7月、ニューヨーク市警の白人警官が、課税対象外のタバコを販売していたという罪で黒人男性のエリック・ガーナーさんを逮捕する際、背後から羽交い絞めにしたうえ首を絞め、ガーナーさんを死に至らせるという出来事があった。12月3日、ニューヨーク州・スタテン島の大陪審が、この白人警官を起訴しない決定を下したことで、現在アメリカでは各地で暴動や抗議行動が発生している。
今回の不起訴決定は、8月にミズーリ州で起きた白人警官による黒人青年マイケル・ブラウンさんの射殺事件が不起訴になったことに次ぐ案件。アメリカでは、これらを受けて多くの人が抗議行動をしているわけだが、そんななか、映画監督のスパイク・リーは、インターネットの動画サイト「Vimeo」を使い、彼だからこそ発せられるメッセージ動画を投稿している。
【動画】http://vimeo.com/101731549
Radio Raheem and The Gentle Giant from 40 Acres and a Mule Filmworks on Vimeo.
スパイク・リーがそんなメッセージ性のある動画「Radio Raheem and The Gentle Giant」を投稿したのは、およそ4カ月前。ガーナーさんの事件が発生し、その模様を映した動画がインターネット上で拡散した後のことだ。
動画の内容は、彼自身が監督し1989年に発表した映画『ドゥ・ザ・ライト・シング』のワンシーンと、ガーナーさんが死亡させられる場面の動画を交互に見せるように編集したというもの。25年前に発表されたこの映画には、ガーナーさんの事件を予言したかのようなシーンがあるのだ。
『ドゥ・ザ・ライト・シング』は、ニューヨークのブルックリンを舞台にし、人種差別をテーマに描いた作品。同作の中に、登場人物の黒人男性レディオ・ラヒーム(演:ビル・ナン)がちょっとしたいざこざを起こし、それによってやってきた複数の白人警官によって羽交い絞めにされた後、警棒で絞め殺されてしまうというシーンがあるのだ。投稿された動画は、このシーンとガーナーさんが死亡させられる場面を交互に見せている。
映画ではこの一件をきっかけに暴動に発展するが、ガーナーさんの事件でも、不起訴決定を機に実際に暴動が起きてしまった。スパイク・リーは、25年前に既に、今回の事件のようなことが起きるかもしれないと警鐘を鳴らしていたというわけだ。
こういった問題はいまに始まったことではなく、映画発表当時から既に当該シーンの背景になるような状況は存在していた。当時アメリカ社会に強いメッセージを放った同作だが、動画を見ると、発表から25年経ったいまでも問題は根深く残り続けていることがうかがえる。
【参照リンク】
・Radio Raheem and The Gentle Giant Vimeo
http://vimeo.com/101731549
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