日本におけるお笑いの文化を確立した、なにわの看板寄席"グランド花月"が9月29日から4日間、東京にやってくる。ボケに突っ込み、全員でずっこけるという本場大阪テッパンの技術を50年以上育み、多い日には1日8公演(!)行われることもあるという。永らく新喜劇を率いてきた川畑泰史座長と、今やすっかりなにわ節を東京トーンに変換しブレイクしたNON STYLE(石田明、井上裕介)、さらには新喜劇に憧れを見せる売れっ子芸人・横澤夏子という異なる芸風を持つ彼らに、互いの芸風をどう見ているのか?独自のスタイルを貫くお笑い談義に花が咲いた。
――大阪の新喜劇をそのまま東京で披露するということは、もうホームの感覚ですか?
川畑泰史(以下、川畑):そうですね。ネタとかに関しては、ほんまにいつもとまったく同じでいく感じですけど、意気込みはめちゃめちゃありますよ!すごいプレッシャーも感じてますし、すでに緊張もしてます。大阪までなかなか足を運べない方に、ほんまに来ていただけたらなって。
――川畑座長的には、後輩たちの躍進をどうご覧になっています?
川畑:NON STYLEは頑張ってたところを、大阪からずっと見ていますからね。ほんまに頼もしいです。僕らは大阪でしかやってないんで、こんだけ東京で活躍してくれてる同じ事務所の人がいてはるから、こういう機会も得られるわけですし。横澤なんかドラマにも出てますし、どれだけありがたいかってことですよね。もっと行け!って思ってますよ。
――花月では1日3~5公演もあるそうですが、しんどくないですか?
川畑:前の晩よう寝るくらいしか...あとはケアのしようがないですよね。
井上裕介(以下、井上):5公演とか絶対嫌ですけどね...。
石田明(以下、石田):めっちゃ大変ですよね。
川畑:正月は8公演とかあるから。
横澤夏子(以下、横澤):えっ!
井上:俺、そんなスケジュールやったら「人の体を何や思てんねん」って言う。もう若くないですからね。
――川畑座長は、井上さんのような気持ちはまったくないんですか?
川畑:いや、しゃあないっすからね~。
井上:だって、俺らや夏子とかも出番が(漫才なので)5~10分じゃないですか。新喜劇、1時間ありますからね。俺、無理っすわ。
横澤:ずっと出ずっぱりですしね。
川畑:でもねぇ、思ってるほどしんどないですよ。新喜劇って自分しゃべったら何回かあってから自分回ってくる、みたいなんあるから、9人制のバレーボールやってるみたいなところあるんです。でも、漫才って1対1でバレーボールしてるみたいな感じなんですよ。「せわしな!」思て。尋常やないと思いますわ。
――それでいくと、横澤さんはお一人でのパフォーマンスですね。
横澤:私、掛け合いがすごく苦手なんですよ。ずっと一人で架空の人としゃべってるんで(笑)。新喜劇は相手の台詞も覚えなきゃいけないじゃないですか。すごい大変だなって。
川畑:いやあ、新喜劇って稽古の日が決められてるから、ある種しゃあなしで行くんです。一人の人が大変なのって、自分だからサボろう思ったらなんぼでもサボれるし。なあ?
横澤:私、街中で電話とかしてるふりして練習したりします。
全員:へえ~~。
井上:えらいなあ...。
石田:すごい。
横澤:どこでもできるんで。だからバイトもいつでもできるので、というのもあります。...なんか、いい子みたいになっちゃって(笑)。
井上:そんなんしてるから、今、花開いてんねんやって。
――気になるNON STYLEさんの練習法は?
井上:俺は練習嫌いやし、ネタ合わせしたないし、1日何本も舞台するの嫌やし、ずうっと文句言ってる感じっす。特に、俺は石田じゃないとこの世界やってないです。
石田:こいつ、ポジティブなんか、かけらも持ってないですよ。こいつほどネガティブなやつ、いない。
全員:(笑)。
――石田さん、全然笑っていませんね(笑)。
石田:僕、井上と出会ってから1回も井上の言うことで笑ったことないですから。昔から関係性でそうですから。「面白いこと言うてはるな」って思っていますが、僕、もともと人の言うたことで笑うやつじゃないので、すいません(笑)。
川畑:(大笑い)
――本番中にネタが飛んだりすることはあるんですか?
石田:ありますよ。
川畑:新喜劇は、ほぼベテランさんは台詞を覚えていないですからね。
横澤:えっ、どうなるんですか?
川畑:極力ごまかそうとするんやけど、ごまかされへんときは、「この人、飛んだ」みたいな話になったりとか。
井上:そこは座長の腕の見せ所ですよね。
川畑:見せ所やけど...、多いっすよね最近、ほんまに。
――NON STYLEさんの場合は、飛んじゃった場合どうするんですか?
石田:ふんわり次の展開に...。
井上:覚えているほうがもっていくしかないですよね。最悪、漫才なんで「もうええわ」言ったら終わりますんで。その辺が新喜劇とは違っていい意味で自由ですよね。ほかに迷惑をかけることがない。俺らはすべったらすべったで自分に返ってくるだけですけど、新喜劇の場合はその後のバトンがね、腐ったバトンになるから。
横澤:...怖い!
――話を聞いていると、新喜劇と漫才、ピンでのネタなど一口にお笑いと言っても、向き合い方が全然違いますね。
井上:新喜劇はどっちかと言うと、テレビの収録に近いです。テレビの収録は団体芸なので。
――AOL読者はサラリーマンが多いのですが、代表して横澤さん、ぜひメッセージをお願いします。
横澤:いつも、婚活パーティでお世話になっています♥
全員:(笑)。
川畑:実物のほうが2割増かわいい。
横澤:太字で書いてください!
石田:でも3割増でうざいです(笑)。
横澤:プラマイ、マイナス...。
――では仕切り直しで、川畑座長、一言お願いします。
川畑:読者さんは、働き盛りの世代で一番小金も持ってはりそうなんですけど、奥さんに握られたりとかで、自由になるお金が少ない世代でもあると思います。そんな小遣いで、われわれ同世代のおっさんらが、アホなことをしてる姿をぜひ見にきて、明日の活力にしてください。(取材・文・写真:赤山恭子)
「東京グランド花月」は9月29日(木)~10月2日(日)、サンシャイン劇場にて公演。
■「東京グランド花月」公式サイト
www.yoshimoto.co.jp/tgk/
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