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新日本プロレスが再び熱い アントニオ猪木イズムを継承した市場開拓術

2014/02/05 12:30 投稿

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Filed under: 国内, ビジネス, 仕事術・ライフハック



「プロレス」がいま、再び熱い。一般の方々にとっては「プロレス」というジャンルそのものが既に終わったコンテンツだと思われるかもしれないが、毎年恒例で行われている1月4日の東京ドーム興業の観客動員数(2014年)は3万5000人。数年前まではあり得ないほどの水増し数字で集客人数の発表をしていた新日本プロレスだが、昨今は出来る限り実数販売に近い数字で公式な発表としているため、この数字は実数に近いと考えて良いだろう。見た限りにおいても観客席はほぼ埋まっており、「新日本プロレス」の再興をアピールする場になったことは間違いない。

しかしながら、冒頭で「プロレス」がいま熱いと書いてしまったが、実質的に業界を引っ張っているのは、アントニオ猪木が立ち上げた老舗団体「新日本プロレス」である。一時期の不入りの時代を経てからの、現在の再躍進。これはやはり、目覚ましいものがある。間違いなく、お客が戻っているし、少なからず新規のファンも増えているのだ。「プロレス」という、死語のようなジャンルにおいて、それは事実として成し遂げられている。

この仕掛人が、トレーディングカードなどを手がける「ブシロード」の木谷高明社長である。2012年に新日本プロレスを買収した木谷氏は、プロレス人気再燃の理由について「流行るために『流行ってる感』を出した」と語る。逆説のような言葉に聞こえるが、木谷氏の考えるところによれば「『近い将来もっと盛り上がっているだろう』と思ったら人はそれを買う」というのが、その真意である。そのために木谷氏はテレビスポットや雑誌、電車の車体広告や看板広告を大々的に行い、プロレスが『流行ってる感』をまず最初に打ち出した。そしてそれは、実際に観客動員数という数字として、着実に結果へと繋がっている。毎年恒例となっている1月4日の東京ドーム大会でも、それを象徴するような一つの発表がなされた。この夏、プロレス団体として史上初の、西武ドームでの興行を行う、というのがその発表である。

実際、東京ドームで興行を打てる現在の新日本プロレスであれば、西武ドームでの興行自体は、前もってきっちりと告知が出来るのであれば不可能な数字ではない(東京ドームの収容人数は4万5000人、西武ドームの収容人数は3万5000人)。だがここで重要なのは、西武ドームが「プロレス団体として史上初」であるという点だ。これぞまさに「流行ってる感」。今までプロレスが出来なかったことが、今のプロレスなら出来る、という意識はファンに根強く刷り込まれる。さらにこの発表が、年に一度の東京ドーム大会で行われたのもさすがである。この会場にいたファンは「西武ドームへの物語」の一員となり、この発表自体が極めて強い広告にもなっているのだ。

これはまさに、市場開拓術の一つである。そして、それを既に成し遂げた経営者も、既に存在している。ヤマト運輸の宅急便のシステムをゼロから作り上げた小倉昌男氏、その人である。



ヤマト運輸の宅急便のシステムをゼロから作り上げた小倉昌男氏は、「宅急便」という、市場そのものを造り出した経営者の一人である。小倉氏の経営理念の本質的な考えは「経営は、攻めの姿勢が大事である」という一言に表される。それを具体的に行う手法として小倉氏は「攻めの経営の神髄は、需要をつくり出すところにある。需要はあるものではなく、つくるものである。」と述べている。

ものが売れなくなった時代と言われて久しい現在。特にエンタテインメント業界は、あらゆる分野が苦しい状況を迎えている。それは端的に言って、現在、顧客の需要がそこに存在していないからだ。あるいは、様変わりする顧客のライフスタイルにふさわしい需要の形を業界が提案できていないということが言えるだろう。

しかしながら、現実として、売れるものは売れている。売れるものと売れないものの二極化が叫ばれているのもまた事実であり、それはまさに「売れるものは、売れているから売れる」のだ。これはそのまま、新日本プロレスがいま現在進行形でおこなっている「流行ってる感」を創造する、という試みにも繋がっている。

新日本プロレスを立ち上げたプロレスラー、アントニオ猪木は、かつてこんな言葉を残している。「ジャングルが危機に瀕しているなら、ジャングルを守るとか言ってないで、ジャングルを作ればいい」と。需要はあるものではなく、つくるものなのだ。それはビジネスの場を問わず、どの世界でも同じなのだ。

アントニオ猪木のイズムは今もなお、新日本プロレスに息づいている。ジャングルとは、すなわち「市場」とは、守るべきものではなく、作るべきものなのだ。これは「プロレス」という狭いカテゴリーの話ではなく、ビジネスという戦場、全般において、通じるべきひとつの回答である。

(相沢直)

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