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舞台は警察学校の教室 初の「警察学校小説」で本屋大賞を狙うミステリー『教場』

2014/04/07 12:00 投稿

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4月8日、全国の書店員が選ぶ2014年の本屋大賞が決まります。その本屋大賞にノミネートされた10冊のうちの1冊が長岡弘樹氏の『教場』です。長岡氏は2008年『傍聞き』で第61回日本推理作家協会賞(短編部門を受賞)を受賞。長岡氏初の長編作品となる本作で、週刊文春の「2013年ミステリーベスト10」国内部門の第1位を受賞し、ミステリー界の新たな旗手として注目されています。



舞台になるのは警察学校の教室である教場。横山秀夫氏が本作の帯に「初の警察学校小説にして決定版。脱帽――。」と寄せていて、この特殊な環境にがぜん興味を覚える読者も多いことでしょう。警察学校は、肉体的にも精神的にもストレスに満ちた世界。6ヶ月間の寮と学校の生活は、ちょっとしたミスや教官の機嫌次第で、平手打ちや腕立て伏せ、反省文、そして連帯責任が課せられる毎日です。これらの理不尽な試練の描写は真に迫っていて、現実とフィクションの境がわからなくなる感覚に陥ります。

そうしたストレスが犯罪を生み出すのか、あるいは警察になろうという志を持った者は、その意志が強いからこそ犯罪に手を染めやすいのか。親友からの裏切りにより親友の夢を断ち切る報復に出たり、保身のため仲間を陥れたり、教場では様々な事件が引き起こされます。

作品全体を通してキーパーソンとして登場するのが風間教官です。表情を見せない風間教官は生徒から恐れられていましたが、その冷徹ともいえる観察眼で事件の本質を見抜き、"落としどころ"へ持っていきます。ここで言う落としどころとは、人間の弱さに流され溺れた者は教場から脱落し、それでも這い上がった者だけが教場に残り、警察官になる切符を手に入れるということです。

警察官として世に出た者にとって、教場での体験や風間の教えが強い礎になっていく...。読み手は、全体を通して重苦しい雰囲気が立ち込めるなか、徐々にこの非情ともいえる風間の対応に明るい兆しを予感させられます。警察学校という場だからこそ生まれるドラマに、人間の本性を知り、それに勝る人間の強さを身をもって体験できる一冊です。

【書籍データ】
・『教場』長岡弘樹著 小学館

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