何重にも張り巡らされた赤外線センサーをくぐり抜けたり、拳銃でバンバン撃ちあったり......といったイメージを持ちやすい「スパイ」の世界。ま、ホンモノのスパイが派手に動き回っていたら目立って仕事にならないわけで、そんな話は映画や小説の中だけのものだ。
一方で、彼らの諜報術がわれわれの仕事にも活かすことができる、なんて言う人もいる。その1人が、元CIA諜報員であるJ・C・カールソン氏。7月に日本でも出版された彼の著書は、その名も『CIA諜報員が駆使するテクニックはビジネスに応用できる』。なんか、長いけどカッコいいタイトルだし、1ページ目には「この本のいかなる記述についても、アメリカ合衆国およびCIAはその正しさを保証しない。CIAは、機密情報の漏洩を防止する目的での検閲のみを行っている」なんて記述も......おお、なんか秘密文書を覗いてるみたいで、ワクワクしてくるぞ!
もちろん、本の中身も社畜、もといビジネスパーソンによる情報の取り扱いや、人事戦略などを想定したものなので、とても読みやすく参考になるところが多い。なかには、「スパイから身を守る9つのコツ」なんてくだりもある。
「フツーのサラリーマンがスパイに狙われるなんて、ありえないだろ」
そんなツッコミも入るかもしれないが、待ってほしい。まず、スパイを警戒するために何をしなければならないかの9項目を挙げるので、とりあえず読んでくれ。
1、出張など移動の際に持ち歩く情報は最低限にとどめる
2、共用の電子機器やネットワークは極力使わない
3、書類は必ずシュレッダーにかけてから捨てる
4、自分についてどんな情報が世の中に出回っているかを知っておく
5、ブログやSNSは注意して使う
6、普段から近くにいてよく話す人だからといって安心しない
7、自分の直感を信じる
8、同業他社の人間に気をつける
9、アルコールに気をつける
1、2、3、5、9あたりは、新入社員の研修あたりで出そうな話だが、それだけ情報管理の基本になる事柄といえる。特に、5、ブログやSNSは注意して使う、についてカールソン氏は「設定によって公開範囲を制限することも可能だが、SNSとは元来、情報を共有するためのもので保護するためのものではない。そのことは理解しておいたほうがいいだろう」と述べている。耳が痛いと感じる人もいるのではないだろうか。
さらに6、普段から近くにいてよく話す人だからといって安心しない、には「会社で席が近くてよく話しかけてくるあの人は、じつはあなたを出し抜いて昇進しようとしており、何かあなたの不利になる情報を探しているかもしれない」とある。そんなこと言われると、仲の良い同僚の美女を、ハニートラップだと疑ってしまいそうだ!
また8、同業他社の人間に気をつける、では競合他社の採用面接を受けた場合、つい自分をアピールしたくて色々なことを話してしまうことに注意を促している。そう、転職活動の際にもスパイ並の情報管理は必要なのだ。
ホンモノのスパイでなくても、自分から情報を盗もうとする"敵"は身近にいる可能性が高いと、実感いただけたのではないだろうか? これを参考に、スパイのように華麗なビジネスライフをエンジョイしてほしい。
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