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今年20周年を迎える日本を代表するロックバンド・BRAHMANを描いた話題のドキュメンタリー映画『ブラフマン』。あまり見られることのなかったBRAHMANの素顔を映し出したのは、数多くの広告を手掛ける稀代のクリエイティブディレクター・箭内道彦。
撮影も手持ちカメラを使って自身で担当し、本作から生まれた主題歌の「其限 ~sorekiri~」のMVも撮影した箭内監督に話を伺った。

――映画『ブラフマン』拝見させていただきました。もう泣きっぱなしでした。あの<ビスコ>のCMに出ていたTOSHI-LOWさんとりょうさんの息子さんがあんなに大きくなって...。

箭内:そこ!?(笑)

――はい、もう涙が止まらなくなっちゃって...。

箭内:いいですね、こっちとしては願ったりかなったりです(笑)。ずいぶん大きくなったよね。あの<ビスコ>のCMは2010年に撮ってますから、もう5年近く前だなあ。
でも、それはいい話ですね、映画と全く関係ないけど(笑)。彼が大きくなったってことは伝えることができた!

――劇中冒頭でRONZIさんにメンバー紹介を聞いていますが、箭内さんがBRAHMANの4人を紹介するとしたら...?

箭内:嫌な質問ですねえ、いきなり(笑)。結局、自分でしたくないから代わりに映画を撮ったというか、他の人に聞いたんだなって、いま聞かれて思いました。『月刊 風とロック』でも最初の頃に「ロックとは?」って質問をみんなにしていて。でも、自分が聞かれると何て言ったらいいか分かんないっていうか、自分に答えのないものを人に聞くことが多いんだなって。僕らはインタビューする側ですけど、最初から答えを持っててインタビューするのって面白くないじゃないですか。たまに「何とか言わせるまで返さないぞ」みたいな人もいますけど(笑)。

なんか、答えを決めたくない性格なんだと思うんですよ、言い切りたくないというか。だからTOSHI-LOWがどんな人か? って、あんまり考えたことなかったですし、言ってもまた違うような気もするし...。それは映画の中で、りょうちゃんが「いろんなTOSHI-LOWがいるから、その一個だけを抽出することは不可能だ」って言ってたみたいに、人ってみんなそうなんじゃないかって思うんですよね。

だからロンちゃんに「一言で紹介しろ」って(笑)。ロンちゃんは上手いこと言ってるなと思います。でも、人ってもっと複雑かつシンプルっていうか...って言いながら、答えなきゃいけないものから今逃げてるんでしょうね、僕は。




――BRAHMANの4人との交流はいつ頃から始まったんでしょうか?

箭内:僕の大学の先輩であり予備校の先生でもあったタナカノリユキさんが90年代後半にBRAHMANのミュージックビデオを撮ってて、タナカさんと色々話してるときに「BRAHMANっていうバンドのビデオやるんだ」って見せてくれたMVがすごくカッコよくて。でも俺はこっちの感じじゃないなーなんて、ずっと思ってたんです。

それで、2005年のフジロックでTOSHI-LOWに『月刊 風とロック』でインタビューをしました。この時は話も全然噛み合わないし、お互い「なんか、つまんねえ時間だな」と思ってて(笑)。「この人とは友達になる必要ないな」ってお互いに思ってたんじゃないですかね。
それが、2010年にEGO-WRAPPIN'とBRAHMANが一緒にシングルを出すってなって、その頃から急速に距離が縮まりました。「5年ぶりに会ったら、なんか喋りやすいなあ」なんて、お互いにね。
だから人って出会う時期によって、例えば10年前だったら友達にならなかったような、20年前だったら絶対に付き合ってないような人ともね、自分が歳をとったり、相手も違う生き方をしていく中で、色んなマッチングがあるんだなって思いました。

