かつて実際に起きた事件をベースに、そのあまりに奇異な人間関係に注目が集まる、赤と黒のゲキジョードラマスペシャル『黒い看護婦』(原作・森功著『黒い看護婦―福岡四人組保険金連続殺人―』/新潮文庫)が、2月13日夜、放送される。
このドラマは2002年に発生した「久留米看護師連続保険金殺人事件」をベースにドラマ化された渾身の1本だが、この事件では、かつて同じ看護学校に通い、なぜか同じマンションで特殊な共同生活を送っていたという4人の看護師が共謀し、それぞれのパートナーを殺害。保険金を騙し取り、その金で豪奢な生活を送っていたというものであったが、本来、人の命を救う看護師という仕事にありながら、仕事で培った知識と経験を元に、その腕を使って人を殺すという前代未聞の事件であったことや、彼女たちのあまりに複雑怪奇な人間関係などから、発生当時、新聞やニュースなどでセンセーショナルに報じられたことは、世人の多くが記憶するところだ。
そんな事件を題材につくられた今回のドラマで、犯行グループである4人の看護師を演じるのは、大竹しのぶ・寺島しのぶ・坂井真紀・木村多江の演技派女優たち。とりわけ、木村については、これまでも『救命病棟24時』をはじめ、その生真面目なナース役がひとつのハマリ役となっており、現在TBS系で放送中の『まっしろ』でも、正統派の「デキる」看護師長役を演じているだけに、彼女がそうしたこれまでの「まっしろ」な看護師とと、今回の「まっくろ」な看護師をどう演じわけるのかも気になるところ。
実際の事件においては、大竹しのぶ演じる主犯格の看護師が、 このグループの中であまりに希有なカリスマ性を発揮し、それぞれが彼女に心身ともに掌握されるという特殊な環境下で、あまりに大胆な犯行が実行されたことが指摘されているが、近年、割とポップな作風の医療ドラマが目立つ中で、実在事件をベースとした本作は、それらとは一線を画し、明らかに異彩を放つ秀作。一般的なミステリードラマ以上に多くの謎を孕み、想像もつかないほどに入り組んだ複雑怪奇な世界と、それらを彩る名女優たちの好演に注目しつつご覧頂きたい一本だ。
文・久保田太陽
■参照リンク
『黒い看護婦』公式サイト
http://www.fujitv.co.jp/kuroi_kangofu/index.html
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