米アマゾン・ドットコムが自社制作のドラマ『The Man in the High Castle(高い城の男)』のプロモーションの一環として、ニューヨーク州都市交通局(MTA)内で行っていたナチスドイツと大日本帝国のシンボルをイメージしたラッピング座席の広告がネット上で大論争に発展していたが、非難を受け撤去されることとなった。
ドイツと日本が第二次大戦に勝利した"架空世界"を描く、SF作家フィリップ・K・ディックの同名小説「高い城の男」をアマゾンがドラマ化し、自社のオンラインビデオサービスで11月20日より提供することを受け、タイムズスクエアのシャトル便の座席に描かれた広告は、アメリカ国旗の内側にナチスの鷹マークと、日本の旭日旗をイメージしたデザインで、車両の外側にも同様のシンボルが描かれている。今回、原作のオリジナルカバーで使用されているナチスドイツのハーケンクロイツと旭日旗をオリジナルのまま使用することは避け、デザインを一部変更していたものの、「Gothamist」のようなローカル・メディアを皮切りに、この広告キャンペーンへの批判が広がっていた。
ファシストのシンボルを想起させるものにも関わらず、歴史を知らない若者や子供たちから「この地下鉄のラッピングはクールだ」とのコメントや、一方でTwitterでは「アマゾンが宣伝で"表現の自由"の権利を行使しているのは分かるが、愉快ではない」との反対意見、このドラマの素晴らしさを書き込む人などネットの意見は様々だが、地下鉄の利用者の多くはこの広告に対してあまり快く思わなかったようだ。
42nd St shuttle to #TimesSquare covered in Nazi Germany and Imperial Japan symbols for @amazon ad. Is this ok? pic.twitter.com/ysJ3m0UIPT
- Katherine Lam (@byKatherineLam) 2015, 11月 23
ニューヨークの地元局PIX11のインタビューに答えたアン・タバックさんは「現実と異なる未来を描いたテレビ番組を抑制しようという訳ではなく、地下鉄という公の場がヘイトスピーチやそれを助長するシンボルを広める環境を作り出すべきではない」と語る。一方、MTAの広報担当、アダム・リスバーグさんは「この広告がコンテンツの中立性の基準を欠き違反しているものとは思わない」と反論。ちなみに通常のMTAの広告規程では「すでに論争中の政治問題の意見広告の掲載」や「私的な表現活動や意見など公共性の無い広告」は掲載されるべきではないとしている。
この電車広告は11月15日から12月14日の1ヶ月間掲出され、260の駅でポスター広告などが貼られる予定だったが、今回のクレームを受けニューヨーク市のビル・デブラシオ市長などが「第2次世界大戦とホロコーストの生存者の感情を考慮して欲しい」と声明を出したことから、現在撤去作業が行われているという。
なおMTAは、有料の商業コマーシャルと政府広報などで、年間約1億3000万ドル(約160億円)の広告収入を得ている。
■参照リンク
http://www.aol.com/
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