どうも、働く皆様!しんどいですかー!?
『マッハスピード豪速球「ガン太」』の「どんなときも。」です。
皆様は就職したばかりの頃の自分を思い出して"青かったなー"何て物思いにふけることはございますか?理想ばかり追っていて何も分かっていなかった過去の自分に少し気恥ずかしい反面、"あの時のお前がいたから今の俺があるんだぜ・・"なんて感じに。
ボクもお笑いを始めて何だかんだ今年で9年目、最近では始めたばかりの頃を思い出して懐かしい何て話になる事が多くなってきました。
今回のお話しはそんな中でも一体あの日は何だったのだろうか?と今になっても良く分からない一日の思い出です。
今から6年ほど前ボクはお笑い養成所に通っていました。ボクはその時『河野さん』と『山下さん』と言う年上2人とトリオを組んでいました。その頃のボク達トリオの活動はライブに出なけりゃ、ネタも作らずに喫茶店で永遠とお笑い理論を語るという物で、毎日の様に5、6時間理論ばかり話し合っていた為、もう話は何周もして"ネタは作らなくていい""ライブには出なくていい"などの意味の分からない理論にたどり着いていました。
今思うと青い・・と言うかネタは作らなければいけないしライブには出なけりゃダメなことぐらい誰でもいつでもわかることですが、その頃のボク達は少しイカれてました。
中でも一番年上で芸歴もある『河野さん』のお笑い理論は当時のボクと『山下さん』の中では最強でした。
養成所は月12回授業があったのですが4回に1回位ネタを講師の方に見せてダメ出しをして頂くと言う授業内容の日があったのですが、その授業がボク達は嫌で嫌でしょうがありませんでした。そりゃそうですネタが無いのですから・・・。
何度かズル休みなどをして逃げ回っていましたが、ある日講師の方にくぎを刺され次の授業までにネタを作らなければいけない事になりました。数日の間渋々とネタを作り始めたボク達、何となくできたネタは漫才でした。
センターマイクの前に出て来て挨拶をしてボクのセリフ「ドラえもんの~のシーン憧れるよなー。ちょっとやってみようか?」と言う良くある感じで始まり、ボクと『山下さん』はドラえもんのコントの設定に入ろうとするのだが、一番年上の『河野さん』が難癖をつけてやらない為、ボクと『山下さん』が何とか色んな方法でドラえもんをやって貰おうと奮闘する漫才でした。
ネタ見せの授業当日、ボク達トリオはガッチガチに緊張していました・・そりゃそうです普段喫茶店でしか話していないので、人前でネタをするなんて・・・。ネタ見せでそんなに緊張している人なかなかいません。ボクらの出番がやってきました。
「どうもーよろしくお願いしますー・・」三人の自信なさげな声から始まります・・・
自信が無いのには理由があります、このネタ何となく流れを把握しただけで実はほとんど立ち稽古をしていなかったのです。(普通若手芸人は立ち稽古をしまくる物。)
何故ならば、ボクらの喫茶店での机上の空論の中に"漫才とは魂のぶつかり合い"という理論があったためです。これは、どんなに優れたネタの台本があっても、魂が籠っていなければ面白くない。逆にたいしておもしろくない台本でも、魂さえ籠っていれば面白くなるという理論です。
つまり余り練習しすぎると、ネタからは魂が消えていき面白くなくなるので、ボクらはネタをほぼ練習しなかったのです・・・。
結果、若手がそんな事をしても魂よりも不安の方が表に出てしまい、ネタの入りはたどたどしい事この上ない物に・・。。
ネタは続いていきます、途中『河野さん』にドラえもんをさせるには千円上げるしかないという話になり千円を渡しに行った『山下さん』が『河野さん』にビンタをされてしまうというくだりがあります。おそらくこのネタの一番の笑いどころになるであろうポイントです。
そのくだりがやって来ました・・。
山下さんが千円をもって行きます。
「河野さんこれで何とかドラえもんをやって頂けないでしょうか?・・」
・・・
"ビッターーンンンン!!!!!!!!"
一瞬の間の後信じられないくらい強烈なビンタがさく裂しました・・引くくらい強いやつです・・少し笑えないくらいのやつ・・・
少し強すぎじゃ・・と『河野さん』を見てみると小刻みに震えている気が・・おそらく緊張で力の加減がイカれてしまったのでしょう。
このままフェイドアウトするようにネタが終わっていきました・・講師の方はあきらかな稽古不足に大激怒し、話はビンタの話に・・。
「河野!!何だあのビンタは!客が引くだろ!あんなの芸じゃない!!」
「・・ネタは魂が籠ってないと・・」
「うるさい!お前らみたいのが何が魂だ!!弱いビンタを強く見せるのが芸だろ!!山下痛いだろうが!?」
「・・・痛くありません。」
「ウソ付け!!痛すぎてリアクションとれてねえじゃねか!!」
「こんなのが芸なのか!?えー!河野!?」
「はい・・僕はユルいビンタでは魂が籠らないと思っています・・」
「じゃあ、お前の事思いっきりビンタしたら笑いが起こるんだろうな!!してやろうか!同じビンタ!!」
「はい。」
「この・・バカヤロウ!!!」
"ビッターーンンンン!!!!!!!!"
「これが面白いのか!?」
「・・はい!」
"ビッターーンンンン!!!!!!!!"
・・・『河野さん』がシバかれまくっています・・。
『河野さん』は年上で芸歴も長くボクと『山下さん』は彼を"最強"と慕っていましたのでメッチャショックですしその光景がメッチャ恐いです・・・
「もう一回さっきのビンタまでのくだりやってみろ!!」講師が叫びます。
ボクのセリフからです!ボクはテンパって普段より大きく手を後ろに振りかぶりました。
「痛った!!」
!!??何という事でしょう!思いっきり『山下さん』の顔面に手の甲が当たってしまいました・・うずくまっている『山下さん』・・
「『山下さん』・・大丈夫??」
・・・
「はーほれはっちゃじゃないかよ!!!!!」こっちを向いて叫んだ山下さんの前歯が折れてしまっていました・・"歯折れちゃったじゃないかよ!!!!"と言っているようです・・
「ごめんなさい!大丈夫ですか!」必死で謝ります。しばらくすると手に鈍痛がするので見てみると、さっきの歯が刺さったらしく手からは激しい流血が・・
ビンタされまくった男、歯が折れた男、手から流血の男・・・。今思い出してもあれは地獄絵図でしかございません・・一体カオスなあの日は何だったんでしょうか・・
皆様は過去の自分を愛せるような成長の仕方出来るといいですね。
ボクも愛せるようになります!!
==著者プロフィール==
マッハスピード豪速球・ガン太
1984年生まれ。人間の本質をとらえたコントを得意とす るお笑いコンビのネタ作り担当。オフィス北野・フライデーナイトライブで才能を見出され、2012年1月オフィス北野所属となる。テレビ東京「ゴッドタン」の若手芸人対象アンケート『華は無いけど実力はある芸人』で3位と周りの若手芸人からも一目おかれる存在。日本喜劇人協会主催『第一回コント新人大賞』準優勝。また、水道橋博士の運転手だったことでも有名。
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