スティーブ・ジョブズ、ヘンリー・フォード、ジョン・ロックフェラーなど、アメリカには天才と呼ばれる起業家たちがいる。彼らはITや自動車、エネルギーなどの分野で巨大産業の礎を築いてきた。彼らのように、私たちの世界に変革をもたらす起業家のひとりであり、今現在我々と同じ時間を生きているのが、イーロン・マスクである。
今年9月、来日したことでも話題になったイーロン・マスク。ソフトウエアの開発から、電気自動車、宇宙開発と様々な事業に携わってきた。南アフリカ出身のイーロン・マスクは、小遣いを貯め10歳の頃にパソコンを購入。独学でプログラミングをマスターした秀才だった。その後、12歳でソフトウエア「Blaster」を開発、500ドルで販売する。
いまでこそ110億ドル(約1兆円)の資産を持つといわれているが、若かりし頃は苦労も経験。17歳のときに、ひとりカナダへ渡りクイーンズ大学でエネルギー物理学を学んだ。この頃、農場での仕事をしながら1日1ドルの暮らしを続け、格安のオレンジで毎日を乗り切ったと、書籍『未来を変える天才経営者 イーロン・マスクの野望』に記されている。
それから、名門スタンフォード大学の大学院に入学したものの、学問より起業への思いが強くなり2日で退学。弟のキンバル・マスクとオンラインコンテンツの出版ソフト制作会社「Zip2」を創業した。この会社を大きくしていき成功を手にする・・・というのがよくあるパターンかもしれないが、イーロン・マスクはさらなる野望に挑んでいく。
「Zip2」を早々に売却し、約2200万ドル(約22億円)の資産を築いたのち、新たな会社「Xドットコム」を企業。同社で生まれたのが、ネットを利用した決済サービス「PayPal」である。インターネット上での買い物のかたちに変革をもたらしたが、こちらの会社も早々にインターネットオークション最大手「eBay」に売り渡す。そこで手にした約1億7000万ドル(約170億円)を元手に、宇宙ロケット企業の創業をスタートする。2012年には、民間発となる宇宙船「ドラゴン」を国際宇宙ステーションにドッキングさせることに成功するが、それはまだ道の途中。型破りな彼の野望は、宇宙旅行といったところに留まらず「火星に人類に移住させる」という壮大なものである。それから、電気自動車メーカー「テスラ・モーターズ」や、太陽光発電のベンチャー「ソーラーシティー」に出資し、世界的な普及を目指している。
イーロン・マスクがこうした奇想天外な事業展開をする背景には、20代の頃に抱いた強い想いがある。未来にもっとも人類に影響があるものは何だろうと考え、たどり着いた結果が「インターネット」「持続可能なエネルギー」「宇宙開発」。通常なら、どれかひとつで身を立てることを考えるが、この3つすべての事業を若干43歳で成功に導いたのだ。映画「アイアンマン」の主人公トニー・スタークのモデルにもなったのもうなずける、ヒーローのメンタリティをもっている天才起業家、それがイーロン・マスクなのである。
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