アップル社の前CEO、故スティーブ・ジョブズはかつて、テクノロジーとリベラル・アーツ(教養)を融合することで同社が「技術面では非常に進んでいながらも、わかりやすくて使いやすく、しかも楽しい製品を作ることができた」と話していた。読書を通じて、そういった考え方にたどり着いたジョブズ。そんな彼に影響を与えた本を<businessinsider.com>が紹介している。
■『リア王』by ウィリアム・シェイクスピア
ジョブズの伝記を書いたウォルター・アイザックソンとのインタビューで「音楽をたくさん聴くようになった。それからシェイクスピアやプラトンといった、科学やテクノロジー以外の本も読むようになったんだ。"リア王"はお気に入りだよ」と語ったジョブズ。自らの王国を分裂させんと発狂するリア王の物語/悲劇は、若き日のジョブズにとって警告と映ったかもしれない。『How to Think Like Steve Jobs(直訳:スティーブ・ジョブズのように考える方法) 』の著者ダニエル・スミスは、「"リア王"はトップに立つ人間が支配力を失った時にどうなるかを鮮やかに描いています。この物語は、CEOを目指す人を虜にするでしょう」としている。
■『白鯨』by ハーマン・メルヴィル
こちらもジョブズが青春時代に読んだ本。アイザックソンは、登場人物の中でも(怒りに)突き動かされ、なおかつ強気なエイハブ船長とジョブズの関連性に着目する。エイハブはジョブズ同様、前例に身をゆだねるよりも自らの実体験から多くを学んできた。
■『ディラン・トマス詩集』by ディラン・トマス
高校時代の後半に知識欲が高まったのにはポエム、中でも特にウェールズの詩人、ディラン・トマスの作品に夢中になったこともあるそうだ。
■『ビー・ヒア・ナウ-心の扉をひらく本』by ラム・ダス
1972年に米オレゴン州ポートランドにある、リベラルアーツの名門リード大学に入学したジョブズ。彼はそこでLSDを使用し、精神性に関する本を読みあさった。こちらはジョブズが最も影響を受けた本の1冊。
■『小さな惑星の緑の食卓-現代人のライフ・スタイルをかえる新食物読本』by フランシス・ムア・ラッペ
ジョブズが大学1年目に読んだというこの本は、たんぱく質の豊富な菜食主義が紹介され、300万部を売り上げたベストセラー。「肉食を止めたのもこの頃」と、ジョブズは語っている。
■『Mucusless Diet Healing System(直訳:無粘液食による療法)』by アーノルド・エーレット
20世紀初期のドイツ人栄養学者アーノルド・エーレットの著書を読んだジョブズは、栄養に関してかなり極端に。人参を4週間食べ続けた結果、肌がオレンジ色になり始めたともいわれている。ちなみに映画『スティーブ・ジョブズ』でジョブズに扮したアシュトン・カッチャーも、役作りの間は果物だけ食べる生活を続けたそう。だがアシュトンの場合は病院送りになってしまった。
■『あるヨギの自叙伝』by パラマハンサ・ヨガナンダ
インド人のヨガ伝道師による自叙伝を読んだのは、ジョブズが高校生の頃だとか。その後、インドのヒマラヤ山脈に滞在中もゲストハウスで読んだという。彼は当時のことを「旅行者が置いていったこの本を、僕は繰り返し読んだ。他にやることもなかったしね。そして僕は村から村へと渡り歩いてた」と振り返っている。
■『禅マインド ビギナーズ・マインド』by鈴木俊隆
インドから戻った後も、ジョブズのメディテーション(瞑想)への関心は高まるばかりだった。これには1970年当時のカリフォルニア州の様子も関係があるようだ。ここはアメリカでも禅宗が流行った最初の土地で、ジョブズ自身も鈴木の授業を受けたという。鈴木からは「日本に行き、(鈴木が修業した)永平寺に入ろうとも思った」ほど多大な影響を受けたそうで、今では鈴木の本の帯にジョブズの写真が載っている。
■『イノベーションのジレンマ-技術革新が巨大企業を滅ぼすとき』by クレイトン・M・クリステンセン
アップル社には"自滅"傾向がある。例えばiPhoneには同社の代表作iPodの多くの特徴を搭載し、結果、iPodを時代遅れの存在にしてしまった。とはいえ、『イノベーションのジレンマ...』を読んでいたジョブズは、そういったことも成長の一環として必要だとみていたようだ。
photo:(C)2013 The Jobs Film,LLC.
【参照リンク】
・Steve Jobs Reading List Favorite Books - Business Insider
http://www.businessinsider.com/steve-jobs-reading-list-favorite-books-2014-10
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