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ハリウッド俳優・尾崎英二郎が語る海ドラ『ハウス・オブ・カード野望の階段』の魅力 第1回「愛されない政治家・フランクが人々を魅了するワケ」

2016/08/03 18:30 投稿

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オバマ米国大統領や安倍首相をはじめ、各国のトップ、各界のトップもファンを公言する、かつてない社会派ドラマ『ハウス・オブ・カード野望の階段』。現実の世界でも、大統領選を間近に控えており、共和党候補のドナルド・トランプと民主党候補のヒラリー・クリントンの戦いを世界中が見守っているが、そんな現実世界同様に、本ドラマの物語もついに大統領選に突入!
AOLでは、『ハウス・オブ・カード野望の階段』のフランク&クレアを大プッシュしていくと共に、本ドラマをリアルな視点で紐解くべく、『ラストサムライ』『硫黄島からの手紙』などに出演するハリウッドを拠点に活躍する日本人俳優・尾崎英二郎さんによる連載企画、『ハウス・オブ・カード』の魅力を計3回にわたって紹介していこう!



【なぜ「愛されない政治家」フランク・アンダーウッドが人々を魅了するのか?】


現実に大統領選挙戦の真っ直中である2016年。米国の政界のトップの座を狙うのは、共和党候補のドナルド・トランプと民主党候補のヒラリー・クリントン。

人種差別を増幅させるような極端な暴言の数々や政策方針で、いまや"移民国家アメリカ"の幅広い層から毛嫌いされているトランプ。一方、前国務長官時代に公務で私用メールを使っていた問題がくすぶり続け、危機管理責任の感覚を今も国民の6割近くから疑問視されているクリントン。

特に民主党は、社会的弱者や若者たちに配慮した手厚い政策を掲げて熱い支持を受けていたバーニー・サンダースが、この夏の党大会直前まで、党の代表候補の指名争いでクリントンに対しギリギリまで攻防を繰り広げたため、世間の人気を完全に二分していた。

今、アメリカの国民は「希望を抱ける大本命の候補者」がいないまま、11月の大統領本選を迎えようとしている混沌状態にあり、かつてオバマ大統領を生み出した時ほどの興奮の空気にはまだ達していない。

皮肉にも、『ハウス・オブ・カード 野望の階段』の主人公フランク・アンダーウッド(ケヴィン・スペイシー)は「特別に愛されてはいない政治家」という点で、トランプやクリントン両者とやや共通している。フランクは、国民から直接選ばれた大統領ではない。復讐心と陰謀の限りを尽くして、前職の大統領ギャレット・ウォーカーを失脚に追い込み、その代理としてトップの椅子に座った男だ。支持率が決して高くないまま、シーズン3&4ではついに初めて挑む大統領予備選と本選に突入していく。

ではなぜそんなフランクが、視聴者からの共感を得て、この政治ドラマを稀有な人気シリーズに押し上げたのか?

彼の政策の軸は、国民のための大胆な雇用拡大にある。「アメリカ・ワークス」という、米国各州に新たな雇用の機会を生むため政策を、議会の議員たちの妨害にあっても、たとえ違法すれすれのやり方であっても、実現に向けて全力で押し進めてきたのだ。
シーズン1で、前職の大統領陣営にあっけなく裏切られたフランクは、党をまとめ得る実力を持ちながらも、恵まれた境遇のスタートを切ることができなかった。彼の政界でのキャリアは、挫折そして冷や汗をかくような危機の連続だ...。しかし、失意が訪れる度に、その闇に沈むことなく熟慮し、時には圧巻のスピードと機転による「決断」によって、ピンチの数々を次から次へと乗り越える。

その姿が頼もしく、小気味よいのだ。取り返しのつかない犯罪まで実際には犯し、背水の陣にいるフランクだが、そのポジティヴで強い精神と実行力に、視聴者たちはいつのまにか「比類の無い資質」を見出しているといってもいいだろう。

