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深夜ラジオにおける芸人とリスナーの深い絆 それを恣意的に侵食する一部ネットメディア

2014/02/16 00:00 投稿

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Filed under: 国内, 深夜

「ラジオは終わった」などという悲しい声が聞こえてくることもある昨今だが、根強いラジオファンというのは現在もたくさんいることは疑いようがない。特に、お笑い芸人がパーソナリティーを務める深夜ラジオ番組は、リスナーたちにとって"生きる糧のひとつ"になっていると言っても過言ではないだろう。



そのことを示すような、伝説の放送がある。それは、2008年12月30日に放送された『くりぃむしちゅーのオールナイトニッポン』(ニッポン放送)の最終回だ。有田がボケ、上田がツッコミという基本の姿勢をラジオ内でも崩さず、3年半に渡ってラジオならではの笑いを届け続けた同番組。その終了告知は突然で、最終回の2週間前に「この番組終わります」と有田によって告げられ、リスナーたちに衝撃を与えた。

そして迎えた最終回。3年半の番組での思い出を振り返り、エンディングのラスト約5分は、くりぃむしちゅーの2人がニッポン放送の玄関から中継するという形で放送された。なぜかといえば、玄関に番組終了を惜しむ数百人のリスナーが来ていたからだ。2人はリスナーとの束の間の会話を楽しみ、本当の最後、上田が「3年半、ありがとなぁ~」と言うと、その場にいるリスナーたちが口々に「ありがとう!」と叫んだ。そんなリスナーたちによる割れんばかりの感謝の叫びは、家で聞くリスナーたちにとっても涙なしには聞けないものだっただろう。

同放送から感じ取れる、パーソナリティーである芸人とリスナーとの、「ファン」という一言では表現できないようなこの絆。これこそが、深夜ラジオの魅力なのである。

というのも、生放送の深夜ラジオは、リスナーからのメールやネタ投稿で番組の少なからぬ部分が成立している。特に、長寿番組である『ナインティナインのオールナイトニッポン』(ニッポン放送)は、"ハガキ職人"からのネタを重要視している番組で、十数年前に『日経エンタテインメント!』において同番組のコーナーネタの質の高さが取り上げられた際、岡村隆史がハガキ職人に向け、「お前たちが褒められてるんやぞ!」と自分のことのように喜んで話していたのは印象深い。

お笑い芸人のラジオ番組だけでなく、生放送のラジオ番組というのは、このように古くはリスナーからのハガキ・FAX、現在では主にリスナーからのメールを含めて成り立っており、それだけに、パーソナリティーもリスナーをことのほか大切にしているのだ。

お笑いコンビ・オードリーの若林正恭はつい最近、『オードリーのオールナイトニッポン』(ニッポン放送)において、街中で「ラジオ聴いてます」と一般人から言われると、自分から話したくなるほど嬉しくなると語っていた。『山里亮太の不毛な議論』(TBSラジオ)を担当する南海キャンディーズの山里も、放送中にしばしばリスナーへの感謝や"愛"を口にする。

しかし昨今、この「パーソナリティーとリスナーの深い絆」を侵食しているような存在がいることは否定できない。それは、スポーツ紙媒体も含めた一部ネットメディアだ。番組の中でパーソナリティーの芸人が発した毒舌な発言や、あくまで"笑い"のために話したことについて、その一部を切り取り、"問題発言"のようなニュアンスでニュースにしてしまう媒体が複数存在するのである。ひどい場合は、リスナーからのメールの内容を、「パーソナリティーが言ったこと」として報じることもある。

このような事態が起こると、パーソナリティーは必ずと言っていいほど、「ちゃんと聞いていれば、そんなニュアンスではないことが分かると思う」や「また何か言うと、ネットでニュースにされちゃうかも...」といったことを番組の中で語る。彼らは呆れたようにそう語るが、同じように呆れているのは、多くのリスナーも同じだろう。

仕事や勉強に追われる日々の生活の中、深夜1時にラジオを付け、ベッドの中でこっそりひっそり聴いたり、時にはメールで参加したりしながら楽しむリスナーたち。深夜ラジオは、そんなリスナーたちのものだ。メディアは、ラジオを愛する芸人、そしてリスナーに対して、記事として取り上げる際には配慮を持つべきではないだろうか。放送を聴いて自身も楽しんでいるのだとすれば、なおさらである。

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