春になると、なぜかいつも以上にボーっとしてしまいますよね。寝ても寝ても寝たりない。仕事も手に付かないくらい眠くなります。
中国の詩人・孟浩然(もう こうねん)さんも1200年前から「春眠あかつきをおぼえず」と言っていたくらいなので、もはや「地球は丸い」と同じく「春は眠い」ものとして疑ったこともありません。でも、ふと考えてみると、なぜ春はこんなに眠くなってしまうのか不思議ではありませんか?
素朴な疑問すぎて真剣に考えたことなかったものですが、一度気になりだすとモヤモヤしてくるもの。ここは、専門家にズバッと解決して、思い切り春眠を楽しみましょう。
「春はどうしても眠くなってしまう現象」の疑問を解明するべく、人間のホルモンバランスなどにくわしい、医学博士の川上智史先生に聞いてみました。
■医学博士・川上智史先生の回答
「春になると外気が暖かくなり、それに伴って体温も上昇してきます。それが心地よく感じてくるために眠くなってしまうのです」
えっ、眠くなる理由は「あったかいから」ですか。けっこう単純な理由ですね。悩むほどでもなかった......。
「簡単すぎる答えで腑に落ちないかもしれませんが、体内で起こっていることを知れば納得するはずですよ。人は心地よく感じると、自律神経系のうち副交感神経が活性化。この副交感神経は眠っているときに活性化している神経です。睡眠時、体はリラックスして交感神経から副交感神経に切り替わりますが、これが昼間でも心地よいために交感神経から副交感神経に切り替わってしまうのです。それにより睡魔に襲われてしまいます」
なるほど、春の暖かさが我々の神経を支配していたのですね。"睡魔に襲われる"とはよく言ったものですね。
「また、冬の寒い時期には体温が下がってしまうために代謝を上昇させようとして甲状腺ホルモンが分泌されます。しかし暖かくなってきて体温が下がりにくくなると甲状腺ホルモンの分泌をさせる必要がないために代謝量も低下してきます。すなわち、春は代謝量が低下して頭が働かなくなり、ボーっとして眠気が誘発されてしまうのです」
春の暖かさは我々のホルモンまでも操っていたとは......。ここまでされたら眠くなってしまうのも当然ですね。
「眠いときにはどのようなことをやっても眠いという経験をしたことがある方も多いと思われます。眠いということは脳が休んでいる状態なので、一度脳をリフレッシュさせる必要があります。単調な作業を繰り返しているとどうしても眠くなりやすいです」
本当にそうです。私は仕事中、パソコンを打ちながらでも寝てしまいます。寝るつもりなんてこれっぽっちもないのに......。指をポキポキならしたりするのですが効果がありません。
「一般的に、身体の一部をつねったりして眠気を覚まそうとする方も多いかもしれませんが、実はこれ、あまり効果はありません。脳をリフレッシュさせるためには一部だけに刺激を加えてもなかなかききません。全身を動かす作業、たとえば立ち上がるなどの刺激が必要です。これは気分転換になり、目が覚めやすくなります。また、眠気を覚ますには環境を変えてみるのも効果的です。デスクワークを行っている場合は、自然な形で立ち上がってみたりお手洗いに行って見るといいでしょう。自分のデスクでお茶を飲むというのもあまり効果的ではありませんので、やはり立ち上がって、環境を変えてお茶を飲むといいですね」
分かりました。さっそくデスクを立ち上がってウロウロしてみます。春はうららかな季節ですが、ボーっとしていると睡魔に食い殺されてしまいます。みなさんも気をつけてくださいね。
(田中結/プレスラボ)
■取材協力
医学博士・川上智史さん
女性の美容や予防医学を専門とし、一般向けに学術講演を行っている。またアンチエイジングアドバイザー、メディカルアドバイザーとして医学的に「美と健康」を追求。軽快な講義と巧みな話で聴講者を飽きさせず女性を中心に人気を集めている。
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