先に言っときますが、かつて流行った『ONE PIECE』のルフィに学ぶリーダー論的なものはやりませんので、ご安心ください。「おれは助けてもらわねェと生きていけねェ自信がある!!」とか、管理職にドヤ顔で言われても困るじゃないですか、実際のところ。
というわけで、マンガ版『風の谷のナウシカ』(連載1982〜94年)より、クロトワさんです。ソレ誰だよという方もいらっしゃるでしょうが、ナウシカと当初対立するトルメキア軍皇女・クシャナの参謀、ヒゲ面の彼です。
アニメ版だとイマイチ影の薄いクロトワですが、マンガ版はそれなりの存在感がありまして。敵領土に侵攻中のクシャナ軍のもとに、クシャナの監視役として送り込まれてくるのが彼です。最初は自分の野望を叶えようと腹黒く画策するんですけど、途中からスパーンと諦めて、目の前の女性上司クシャナに尻尾をふって忠誠を誓い、彼女の言うことしか聞かなくなります。でも、それがむしろ良かった。周囲の登場人物が次々死んでいくなか、彼は最後までちゃっかり生き残るんですよ。
実は『風の谷のナウシカ』で個人的な野望を抱き続けた奴って、みんな無残に、わりとカッコ悪く死んでいきます。大量のグロい蟲(むし)に襲われて戦艦ごと墜落死したり、風呂に毒入れられたり、生きながら首だけになって間抜けに落下したり。
クシャナは最終的にトルメキアを仕切る――会社で言えば経営陣に出世する――ので、そのクシャナ部長の尻馬に乗っていたクロトワ課長は、めでたく勝ち組のナンバー2ですわ。
景気が抜群に良ければ、野望を抱いて社内に革命を起こすのもいいでしょう。でも今は、ほとんどの企業に挑戦する体力なんてありません。ナウシカ世界と同じく、たったひとつの失敗が致命傷になりうる"戦時下"なのです。だから、組織で決められたミッションを指示通りこなせない社員には、閑職への異動が待っています。実際の戦場でも、個人的な野望を抱いて悪目立ちな行動をとれば、あっという間に狙撃されますよね。意識高い系のスタンドプレーは、戦争が終わるまで、景気が完全回復するまで、ガマンしてください。
ちなみに冒頭のルフィの"名言"が収録されてるコミックス(第9巻)が発売されたのは1999年。その後数年間は今と景況感がまったく違うので、参考になりません。そこにきて、クシャナの名言はいいですよ。「私は私の血みどろの道をいく。親兄弟と殺し合う呪われた道をな......」。クシャナ部長、一生ついていきます!
(稲田豊史)
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