俺自身がこの世に公開されてからは50年だ。
いつの間にこんなに時間が経ってしまったんだ?
左の20歳の青年は「右の不平だらけの年寄り野郎みたいになるまで生きるなんてごめんだ」と思っている。
しかし幸運にも、その不平だらけの老人は「少なくとも俺は左のまぬけ野郎みたいにナヨナヨしてないぞ」と思っている。
これは変わらないものなどないと捉えるべきか、それとも逆に全く何も変わらないのだと捉えるべきか。
この件については、かつてモハメッド・アリの言ったことがとても気に入っている。
「50歳になっても20歳のときと同じように世界を見ている男は、人生を30年無駄にしたってことだ。」
俺は、間違いなく世界を同じようには見ていない。
世界は思ったよりももう少しあやふやだった。
体にはガタがきているが、情熱はピンピンしている。これまでに無いほど必死で働いているが、仕事の楽しさもまたこれまでに無いほどだ。多分、健康面でもいままでになく調子がいい。これは遅すぎることなどないということを証明している。同時に、簡単なことなのに体調管理を怠ってきたということの証明でもある。どっちでもいいさ。そして、俺は物事に対して以前よりも落ち着いているように思う。
そして、物事に対して以前よりも怒っている。俺はまだまだ怒っているぞ。俺が怒らなくなったとしたら、そっちの方が問題だ。
俺には幸福が何なのか分からないが、それがただ流れに身を任せることなんかじゃないってことだけは確かだ。流れに身を任せるだって?冗談じゃない。絶対に流れなんかに乗っちゃダメだ。流れをせき止めろ。流れに逆らえ。どんな状況の下ででも流されるな。
ときには他人の羽を逆撫でするかもしれない。しかし、羽を逆立ててもらった方がいいヤツもいるんだ。
覚えておいて欲しい。誰かが怒ったからって、そいつが正しいってことにはならない。
お前には怒る権利があるし、俺はお前を怒らせる権利がある。だが、誰からも絶対に怒られない権利なんてものはないんだ。
ただ単に当たり散らすのはダメだ。それは無作法で、無意味で、言ってしまえば簡単すぎる。いつでも自分が本気で信じることを伝えるんだ。正直になれ。誰も真実に対しては怒ったりしないはずだ。だからお前は決して謝る必要はない。俺はコメディアンの「こんなこと言ってすみません」が大嫌いだ。それなら言わなきゃいいんだ。本気でないなら口にしてはいけないし、本気でやったことなら後悔することはない。コメディアンとしての俺の仕事は、ただ単に人を笑わせることだとは思っていない。人に考えさせることも仕事だ。有名なコメディアンである俺のクラブには、客に対しても厳しいポリシーがある。万人が俺の言うことに笑ってくれたり面白いと思ってくれるわけではない。でも俺には他の選択肢はない。誰にでもウケようとするコメディアンは他にいくらでもいる。そいつらの幸運を祈るよ。ただ俺はそのゲームには参加しない。
民主主義じゃないんだからな。他のどんな芸術もそうでないのと同じだ。
俺はものを作るプロセスが好きで、俺自身の仕事に関しては完全に独裁者でありたいと思っている。それが俺の唯一のやり方なんだ。他はない。
俺はかなりのダーウィン信奉者だ。俺のやり方で生き残るか淘汰されるか。だけど俺はここにいるぜ。
人生を楽しめ。人生が続く限り。だってそれがすべてだろう、お前ら。人生を最大限に活用しろよ。
今まさに、俺はいつもより3時間早く起きて俺の新しいコメディ『Life is Too Short』を撮影しながら、人生をぞんぶんに味わっている。
俳優たちが正しい仕事をしたときに人生を楽しみ、
俳優たちが間違いを冒したときにも人生を楽しむ。
人生は、本当に、短いんだ。
特に、くそいまいましい流れなんかに身を任せていては。
(原文:Life's Too Short to Go With the Flow )
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リッキー・ジャーヴェイス
スーパーモデル、俳優・コメディアン・脚本家
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