2月1日放送の『しゃべくり007』(日本テレビ系)の「ネコ好きSP」に出演した長瀬智也。愛猫"みーちゃん"について「女を武器にしている。まばたきをゆっくりする瞬間が一番かわいい」などと溺愛ぶりを語っていた。
その長瀬が主演するドラマ『フラジャイル』(フジテレビ系)。俳優としては近年、『しゃべくり007』に共に出演した宮藤官九郎作品の『タイガー&ドラゴン』『うぬぼれ刑事』(共にTBS系)など、押しの強い変わり者役のイメージが強い。『フラジャイル』でも「強烈な変人だが極めて優秀」と評される病理医の役で偏屈ぶりを発揮しているが、これまでにないヒーロー像も生み出している。
病理医とは患者を直接診る臨床医と違い、患部から採取された細胞や組織を顕微鏡で調べて病気の原因を解明する専門職。治療方針を大きく左右する。長瀬が演じる岸京一郎は病院で白衣をまとわず、常にスーツ姿。臨床医が見逃したことを検査で徹底的に突き止め、「あんたバカなのか?」と歯に衣着せずにやり込める。最後には「君たちが医者でいる限り、僕の言葉は絶対だ!」という決め台詞を発して。
医療ドラマでは医師が患者と向き合うのが普通だが、病理医の岸は基本的に患者と会いもしない。それゆえ患者には辛い事実も含めて客観的な判断を下すが、その診断で顔も知らない患者の命を救っても、直接感謝されることはない。自らも「標本はいいぞ。面倒くさくない」と発言したり、ふるまいはアウトロー的な岸だが、臨床医の「ほぼ間違いない」という所見にも「1%の可能性を潰せていない。こっちは10割の診断を出す」と検査の手を緩めないのは、"命を救いたい"との強い想いが秘められている。クールだが内面は熱いところを長瀬が絶妙に醸し出している。同じ偏屈でも、これまでの破天荒系の役とは印象がだいぶ違う。
『救命病棟24時』(フジテレビ系)や『ドクターX』(テレビ朝日系)では患者を処置したり手術するシーンが山場となっていたが、病理医の岸は医療行為としては顕微鏡を覗くだけ。それでも画面に引きつけるのが長瀬の特性だろう。映像の世界では台詞がなくても自然に観ていられる役者を"画(え)が持つ"というが、長瀬はその典型。決め台詞の「僕の言葉は絶対だ!」に行くまでの抑えたたたずまいこそ、カッコよく映る。患者に「ありがとう」と言われるのは臨床医でも、視聴者には彼こそ真のヒーローに見えて。
このフジテレビ系水曜10時枠は、裏の日本テレビ系「水曜ドラマ」枠の『きょうは会社休みます。』『花咲舞が黙ってない』などに視聴率で負け続けて、この『フラジャイル』を最後にバラエティ枠に戻る。『フラジャイル』も現在のところ、『ヒガンバナ』に数字で遅れを取っているが、ネットの感想では長瀬について「クールなのが新鮮」「顔が最高にかっこいい」など、存在感が改めて注目されている。
4話では冷徹な岸もかつては臨床医だったことが明かされた。彼の過去に何があったのか? フジ"水10"ドラマの最後のひと花として、期待したいところだ。
文・斉藤貴志
■参照リンク
『フラジャイル』公式サイト
http://www.fujitv.co.jp/FG/index.html
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