その衝撃の展開にヒッチコックの『鳥』や金字塔『猿の惑星』などを引き合いに出した絶賛評があふれ、センセーショナルな反響を巻き起こした問題作『ホワイト・ゴッド 少女と犬の狂詩曲』! かわいすぎる少女と一匹の犬の、心温まるメルヘンが続くと思いきや、中盤以降、無数の犬が人類に牙をむく緊迫感に満ちたパニック・スリラーに大チェンジ! そこにはアーティスティックな社会派メッセージも込められていて、現代社会への警鐘が鳴りまくっている。この大傑作を撮ったコーネル・ムンドルッツォ監督にハナシを聞いた!


――監督の今作品に対する情熱の下側には、怒り、悲しみ......感情で言うと、何になるのでしょうか?

怒りだね。それは、我々の社会に対しての怒りだ。この映画に着手した際の、忘れられないひとつのイメージがあって、犬が保護され、ゆくゆくは薬殺され......という場所に初めて行った時、フェンス越しに犬の目を見たわけだ。その時に大きな恥と大きな怒りを感じて、その感情を基に映画を作りたいと思った。そこからストーリーを開発し始めたから、それが大きなテーマにはなっている。それと、もう一つのテーマは、我々はいつ自分のイノセンスを失うのか、という問いかけだった。これは少女の方のストーリーになっている。

――ハンガリー国内で公開された後、たとえば皆犬に優しくなった、というような変化はありましたか?

250頭の飼い主探しをプログラムとして実行して、今は皆全員、家族として暮らしている。僕自身も、ほかの犬を保護するプログラムに参加することもしている。この映画の問いは、海水の中の一滴にすぎないよ。難民の問題が取り上げられているなかで、国内でも映画がたくさん再上映されているからね。犬の映画ではあるけれども、それだけではないということが皆に伝わって、すごくうれしく思う。感動した。本当に意味深いことだと思ったよ。

――ハンガリーでは、この映画で描く主人公の一家や父親の性格などは、典型的な家族像なのですか?

都市部では特に、片親で育てている方が多く、離婚も少ないので答えはイエスではあるけれども、伝統的にコンサバティブな国でもあって、ちょっと矛盾もある。モラルや法律があるなかで、ある程度一人で育てるとか離婚をしてという話も多くなっていて、多くの人がフラストレーションをすごく抱えているんだよね(笑)!


――そうそう、犬が向かってくるシーンがめちゃめちゃ怖いじゃないですか。撮影中に監督たちに牙を向けてくることもあったんじゃないですか? ありましたよね?

全然そんなことはなかったよ! 今回は真逆の状況で、牙をむくとか脅威を感じるといったことは一切なくて、どちらかというと一緒に生きている、生活しているといった環境だった。虐待された犬を虐待するようなことはしていないから、全然そんなことはなかったよ。後は、真実をなるべく誠実に見せることが重要だと思っていたので、実際に起きたこととして、そのまましっかりと捉えることはしていたけれどね。

――今日はありがとうございました! AOLニュースの読者って30、40代の男性ばっかりなんですよ。主人公の父親みたいな人もいるかもしれないので、一言お願いしてもいいですか?

自分自身に誠実、正直であること。それから、何事も勝とうとせずに、会話を始めるということかな。常に何事も勝ちたいと思う気持ちで生きていると、負けてしまうことが多くなるからね。


2014(C)Proton Cinema, Pola Pandora, Chimney

https://youtu.be/4A30oz1DhLk

2016年1月16日より横浜ジャック&ベティ他全国順次公開中!

■参照リンク
『ホワイト・ゴッド 少女と犬の狂詩曲』公式サイト
www.whitegod.net

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