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「動物園」と「出版社」に勤める女性ラッパー:Y.I.M オモロ&脱力系なラップは2016年の台風の目になるか!

2016/01/17 12:30 投稿

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「パンケーキis小麦粉

女の子パンケーキ好きっしょ?

原材料たこ焼きと一緒」

("パンケーキ")



......と、なんとも身も蓋もないリリックを生み出しているのが、女性2人組ラップ・ユニット:Y.I.M。「某出版社で働く根暗で元ショートカット女『オミール』と、某動物園で働く三白眼で元ワンレン女『あすちゃん』からなるおしゃべりガールズ」なラップ・ユニットは、高校の時からの友人で結成された。そして2011年、オミールが一方的にラップに興味を持ち、あすちゃんの留守番電話へ、日々の出来事を綴ったラップを残し始めた事から、Y.I.Mは始まる。

あすちゃん「突然オミールが『ラップは不良だ!』って言い出して、ラップをするのにハマって。それで留守電に勝手にラップを入れてきて『お前も返せよ!』って。そうやって強要されたのが最初ですね(笑)」

オミール「あすちゃんの携帯に、自分が日頃思ってた文句や不満をラップで吹き込んで、それで『アンサーしてこいよ!』って(笑)。その内容をGarageBandで録り直して、自分達で聴いてゲラゲラ笑ってたんですけど、それを近しい人にも聴かせたら、面白がってトラックを作ってくれて。そしたら作品っぽくなったんで、出来たものを友達に配ってたら、いつの間にかライヴに呼ばれるようになって今に至ってます」

というキッカケから始まった事からも分かるように、いわゆる「アンダーグラウンド・シーンで!」や「○○クルーに所属して!」というような、ヒップホップらしいキャリアは全く、無い。

オミール「原点は完全に遊びですね」

あすちゃん「最初は悪ふざけだよね。ラップ自体、人並みに、普通にかかってるのを聴く程度しか知らなくて」

オミール「......こういう事言ってると、ホントに頑張ってる人にいつか怒られそうだし、そうじゃない人にも最近すごい怒られるよね。『ラップに失礼!』って言われる(笑)」

あすちゃん「私達も頑張ってるのに!(笑)」

そういった流れで音源の制作を進めつつ、バンド「思い出野郎Aチーム」周辺などのイヴェントやライヴに参加する中で、レーベルの目に止まり、2014年に1stミニ・アルバム「Y.I.M」リリース。そこで描かれた前述の"パンケーキ"や、

「胸でかくねえから家出たくねえ

揺れないぶれないかなり丈夫/100人乗っても大丈夫

真っ直ぐ走るミニ四駆/でも急勾配憧れる」

と、「逆ダイナマイト・ボディ」を歌った"classA feat. 焼酎ビッチ from うる性やつら"など、コミカルでありながらも「この切り口があったか!」と驚かされるリリックの内容は、(物好きな)リスナーに衝撃を与えた。その意味では、イズムやメンタリティも重要な要素とされるヒップホップにおいて、その飄々としたリリックは異端ではありながらも、新しいリリックの可能性を描いていることには間違いはない。

あすちゃん「二人で、このテーマ引っかかるね、笑えるね、って、クスクス出来る事をテーマにしてると思いますね。そこを狙ってるって言うよりは、単純にそれが楽しいからやってるっていう感じで。表現にダブル・ミーニングとかもなく、全部そのままの意味ですから(笑)。だからウケるっていうのがテーマかもしれない」

オミール「二人でしている馬鹿話をラップにしてるっていう感じですね。ラップしよう!っていうよりは、いつもゲラゲラ笑ってる内容をラップに置き換えて、曲にしていくっていうか。だから、伝えたいメッセージやイメージは無いんですよ、私達(笑)」

