『殯の森』(07)、『あん』(15)などを手がけた河瀨直美監督作品『光』が2017年公開されることが決定した。
世界最高峰のカンヌ映画祭において、1997年『萌の朱雀』で新人監督賞カメラドールを、2007年『殯の森』で審査員特別大賞グランプリを受賞するなど世界的評価を受ける河瀨監督が、オリジナル脚本を手がける本作。映画の音声ガイドの製作を通じた、弱視のカメラマンと一人の女性との交流が描かれる。河瀨監督は、物語の着想について「『あん』で初めて音声ガイドをつくった時に原稿確認をしたのですが、音声ガイドそのものが、表現として素晴らしいものだと思いました。原稿を作られた方が、監督以上に作品の事を考えてくれる、同志のように感じられたのです。昨年のカンヌの頃から、音声ガイドの製作をする方を主人公にした作品を作りたい、と考えるようになりました」と明かしている。
主演は、『あん』でタッグを組んだ永瀬正敏。葛藤の中で希望の光を求めさまよう雅哉を演じている。今回演じる弱視のカメラマンという役柄は、永瀬のカメラマンとしての一面を知る河瀨監督によって、「今回の役柄は彼しかいない」とイメージして書かれたもの。雅哉が住むマンションの部屋にある写真は全て永瀬自身が撮りだめてきた未発表のものが使用されているという。
さらに今回、ヒロインとして河瀨監督に見出されたのは水崎綾女だ。バリアフリー映画の音声ガイドとして、その光の中に生きる意味を見出していく美佐子を演じる。この抜てきについて河瀨監督は「感情をそのまま素直に出す所が、美佐子の役柄に合っていると感じたのです」と明かす。ディスクライバー(映画の音声ガイドの原稿制作者)という役柄を演じるにあたって、実際の撮影で使う音声ガイドの原稿も、水崎が書いているとのこと。水崎は「撮影が始まった今も毎日、美佐子の苦労と喜びをリアルに感じています」と撮影現場を語る。
また、美佐子と同じ職場の上司・智子役と劇中映画『その砂の行方』の女優役を神野三鈴が、『その砂の行方』の主演と監督役を藤竜也が演じている。
"映画"というもうひとつの人生を観客と共有するべく音声ガイドの制作にたずさわる美佐子。視覚障碍者向け映画のモニター会で弱視のカメラマン、雅哉と出逢う。映画の光に導かれるように二人は、音声ガイドの製作過程で衝突を繰り返しながらも互いの心をゆっくりと通わせていく。観る者の心にじんわりと温もりを与える、河瀨監督の手腕に期待してほしい。
『光』は2017年公開
©「光」製作委員会
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