『美少女戦士セーラームーン』のアニメ放映は1992年から97年。当時熱狂した女子小学生たちは今、30歳前後で、職場ではそろそろ中堅社員になりつつあります。そこで、『セーラームーン』という少女期の強烈な原体験が、彼女たちの現在の仕事観にどう現れているのかを、まとめてみました。
①総合職・前線部隊志向である
『美少女戦士セーラームーン』は、女子"だけ"のチームがバトルするアニメです。スーパー戦隊のピンク担当のような「男性中心部署におけるマスコット的女子社員」でもなければ、司令室のレーダー担当クルーといった後方支援要員でもありません。世界の存亡を賭け、各自が直接手を下すことで敵を殲滅する最前線の実働部隊なのです。彼女たちの胸には、「会社の売上に直結する部署でバリバリ働く」意識が、"女だてらに"という注釈なしにデフォルトで刷り込まれているのです。
②女性性は絶対に捨てない
激しいバトルを繰り返すセーラー戦士たちですが、恋もお菓子もオシャレもガールズトークも大好き。オンナノコ性は絶対に放棄しません(そもそもバトルスーツが女子の象徴・セーラー服風のセクシー仕立て)。「女を捨てねば男に(仕事で)対抗できない!」的な、一部のノイローゼじみた強迫観念とは、いっさい無縁です。
③陰で男性上司の手綱を握る
ヒロイン・月野うさぎ(=セーラームーン)と恋人関係にあるタキシード仮面という男が、バトル中たびたびドヤ顔で助けに来ますが、洗脳されてはセーラームーンに助けられたりと、結局はセーラームーンに依存しています。男に「主導権を握っている」と思い込ませ、実はこちらが手綱を引く――彼女たちは相当なやり手なのです。
④価値観の違う同僚とうまくチームを組める
セーラー戦士のコアメンバー5人は、自発的に友達になったわけではありません。"前世からの宿命"という納得しがたい外部要因によって、強引にユニットを組まされています。ゆえに5人は、趣味も性格も偏差値もまったく異なっており、通っている中学校すら3つにまたがっていました。しかし、「敵を殲滅する同志」というたったひとつの旗印をもとに、結束します。第三者によって突然編成されたプロジェクトチームで結果を出さねば......という時、彼女たちは真価を発揮するのです。
⑤母性に自覚的
うさぎはある時期から、未来から来た自分の娘・ちびうさと行動を共にします。つまり、『セーラームーン』という作品は、ヒロインが「母」であることを視聴者(の小学生女児)に強く意識させるつくりになっているのです。どんなに激しいバトルを繰り返しても、ヒロインの最終ゴールは「お母さんになり、その究極的母性で世界を統治すること」。キャリアプランに大きく関係する結婚や出産についてセーラームーン世代が考えるとき、顕在・潜在問わず、「母としてのうさぎちゃん」が、いつも心のどこかでこっちを見ています。
余談ですが、昨年夏、女性向け転職情報誌「とらばーゆ」のCMに『セーラームーン』の主題歌「ムーンライト伝説」が使われ、セーラームーン世代も転職する年齢なのか!と巷で話題になりました。しかし上記⑤からすれば、実は「ゼクシィ」か「たまごクラブ」か「ひよこクラブ」あたりの方が刺さったのでは、という気がしないでもありません。ちなみに、うさぎがちびうさを懐妊したのは22歳だそうです......(遠い目)
(稲田豊史)
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