そんな二人は前述の通り、出版社と動物園という、それなりにお堅い職場で仕事をしている。

オミール「お金の事、将来の事、上司の事......そういう仕事に纏わるフラストレーションを、解消する一つ手段が、ラップやライヴだったって部分がありますね」

あすちゃん「鬱憤ばらしというか、はけ口というか。だから、昼間、働いてなかったら、もしかしたらラップはやってなかったのかなって思います」

ただし、彼女達の作品にはそういった「仕事の辛さ」や「上司への不満」であったりという、ある種、仕事に纏わるベタな表現はほぼ出てこない。

オミール「二人でやってるからだと思いますね。ふたりの抱える不満をミックスして、茶化してるから、それぞれが個別に抱える辛さみたいなモノは、形にならないのかなって。あと、辛さとか怒りは書いても笑えないから、形にはあんまりしたく無い」

あすちゃん「会社の話とかだと、会社勤めじゃない人には伝わりづらいと思うし、そういう話って、一般性は実はそこまで強く無いのかなって。それよりも、例えば"パンケーキ"みたいに、『私たちはけっこう大変な生活をしてるのに、女子大生とかは高いパンケーキとか食べて、SNSに自撮りをアップしてやがる!!』とかっていうモヤモヤを、茶化したりやっかんだりしてた方が伝わりやすいし、笑えると思うんですよね」

とは言え、今年10月にリリースされた2nd「Conceptually」に収録された"大丈夫※月給十万で迎える三十"は、

「パートタイムジョブ月給十万で迎える三十

あと五年もある あと五年しかない パーッとしてたら大丈夫」

というリリックが登場する。雇用不安や労働環境のブラック化、先行きの不透明さという、社会的な不安を、ここから感じることは難しくないだろう。特に、社会的なイズムを声高に言うタイプではないY.I.Mが、こういった内容を作品にするからこそ、そこに非常なリアリティを感じさせる。

オミール「トラックは明るいんですけど、内容はとびっきり暗いです。ライブでやると、お客さんがどんどん引いて行くっていう(笑)。この曲を作ったのは3年ぐらい前で、その時はトラックも暗かったんですよね。だけど、時間が経っていって、リリックの内容がどんどん現実味を帯びていってるんで、自分達で歌ってても、もう本当に怖すぎるんですよ。30も間近になって、このまま低賃金かも知れないし、先行きもホントにわからない......って状況で。だからこそ、せめてトラックは明るくして、曲の中だけでもいっそ開き直って、『もう知らねえよ!』みたいな曲にしようと思ったんですよね」

あすちゃん「実際、今日もお金が無いって事をずっと考えてて、涙が出そうになって。Twitterに『所詮世の中カネだ』って書こうと思ったけど、流石にダメだと思って踏みとどまりました(笑)」

勿論、そういった内容に加えてファッションについて歌った"コーデ"や、



タイ旅行を歌った"タイランド"(......どっちもそのまんまだ)など脳天気な内容や、お互いの亡き祖母について

「叫ぶマザファカ 指は真ん中

一番長いし届くかな空に 仮にお空にいたらの話

(オミールの祖母が)あすちゃんのばーちゃんと泳ぐデスマッチ

ワンツーフィニッシュ Y.I.Mグランドマザーズ」

と言葉の裏側に愛を感じる"グランドマザー墓"など、バラエティに富んだ内容となっている。

あすちゃん「おばあちゃんの仏壇にはCDを供えてあります(笑)。テーマに沿って作った訳でもないので、ゴチャゴチャっとした、よりバラバラのアルバムになったかなって」

オミール「だから、なんで『コンセプチュアリー』なんだっていうのは、自分達が一番感じてますね(笑)」

そんな彼女達は「この先」をどう想定しているのだろうか。

あすちゃん「Y.I.Mとしての目標は......無いんですよ(笑)。でもラップやリリックを書くのは好きだからやってるし、いつでも楽しくできたら良いなって。自分たちの健康を気遣いながら、無理せずにできればと」

オミール「そして、目標はメイク・マネー!」

あすちゃん「あ、ラッパーっぽい!(笑)」

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