その後、僕が演出した<ちふれ>のCMにりょうちゃんが出てくれたんですけど、その時の音楽がBRAHMANで、続けて<ビスコ>のCMがOAU(OVERGROUND ACOUSTIC UNDERGROUND)の曲になって。

OVERGROUND ACOUSTIC UNDERGROUND "夢の跡"
https://youtu.be/JZlBddtFHKI


<ちふれ>はジョン・レノンの『WOMAN』を使いたかったんだけど、権利の相談がオンエアに間に合わなくて、じゃあもうこれBRAHMANでいっちゃうか!って。<ビスコ>の時も、坂本龍一さんとか久石譲さんとか、そういう感じがいいなーなんてりょうちゃんに話してたら、「私も良いバンドひとつ知ってますよ」って、OAUを紹介されたっていう(笑)。

<ビスコ>のCMは、実は「子役を使ってほしい」って言われてました。でも、僕は絶対違うって思って、「りょうさんに会わせてください」って事務所にお願いして、息子さんを出演させてほしいって直談判しに行ったんですよ。
その時、俺が切り出す前に、りょうちゃんが「箭内さんが何を言いに来たか分かってるつもりです」って(笑)。「昨日の夜に家族会議をして、本人の意志も聞いて、息子と一緒に出ることにしました」って言ってくれたんです。

どっちのCMもTOSHI-LOWがナレーションしてるんですよ。「母と父と息子で作るCMって、なんかすごいな」と思いながらやってましたね。そこから震災があって、BRAHMANのその後の動きだったり、僕が福島でやってることだったりが重なってく中で、また『霹靂』『露命』『鼎の問』のMVを撮ったりと、なんか色んな繋がりが出来ていったって感じですかね。

BRAHMAN『霹靂』
https://youtu.be/l_Jx3LHnJJM


BRAHMAN 「露命」MV
https://youtu.be/6-Y6NQDHlRU


BRAHMAN 「鼎の問」
https://youtu.be/JQfKH-Iys5M



――では今回の監督オファーも、その流れの中での自然なものだったのですか?

箭内:明らかにそうです。りょうちゃんにも「なんで箭内さん、BRAHMANで映画を撮りたいと思ったの?」って聞かれたんですけど、「いや、これ頼まれたから撮ってるだけだから!」って(笑)。

――はじめは「映画はちょっと...」っていう感じだったとお聞きしました。

箭内:基本、映画は撮らないし、観ない。映画に対してもっと詳しい人、強い思いや哲学がある人が撮るべきで、自分は撮ってはいけないと決めていたので、全てのオファーを断わってたんですよね。BRAHMANから頼まれてた時点でも、面白そうだなという気持ちはゼロで。ただ「断りにくいなあ」っていうのはありましたね(笑)。CMに音楽つけてもらったり、やってもらってることもいっぱいあったから。<はごろもフーズ>のシーチキン食堂のCMにTOSHI-LOWを無理矢理出したり関係もあったんで(笑)。

怒髪天ともそうなんだけど、ムチャぶりをし合うっていう関係なんでしょうね。そこで「出来ない」とか「難しい」とか、「俺には無理」っていうのがどうしても口から出ないんですよ。言いたくないというか、悔しさもあるし、なんか負けたような気持ちになっちゃうので。あと「世話になるだけなっといて自分はやらねえんだ」って思われたくもないし(笑)。逆に、これをやることで今後いろいろ頼みやすくなるなっていう計算はある(笑)。

――今作の映画のテーマでもある "同志"という言葉は、箭内さんのことも含まれているわけですね。

箭内:入ってるかどうかは分かんないですけど、でも僕は同志だと思ってますね。

映画『ブラフマン』は7月4日(土) 新宿バルト9ほか全国公開


映画「ブラフマン」■予告
https://youtu.be/1whMXP0BNjQ


BRAHMAN「其限 ~sorekiri~」MV
https://youtu.be/jx-gqVt8Z_k


■参照リンク
映画『ブラフマン』公式サイト
http://brahman-movie.jp/

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