『ホドロフスキーのDUNE』 短期集中連載
第二回 幻の超大作『DUNE』をめぐる奇想天外な大冒険<スタッフ編>
自由に映画を作ってくれ!
1975年、46歳になったアレハンドロ・ホドロフスキーは、1973年公開の『ホーリー・マウンテン』のヨーロッパでの大ヒットに気をよくしたプロデューサー、ミシェル・セドゥーから資金を得る。「自由に映画を作ってくれ」と、最高の条件を示された彼は、迷うことなくSFのバイブルと評価される小説「DUNE」を選ぶ。その壮大な世界感を映像化することに臆していたハリウッドは、映画化権を破格な条件でホドロフスキーに譲渡する。
その日から、ホドロフスキーの『DUNE』をめぐる、奇想天外な大冒険が始まる!
世界を変える映画を作る!
『ホドロフスキーのDUNE』を監督したニューヨーク出身のフランク・パヴィッチは、「あくなき夢の追求と、そこに欠かすことのできない芸術。実現性の低い作品を大成功に導くために、つきることのない想像力で推し進めようとしたアーティストの物語で、その精神は80歳を過ぎても変わることがない。彼はアートを通して世界を変えようという野望を抱いていたのだ」と紹介している。
「映画はお金ではなく、第一に芸術であるべきだ」と語るホドロフスキーは、「世界を変える映画を作る」という野望を胸に、世界の強烈な戦士たちとのコンタクトを開始する。
(画像:メビウスによるコスチューム・デザイン)
戦士たちよ、パリに結集せよ!
絵コンテとキャラクターデザインはバンド・デシネの第一人者メビウス(ジャン・ジロー)を起用。様々なデザインから、詳細な絵コンテまで、ホドロフスキーのイマジネーションを次々と絵にしていく。
宇宙船デザイナーには、イギリスからクリス・フォスを招集。パリにやって来た彼は、建築家の素養を活かして皇帝の宮殿などもデザインすることになる。
そして、先頃不慮の事故で急逝したH・R・ギーガーにも声が掛かる。オンリーワンのダークな世界感を、エアブラシで仕上げる独特な作品で知られるスイス在住のギーガーは、たちまちホドロフスキーに魅せられ、一心不乱に作品を仕上げた。後にギーガーの名を世界に知らしめる『エイリアン』の原点は、彼が描いた「ハルコネン城」とそのアプローチなどに、遺憾なく発揮されている。
(画像:クリス・フォスの宇宙船と皇帝の宮殿 ギーガーによるハルコネン城)
スペシャリストに必要なのは、技術より芸術!
特殊効果にはスペシャリストが必要だ。ホドロフスキーは迷うことなく『2001年宇宙の旅』を担当したダグラス・トランブルを訪ねる。あのキューブリックですら、自由にやらせるしかなかったとされるトランブルは、ホドロフスキーを苛立たせるに充分な男だった。オフィスに通され、ミーティング中も電話に出るような男。「この男とは共に戦えない」と感じたホドロフスキーは席を立つ。そして、ハリウッドの小劇場で上映されていたB級SF作品『ダーク・スター』を観ることになる。「この男だ!私にとって大切なのは芸術で、技術はその次だ。すべてを売って、パリに来なさい」とダン・オノバンのスカウトに成功する。
ピンク・フロイドよ、ハンバーガーなんか食ってる場合ではない!
1973年、空前のベストセラー・アルバムとなった「狂気」は、ピンク・フロイドのコンセプトアルバムで、原題は"ザ・ダーク・サイド・オブ・ザ・ムーン"。プリズムのデザインが印象的で、人間と社会を音楽的なアプローチで多面的に照射し、表層ではなく深層へと進化した傑作だ。
ホドロフスキーが絶頂期のピンク・フロイドと初めて会ったとき、4人のメンバーたちは黙々とハンバーガーを食べていた。「君たちに任せようと思ったのは、人類の歴史の中で最も重要な映画の"音楽"だ。世界を変える映画だ。ハンバーガーなんか食べやがって、ふざけるな!」と罵ったホドロフスキー。その一喝でメンバーは食べるのをやめ話を始めた。
こうしてホドロフスキーの『DUNE』の世界を構築するコアとなるスタッフ=戦士=が決まったことになる。
(画像ピンク・フロイドのアルバム「狂気」のジャケット)
来日記者会見で、「実のところ、原作となった長大な小説はきちんと読んでいなかった。原作を読んだのは映画『DUNE』の企画が頓挫し、バンド・デシネとして再構築したときだった。そこには、僕自身が絵コンテで創造した通りの世界があった」と我々を煙に巻いたホドロフスキー。
はてさて、キャスティングはどうなることやら...
次回は「幻の超大作『DUNE』をめぐる奇想天外な大冒険=キャスト編=」をお送りします。ご期待ください。
『ホドロフスキーのDUNE』は、6月14日(土)より、新宿シネマカリテ、ヒューマントラストシネマ有楽町、渋谷アップリンクほか、全国順次公開!
★『ホドロフスキーのDUNE』公式サイト http://www.uplink.co.jp/dune/
『リアリティのダンス』は、7月12日(土)より、新宿シネマカリテ、ヒューマントラストシネマ有楽町、渋谷アップリンクほか、全国順次公開!
★『リアリティのダンス』公式サイト http://www.uplink.co.jp/dance/
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