揺るぎない「決断」と、留まらない「行動」

これこそが、フランク・アンダーウッドを"次期大統領"に!とつい思わせる、人気の秘密だろう。彼の不断の姿勢を見つめていると、彼が罪人であることをつい忘れて、勇気をもらうことさえあるのだ。


【ハリウッド業界と米国社会に風穴を空けた、名女優ロビン・ライトの意地】


これまで「政治劇」というジャンルは、女性にはあまり人気がなかったかもしれない。しかし『ハウス・オブ・カード 野望の階段』は、ハリウッドという社会の壁をも突き崩す役割を果たし、世の女性たちの称賛を浴びている。大統領夫人クレア・アンダーウッドを好演し、これまで全52エピソードに出演しているロビン・ライト。製作指揮の一人としても名を連ね、シーズン3&4では、実に6度にわたり監督も務めている。

ロビンは、番組のデータではクレア役の人気がケヴィン・スペイシーを超えていた時期さえあることや、自分の同ドラマシリーズへの貢献度の大きさを製作サイドに訴え、ケヴィンと同額となる内容の昇給を要求したという。彼女がフィクションの中だけでなく、現実の社会でも男女格差を覆したニュースは、多くの国民に勇気を与えている。

このドラマでは、冷酷で強引な権力者に決して屈しない女性たちのパワーと意志の強さが何度となく描かれ、クレア・アンダーウッド役はその象徴とも言える。シーズン2からは、米国の宣伝ポスターに写っているのは、必ずケヴィン・スペイシーとロビン・ライト両名だ。

特にシーズン4では、大統領フランクが人生最大の危機に陥り、ずっと政治上の経験不足を指摘されてきたクレアが、夫以上の才覚と図太さを見せつける場面が訪れる。それらのエピソードをロビンが監督としてメガホンをとり、確かな手腕で描き切っているのだ。クレアが某国に乗り込み、一筋縄ではいかない政界リーダーとしのぎを削る激突は、爽快でさえある。

そしてついに彼女が政界の表舞台の脚光を浴びる姿を描いた章をロビン自身が手がけた演出は、シーズン中でも屈指の忘れ得ぬ感動エピソードとなっているので、女性ファンにも男性ファンにも是非観て欲しい。

今、もし現実の世界で、クレア・アンダーウッドが大統領候補に立候補したとしたら、支持者の票は、ヒラリー・クリントンよりもクレアに多く集まるかもしれない。それほどの値の存在感を彼女はドラマの中で見せている。


※第2回目は8月5日掲載予定

文/尾崎英二郎(俳優)


NHK朝の連続テレビ小説「あぐり」でテレビデビュー。NYオフ・ブロードウェイでの舞台公演『ザ・ウインズ・オブ・ゴッド』の演技で現地メディアの評価を得たことを契機に、日本から米国業界に挑み、トム・クルーズ主演の映画『ラストサムライ』、主要キャストに抜擢されたクリント・イーストウッド監督作『硫黄島からの手紙』に出演後の07年に活動拠点をハリウッドの地に移す。主な出演作に『HEROES/ヒーローズ』、マーベル『エージェント・オブ・シールド』、スピルバーグ製作総指揮のSFドラマ『エクスタント』など。最新作は、戦時中のアメリカの父子の絆を描いたファミリー映画『リトル・ボーイ 小さなボクと戦争』(8月27日より公開)。ハリウッドの映画・テレビ界に参入した道のりと戦略を綴った『思いを現実にする力』著者。


『ハウス・オブ・カード野望の階段』DVD情報

シーズン3:2016年7月6日(水)ブルーレイ&DVD発売中、DVDレンタル&デジタルセル 同時リリース
シーズン4:2016年8月3日(水) ブルーレイ&DVD発売中、DVDレンタル&デジタルセル 同時リリース
発売元・販売元:(株)ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
(C)2015 MRC II Distribution Company L.P. All Rights Reserved.
(C)2016 MRC II Distribution Company L.P. All Rights Reserved.



■参照リンク
『ハウス・オブ・カード野望の階段』公式サイト
http://house-of-cards.jp/


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