出場では試合の流れを掴めず、十分な時間を与えてこそ真価を発揮できるタイプ。まるで水を得た魚のように、柔らかいボールタッチやキレのあるドリブル、創造性に溢れたパスを取り戻し、対峙する敵に恐怖を植え付けた。シュートの精度が低いのは「玉に瑕」だが、言い換えれば向き合うべき壁は明確。それを乗り越えれば、上のステージが見えてくる。

 長谷部も、シャーフ監督の信頼に応えた。


出典)独ブンデスリーガ公式サイト


注)△はプラス、▲はマイナスを示す

 スタッツは出場試合数、プレー時間、パスの回数がプラス、アシストが昨季と同数、他はマイナスと芳しくないものの、豊富な経験に裏打ちされたGPSのように精密な予測で危機の芽を迅速に排除し、長短を使い分けた的確な配球で攻撃のリズムを“整える”職人芸は、数字では計れない。基本的には中盤の底で起用されているが、トップ下を任された試合では浦和レッズ時代を想起させる力強い縦への突破も披露。タスクに応じて自在にポジションやプレーを変えられるユーティリティ性は、フランクフルトでも健在だ。

 経営規模の小さいハノーファーが大枚(推定430万ユーロ)をはたいて獲得した清武は、徐々に期待に応え始めた。


出典)独ブンデスリーガ公式サイト


注)△はプラス、▲はマイナスを示す

 リーグでも随一の精確性を備えたキックで、3得点3アシスト。わけてもプレースキックは脅威を与えた。ハノーファーは組み立てに苦慮するとロングボールを多用するきらいがあり、パスが足元に来ないと消えてしまうのは、ニュルンベルク時代からの悪癖。劣勢になるとミスを連発する精神面の弱さとともに、克服を急ぎたい。

○成長の轍と課題

 定位置こそ確保しているものの、目立った戦果を挙げられずにいるのが酒井高、酒井宏、細貝だ。

 それぞれの成長は、スタッツからも窺える。

 酒井高はクロスの成功率が昨季から19.9ポイントもアップ。回数は僅かに減ったが、精度を上げた。


出典)独ブンデスリーガ公式サイト


注)△はプラス、▲はマイナスを示す

 酒井宏はパスの回数が35、チャンス創出数が1、それぞれ昨季から増えたように、攻撃への関与が活発化。自信をまとい、持ち前のダイナミックな突進も頻繁に見られた。


出典)独ブンデスリーガ公式サイト


注)△はプラス、▲はマイナスを示す

 1対1の強さは相変わらずで、勝率は地上と空中の両方で6割を超える。サイドバックとしてはリーグで屈指だ。

 細貝は、空中戦の勝率が昨季から10.6ポイントも伸長。サイズに恵まれているわけではないが、ポジショニングや駆け引き、読みに長け、怜悧に競り勝つ。


出典)独ブンデスリーガ公式サイト


注)△はプラス、▲はマイナスを示す

 三者三様に進歩の轍(わだち)は伸びている。しかし、揃って継続性を欠いた。

 酒井高はチームの不振にも引きずられ、軽挙妄動で交わされたり裏を取られたりする頻度が多く、一時は控えに降格。前半戦の終盤は先発に返り咲いたが、トップフォームには程遠い。

 酒井宏は果敢と無謀の境界線が無謀側に引かれがちで、ムラを隠せず、ポカやファールが嵩んだ。

 細貝はワールドカップブラジル大会のメンバーから落選したショックもあったか、いつになく消極的。パスの回数が昨季から240も減っているのは、その証左だろう。成功率も10ポイントの下降で、ミスのない繋ぎが第一義である中盤の底の選手として68.7%は寂しい(ちなみに、バイエルンのシャビ・アロンソは1554回で90%、ヴォルフスブルクのルイス・グスタボは812回で87.6%)。

○古巣の愛に報い切れない香川と壁に直面する“新顔”

