イギリスで業界最大手だったHMVを倒産に追い込んだ原因を、経済学者などが分析し始めたらきりがないのだろうが、我々からすれば原因は至って明白だ。答えは明らかにインターネットのせいである。何でもオンラインでボタンひとつで手に入り、パッケージはなくともコンテンツはデジタルでやり取りし放題。そんな世の中で、生き残る術を編み出すことがついに出来なかったというわけである。
ネットのあらゆるサービスがHMVの凋落を招いたわけだが、ここではその中でもとりわけ大きな原因と思われる6つの要因を挙げてみよう。
iTunes(配信とストリーミングサービス)
アップル社は2003年にiTunesストアを開始。当初、違法ダウンロードなどが横行する中で成功するわけがないと思われていたが、今日までの成長をみれば、その予想はまるで見当違いだったことがわかるだろう。そして物理的なCDを何枚も何枚もストックしていたレコード店、つまりHMVなどはどんどん困窮に追いやったのである。「Spotify」などのストリーミング・サービスの登場はとどめだ。
違法ダウンロード
HMV凋落の歴史を語る上で違法ダウンロードの存在は避けられない。HMVの若い世代のユーザー達は、音楽や映画やゲームが欲しければお店ではなくネット上を探した方がお得だと考えるようになってしまい、そのことは売り上げ云々以前に決定的なまでの文化的な変化を促した。
Amazon(ネットショップ)
1992年にメールオーダー、1999年にウェブショップを開設したHMVも、幅広い商品を取り扱うAmazonには太刀打ちできなかった。安く簡単に商品が手に入るオンラインショップは消費者をお店から遠ざけてしまい、HMV.comの開設も復活も結局は結果を生まなかったのだ。
Steam(ゲームのデジタル配信サービス)
イギリスで最も成長した、市場の大きいメディアはゲームである。しかし従来のように誰もがハコに入ったゲームソフトをお店で購入したいと思っているわけではない。「Steam」などPCゲームのデジタル配信サービスの普及によってApp StoreやXBox Liveはゲームの未来を模索するべく大きく舵を取り、従来のゲームソフト愛好者達はネット上で最安値を探すという事態に。
スマートホン(3G回線)
スマホの普及はネットショッピングをさらに加速させた。HMVの店内にいながらAmazonを探して安い方を選ぶなんてことも出来るのだ。なんなら指先ひとつで注文できるのに、わざわざ店のレジに並ぶことなんてどう考えても不毛に思える。HMVが太刀打ちできるとはやはり考えられなかった。
ストリーミング
「YouTube」「Spotify」「iPlayer」など、他にも映画専門のストリーミングサービスもどんどん一般的になりつつある。違法ダウンロードやAmazonよりも後発のメディアだが、その勢いと影響力は甚大。今やネット上で合法的に何でも無料で手に入る世の中において、最早ディスクを買い求める意義は見当たらなくなってしまった。例えばPSYの「ガンナム・スタイル」が「Youtube」で再生された回数は億単位だがHMVが売ったシングルの枚数はと言うと...。
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