男チャン・ドンゴンが心に負う癒えぬ傷と戦いながら、壮絶な死闘に身を投じていく韓国クライム・アクション、『泣く男』。イ・ジョンボム監督の前作『アジョシ』(10)同様、主人公ゴンは孤独な殺し屋で、ドンゴン史上最高の熱演で観る者を魅了する。その待望の日本公開を前に、ジョンボム監督が来日! 韓国本国では『アジョシ』(10)との比較論に辟易したというジョンボム監督に、前作との決定的な差異、ドンゴンの覚悟などを質問した。
『アジョシ』(10)や『泣く男』の作品の説明は公式サイトに全面的に譲るので、どこかのタイミングで確認してほしい。さて、本国で『アジョシ』(10)との止まらぬ比較論に苦悩したというジョンボム監督。なるほど確かに社会現象的な大ヒットを記録した『アジョシ』(10)の次の作品で、またしてもスターが演じる孤独な殺し屋が主人公という点を鑑みれば、どうしたって比較論になる。しかし、ジョンボム監督は『アジョシ』(10)と得意げに比べて評価するマスコミや評論家たちの浅い指摘を受け続け、「本当にぶん殴ってやりたい(笑)」気持ちになったとも。『泣く男』は冒頭で少女が死亡することで、『アジョシ』(10)と強烈に訣別しているにもかかわらず、類似性を指摘してくる見解が後を絶たないせいだ。
「それは意図したところ。『アジョシ』は少女を守り抜く物語だが、今回はオープニグで少女を殺すことになってしまう男のストーリー。それを見せることで同じ監督だが、違う物語が始まるという予告という意味を込めました。正確に観てくれたようでうれしいよ(笑)」。
「主人公の内面も180度違うが、アクションでは『アジョシ』との共通点がある」と、ジョンボム監督は共通項も説明する。とはいえ、今回のメイン=銃撃戦は壮絶な展開の中に主人公ゴンの"贖い"の感情が乗って、まさしくウォンビンが言っていた「ナイフはセリフ」同様、言葉では説明しきれないカタルシス充満のシーンが続く。「今回、『泣く男』というコンセプトに合わせてシークエンスを作っていこうと思って撮影していたので、それは、ある程度、達成した自負はある。いい評価をしてくれて、苦労した甲斐があるよ(笑)」。
その最大の貢献者が、他ならぬドンゴンだ。拳銃を構えるドンゴンの眼差しは、一言も語らずともパーフェクトに感情を表現する。頬の筋肉を一切動かさず、すべてを目だけで語り尽すドンゴンの名演は、演技派チャン・ドンゴンとしての存在を強烈にアピールする。
「もともといい目なんだよ。ウォンビンもね、ふたりとも骨太なで整った顔立ちだが、目だけは繊細でもろい、かよわそうなところがある。僕は、そういう俳優が好きだ」と、ジョンボム監督もホメる。「ただ、今回のドンゴンは殺し屋役なので、拳銃を握った時にぎこちなくなってはいけない。だから、とにかくプロらしくとお願いをした(笑)。人間はまばたきをするが、一流の殺し屋はしないはずなので、NGだぜと(笑)。そうはいっても、まばたきをしちゃうものなので、編集時にカットしたな。これは内緒にしておいてくれ(笑)」。
しかし、ここまで哀しげな表情をする、ドアップのドンゴン映画はめずらしい。日本のファンにとって、間違いなくサービスカットが多い。「それは本人も感激しちゃうかな(笑)。本人も今までの演技と違う新しい演技をしようと欲があった、努力をしていたので、僕自分自身もうれしくなる」。これまでのアイドル的な人気だけでなく、『アジョシ』(10)のウォンビンのように男のファンも増えそうだ。「『アジョシ』は女性がウォンビンを観たくて男性を映画館に連れて行くケースが多かったが、その男性が後日2回目、3回目をひとりで観に行く現象が起こった。だから、『泣く男』の場合も男性が後で観に行ってほしいですね。
(つづく......)
映画『泣く男』は、大ヒット確実ロードショー!
■参照リンク
『泣く男』公式サイト
http://nakuotoko.jp/
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