 マンチェスター・ユナイテッドからドルトムントに帰還した香川も、イングランドでの不遇に救いの手を差し伸べてくれた古巣の愛に報い切れずにいる。


出典)独ブンデスリーガ公式サイト
 
 復帰戦でゴールネットを揺らした瞬間は、かつての“ランデブー”の再現を予感させたが、以降はチームとともに低空飛行。怪我人が後を絶たず、降格圏に沈むチームを引き上げようと腐心したが、コンディション不良や試合勘の鈍化などが足枷(かせ)となり、得点は1、アシストは0と結果が伴わなかった。

 元来、敵陣の深い位置でボールを引き出し、鋭いターンと俊敏なステップで守備網をかいくぐり、ゴールを奪うアタッカー。チームの状態が悪く、十八番の型へ導く“お膳立て”が少なかったのはエクスキューズだが、実績からすれば本人もファンも不本意なデキだろう。

 また、“新顔”は壁に直面している。

 浦和からベルリンに降り立った原口元気は、開幕戦に先発してアシストを刻む絶好の滑り出しだったが、不運にも右肩の負傷で長期離脱。急停止を余儀なくされた。復帰後はポジション争いで後れを取り、出場機会が減少。限られた時間で懸命なアピールを繰り返している。自他共に認めるストロングポイント、すなわち鋭利なドリブルとそこからの得点力を磨き上げ、後半戦での爆発に結び付けたい。


出典)独ブンデスリーガ公式サイト

 2部の1860ミュンヘンから“個人昇格”した大迫勇也(ケルン)も辛酸を舐めた。


出典)独ブンデスリーガ公式サイト

 出場した12試合のうち、先発は半分の6。不可解なベンチ外もあった。しかも、起用はトップ下がメイン。ウジャーという絶対的な存在のサポートに回らされ、本人が望む“最前列”を手中に収められずにいる。まずはチャンスメイクで魅せ、監督への説得材料とすべきだろう。

 大迫の同僚である長澤和輝は、前半戦の多くをリハビリに費やした。昨季の昇格の立役者の1人で、前線にタメや流動性を生む仕事は、彼以外にできない。万全になれば出番は訪れるはずだ。


出典)独ブンデスリーガ公式サイト

 セレッソ大阪からドルトムントに期限付き移籍中の丸岡満は、セカンドチームが主戦場。トップチームでの11分の出場は、野戦病院と化した苦境での起用だった。もっとも、その決断をクロップ監督に促したのは、彼の資質が一級品だからだ。じっくりとプロ仕様の身体をつくり上げ、将来の飛翔を目指したい。


出典)独ブンデスリーガ公式サイト。英語版ではデータがエラーのため、独語版

○それぞれの目標へ挑む後半戦

 明暗や喜怒哀楽が入り混じる前半戦を経て、蒼き侍達は後半戦に臨む。チャンピオンズリーグの出場権の獲得、残留、復活、定位置の奪取…それぞれの目標へ、全身全霊を懸ける日々の再開だ。



<編集後記>

およそ半年ぶりのブロマガです。しかも、仕事が忙しく、手抜きですみません。本当は、個々のパフォーマンスを細かく振り返りたかったのですが、再開前に間に合わせるために泣く泣くカットしました。

内容は乏しいですが、日本人が14-15シーズンの前半戦をどう戦ったのか。後に振り返るためにも、まとめておきます。ブロマガを発行し始めてからは、欠かさず取り組んできましたしね。

何かの役に立つ…とは思えませんが、時間潰しにでもなれば幸いです。

ちなみに、日本人と比較できそうなポジションのトッププレイヤーのスタッツは以下の通りです。



デ・ブルイネのアシストとチャンス創出数、シャビ・アロンソのパスの回数と成功率、ババのクロスの回数は驚異的ですね。チャルハノールのチャンス創出数も113とデ・ブルイネに迫ります。乾や香川、清武には、デ・ブルイネやチャルハノールの数字を追い越すような衝撃を期待して止みません。

ババのクロスの回数は、彼の攻撃参加がアウクスブルクの武器になっている証です。スタッツは、チームのスタイルも浮き彫りにします。そういった意味で、データも重要ですね。

ではでは、また。

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