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全米で、一大ムーブメントを巻き起こし戦争映画歴代ナンバーワンの興行収入を記録した大ヒット映画『アメリカン・スナイパー』の脚本/製作総指揮、ジェイソン・ホールに電話インタビュー! AOLニュースではスピルバーグの降板劇によって巻き起こった裏事情や、ブラッドリー・クーパーの覚悟にフォーカス。映画本編並みに超胸熱なインタビューです!
余談ですが、ジェイソン・ホール自身は現在、スピルバーグ製作のデヴィッド・フィンケル原作"Thank You for Your Service"に参加しているようで、巨匠との信頼関係は続いている模様。ただ、結果的にイーストウッドになって吉と出た、と個人的には思います。



Q:なぜクリス・カイルという人物に焦点を当てた物語に興味があったのでしょうか? 人物として魅かれた理由は?

まるでイラクのアキレスのような存在に思えた。戦場で名の知れた男だったからね。特定の場所に着くタイミングも不気味なほどセンスの利く人で、そんな数々の"命中"が大勢の仲間の命を救い、徐々に多国籍軍の間で知られるようになった。



クリスの名前を知って少し調べ始めたら、なんと2,100ヤードも離れた標的を撃ち落としたとあった。昔ネイビーシールのチーム6に所属した経験があり今CIAで勤めている友人に事実確認しようとしたら、友人に「残念ながらそいつは違うと思う。そんなことができる人は地球上に5人しかいない」と言われたよ。
「まあ、とにかくファイルを調べてくれ」と頼んだら、1週間後に電話をよこしてきた。そして「そいつはその5人のうちの一人だ」というんだ。友人は「どうやってこいつの名前を聞きつけたか知らないけど、向こうではかなり有名だよ。狙撃スポット選びもタイミングもピカイチらしく、"RIGHT TIME RIGHT PLACE"というあだ名がついたりしている」と言うではないか。また彼がチームに加われば勝つということで"ミダス"というあだ名もついたりしたそうだ。まるで四葉のクローバーのような存在だね。

Q:スピルバーグが降りて、製作が頓挫しましたが、その後実現した経緯は?

つなげてくれたのはブラッドリー・クーパーだ。ブラッドリーはクリント・イーストウッドとすでに既知の仲で、ワーナーのグレッグ・シルバーマンもクリント・イーストウッドを推していた。
スピルバーグが降板したと聞いて本当にがっかりしたよ。多少の作業もすでに進めており、スピルバーグと信頼関係を築きつつあったので製作が楽しみだっただけに、降りられてから2か月間落ち込んでいたよ。でも、そこへブラッドリーが電話をよこしてきて「信じられない人がOKしてくれたよ」というので、まだ落ち込んでいる僕は「誰だ、教えてくれ」と聞いたら、「クリント・イーストウッドだ!」と言うではないか。僕たちは当初からこれを一種の西部劇と捉えていたので、こんな完璧なマッチングはないと思った。



Q:俳優にはブラッドリー・クーパー以外に希望はありましたか?

ブラッドリー自身が他の俳優を想像したことはあったようだ。当初、「はたして自分がこの役をこなせるのだろうか?」という迷いもあったようだ。でも彼は見事にクリスに変身してくれた。またクリスの信頼も勝ち得てくれた。危うく製作中止になりかけたところブラッドリーがクリスに電話をし、「必ず誠意を持って取り組む。あなたの指導を仰ぎたい。手荒くでもいいのでお願いしたい」と誠意と決意を伝えたそうだ。
ブラッドリーはその約束を見事に果たし、体だけでなく声も変えたね。それに会ったこともないクリスの本質をきちんと捉えた芝居を見せてくれた。タヤが撮影したという数百時間分ものホームビデオを研究したそうだ。



彼の芝居を初めて見たのが撮影中の現場のモニターだったけれど、彼の成り切りようには鳥肌がたったよ。体格を変えるだけでも大変だが、彼が遂げた変身は外見上の変身よりもはるかに難しいものだったように思う。すっと役の中へ消えていった。あれはダニエル・デイ=ルイスやダスティン・ホフマンなどの名優に匹敵する名演だ。いや、ダスティン・ホフマンを凌駕さえしているかもしれない。
クリスを良く知る人たちにとってはなおさら驚異的な芝居に映るだろう。タヤは「一体全体どうしたらあんなことができるのか。ブラッドリーはクリスを蘇らせてくれた」と言っていた。前年に夫を亡くしたばかりの妻が言ってくれるのだから、この上ないホメ言葉だよ。友人も皆もびっくり仰天したようだ、「呼吸から肩の傾きから顎の感じまでクリスそのもの。ありえない」と驚嘆していた。クリスを知る者にとっては奇跡的な演技だが、クリスを知らなくとも十分に響く演技だと思うし、観客へのギフトだと思うね。



Q:完成した映画を見たらカイルは何と言ったと思いますか?

クリスは周りを大事にする人だったので、周りのみんなのストーリーも自分のストーリーと同等に大切だと感じていた。賞賛されてもすぐに「誰々のおかげ」だと言い、自分の手柄にすることはなかった。自分のストーリーが戦地へ赴く他の兵士たちと、彼ら自身や彼らの家族が背負う犠牲をも描いているということに誇りを持ったに違いないと思う。またクリスを殺し屋として描くことに終始せず、多角的に捉えているところを気に入ってくれたはずだ。原作からはクリスの一面しか読み取れないし、様々な疑問が浮かび上がってくる。その疑問を少しでも映画で解決できなら良い。きっと誇りに思ってくれたと思うな。

Q:カイルさんは日本ではその存在をあまり知られていませんが、日本の観客にこの映画を通じて何を感じてほしいですか?

クリスを代弁して僕が語るようなことでもないのだろうけれど、彼は米軍史上もっとも危険なスナイパーとして知られているが、何人殺したか?よりも救った数々の命を意識して欲しいと望んだ男だ。それは何度も言っていた。
彼は、アキレスのように戦地で戦いつつ、人間性を失わないようにもがいた。ギリシア神話の英雄たちに引けを取らないほど勇敢な男だと思う。

http://youtu.be/1JfaO7PjzCc


『アメリカン・スナイパー』 は2月21日(土)丸の内ピカデリー・新宿ピカデリー他全国ロードショー

(C) 2014 VILLAGE ROADSHOW FILMS (BVI) LIMITED, WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT LLC

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