音楽家・半野喜弘が監督デビューを果たした映画『雨にゆれる女』。様々なドラマや映画で活躍、近年では舞台にも挑戦する女優・大野いとは、本作で、青木崇高演じる主人公を惑わすミステリアスな女を好演し、"大人の女性"としての魅力を開花させている。「女優として追い込まれていくということを、自覚しながら取り組めた作品でした」と語る彼女は、本作とどう向き合ったのか? 話をうかがった。
――登場人物の"匂い"や"温度"を感じる人間臭い日本映画だなと思いましたが、ご自身ではどのように受け止めていますか?
最初はただただ、物語が面白くて、先がどうなるのかなって好奇心で読み進めていて、きっとサスペンスが展開していくだろうなって思っていましたが、完成した映画を観ていて、それだけではないテーマも含まれていたので、すごく感動しました。映像も美しかったですし、物語にわたし自身も引き込まれてしまい、没頭していましたね。
――その感動の理由には、演じる理美に自分自身を投影していたということもあったのでしょうか?
そうですね。演じている時も自分を投影していた部分もあって、映画を観ている時も、その時の自分と重ねあわせて観ることが多いです。今回は、自分が嫌悪感を抱いていた人に、初めて心を開いていく過程がすごく響いた。わたしだけでなく、友だちでも人間関係で葛藤している人もいて、そのシーンには共感しました。
――本当は、そういう壁を乗り越えていけたらと、皆思っていますからね。
わたし自身、他人と上手くコミュニケーションが取れず、悩ましい場面も少なくないので、それで理美に想いが重なるんだと思います。この映画は、女の人が大きな壁を乗り越えていくお話だと思いました。そして、わたしが演じる理美でも、「ああ、強くなっていくんだな」って思えたことが、感動したひとつのポイントなのだと思います。
――青木崇高さん演じる飯田健次とのシーンでは、設定はファンタジーかもしれないですが、ふたりの"普通"を渇望するような想いは、普遍的だなと思いました。
皆に共通する部分や要素は、たくさん入っている映画だなって思いました。
特にふたりが寄り添うシーンで「不公平だよね」っていうセリフは、思い返すと本当にそのとおりで、言いやすかったですね。でもわたしだけでなく、そう感じている人も多そうじゃないですか。だから、そういう意味でも、共感してくれそうな人が多いと思いました。
――こういう題材や役柄の場合、撮影中は相当メンタルを追い込まれたのではないでしょうか?
撮影中上手くいかなくて、午前中で終わる撮影が午後に長引いてしまい、監督に厳しく演出されることもいっぱいあって、落ちこみながら帰り道につくような日々でした。女優として追い込まれていくということを、自覚しながら取り組めた作品でした。全然できない自分と向き合わなくちゃいけなくて、すごく辛かったですね。
――今日はありがとうございました。同世代の女性に観てほしい作品ではありますが、この映画を楽しみに待っているファンに一言お願いいたします。
わたしにとって普通と思っていたことが普通じゃないこともあるということを、この作品を通して気づけたような気がしています。わたしが演じた理美は、大きな壁を乗り越えていく女性ですが、その過程を観ていて自分でも感動しました。彼女ほどの想いじゃないにせよ、何かしら共感することが男女問わずあると思いますので、是非沢山の方に観てほしいです。
映画『雨にゆれる女』は、2016年11月19日(土)より、テアトル新宿にてレイトロードショー
(c)「雨にゆれる女」members
■映画『雨にゆれる女』公式サイト
www.bitters.co.jp/ameyure/
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