2月26日(現地時間)に行われた第89回アカデミー賞授賞式では、『ムーンライト』が信じられないようなハプニングにしてやられた。確かに、作品賞の受賞作が当初『ラ・ラ・ランド』と誤って発表されたことで、受賞の快挙はかすんでしまったかもしれない。しかし、監督のバリー・ジェンキンズは寛大に受け止めており、本来考えていた受賞スピーチの内容を明かしている。


『Entertainment Weekly』誌のインタビューに応じたジェンキンズは、授賞式の最後に起こった混乱を振り返っている。もし作品賞を受賞したら言おうと準備していたスピーチ内容は、思い出す暇もなかったという。『ムーンライト』の脚本も手掛けて原案のタレル・アルヴィン・マクレイニーと共に脚色賞も受賞したジェンキンズ。作品賞の受賞スピーチを手短に終えた彼は、「完璧でない状況でうまく話せなかったけど、仕方ないかな」と同誌に語っている。

そして、受賞について思い返す時間ができた今、本来言いたかったことを次のように同誌に明かしている。

「『このシャロンという少年は(原案のマクレイニーと)僕だ』。ジェンキンズはマイアミのリバティー・シティー出身で、母親はかつて薬物中毒に苦しんでいたという。『その少年が将来、アカデミー賞の8部門にノミネートされるなんて誰も思わない。そんな夢を持つことさえできなかったし、いまだにそう思う。あり得ない夢だと思っていた。でも、人から見られるようになった今、僕が不可能だと考えていたのなら、皆はどう思うだろう? とにかく夢は実現した。可能性についての話は置いておくとしよう。実現したんだからね』」

また、ジェンキンズは、『ラ・ラ・ランド』のプロデューサー、ジョーダン・ホロウィッツに敬意を表している。ホロウィッツは、受賞作の発表が誤りだったと壇上で明言し、『ムーンライト』陣営の登壇を促した人物だ。ジェンキンズは、特にその瞬間のことを思うと授賞式の夜についてのわだかまりも和らぐようだ。

「忘れられない出来事だ。感動の形でね」

これほどの非現実的な難儀に見舞われながらも寛大さと気品を示したジェンキンズに拍手を送りたい。

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