間もなくブラジル・リオデジャネイロで開幕するリオ五輪。巷では、連日、オリンピック特集が組まれ、過去にメダルを獲得した日本人選手へのインタビューや、これまでの名場面を振り返る形での特集などが数多組まれているが、そんなオリンピックイヤーでも、なかなか世間の注目を浴びることのない、かつての日本人メダリストたちがいる。
藤田隆治&鈴木朱雀の両名だ。
藤田、鈴木の両名が、今からちょうど80年前に行われた1936年のベルリン大会に代表選手として出場、見事、二人揃って銅メダルを獲得するという快挙を成し遂げているにもかかわらず、数々のメディアで「五輪特集」などが組まれても、これまでほとんどその名が登場することはなかった"不思議な選手"なのだ。というのも、彼らが代表に選ばれた種目は、「芸術競技」と呼ばれるもので、1912年に開催されたストックホルム五輪から1948年のロンドン五輪まで、たった7回しか競技として採用されていなかった珍種目であるからだ。
しかも、この「芸術競技」は、その名が示すように、何か「スポーツの種目」を競うのではなく、「スポーツ」を題材とした「芸術作品」によって優劣を決めるというもの。本選でしのぎを削るのは、本人たちが生み出す「作品」だったのだ。二人が銅メダルを獲得したベルリン大会では、藤田が「氷上ホッケー(アイスホッケー)」という作品を、鈴木が「古典的競馬」という絵画でエントリーしている。
ちなみに、その後の二人の人生はというと、藤田は北九州へと移り住んで創作活動を続け、のちに佐賀大学講師に。一方、鈴木は雑誌の表紙の絵や挿絵を中心に、歴史上の人物画を手掛けるなど、創作活動を続け、終生"現役"を貫いたようだ。とかく、五輪のメダリストと言うと、鍛え抜かれたその肉体が印象的なアスリートばかりを思い浮かべがちではあるが、その実、彼らのような"文系メダリスト"たちも、その長い歴史の中には存在していたのである。
文・藤橋檎凜
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