モスクワ<ロイター>によると、ロシア正教会の大聖堂で反プーチン政権のゲリラ演奏を行なったことで2年の実刑判決を受けたパンクバンド、「プッシー・ライオット」のメンバー3人の控訴審が10日開かれ、モスクワ市裁判所は2人については1審判決を妥当とする一方で、エカチェリーナ・サムツェヴィッチ被告のみ執行猶予付きに判決を変更し、彼女を釈放した。
審理の中でサムツェヴィッチ被告の弁護士は同裁判所に、彼女は問題のパフォーマンスが行なわれる前に警備員に阻止・連行されたため、「パンク・プロテスト」に参加することは不可能だったと述べ、それが認められた格好だ。
「プッシー・ライオット」のメンバー 、ナジェージダ・トロコンニコワ(22)、マリア・アリョーヒナ(24)、そしてエカチェリーナ・サムツェヴィッチ(30)の3人は3月のロシア大統領選直前の2月21日、大聖堂で聖母マリアにプーチンを追放してくれるよう嘆願する歌を演奏したことで、フーリガン(暴徒)行為と「教会や信者を侮辱し、社会秩序を乱した」として、8月に実刑判決を言い渡され控訴していた。
この事件に関してはマドンナやスティングをはじめとする世界中のアーティスト多数が「判決は厳しすぎる」として、バンドメンバーの釈放を求めて支援を表明し、欧米諸国でも人権上の観点からロシア批判が強まったが、反対運動にショックを受けたロシア国民のあいだでは世論は分かれていた。
日曜日にテレビで放映されたインタビューの中でプーチン大統領は1審の判決を弁護し、「彼女らが逮捕されたのは正当な結果で、国の基本的な道徳と価値観を弱体化させる行為は許せないという観点から、判決も正当なものだ」と述べた。
被告側のマーク・フェイギン弁護士は、1審ではプーチン大統領が政治的に介入し、今回の控訴審でも週末のコメントで世論を操作し控訴に影響を及ぼした、と非難している。
<釈放されたエカチェリーナ・サムツェヴィッチ>
審理の中でバンドメンバーは、演奏の意図は正教会や信者を侮辱することではなく、プーチン大統領と正教会リーダーの癒着関係に反対意見を唱えることだった、と訴えたが、それは考慮されなかった様子。
マリア・アリョーヒナはケージの中から法廷に、「私たちは自らの政治的信念のために獄中にいます。判決が支持されたとしても、沈黙はしません。たとえモルドヴィアやシベリアにいたとしても、沈黙はしません、どんなにあなた方にとって不愉快であっても」と述べた。
モスクワ総主教キリル1世がプッシー・ライオットの行為を「冒涜的」であるとし、ロシアの伝統的価値観、また教会に対する攻撃だ、と発言したことから、ロシア国内ではプッシー・ライオットの支持は限られている。
9月21〜24日に独立機関のレヴァダ・センターが調査したところによると、ロシア国民のあいだでは35%が禁錮2年の実刑判決を「妥当」とし、34%は「寛大すぎる」、そして14%が「厳しすぎる」と評価したそうだ。
その一方で先月メドヴェージェフ首相は、3人はすでに長期間拘束されており、1審判決は「重すぎる」として、執行猶予で十分なのではという見解を示していた。今回の判決はある意味、プーチン大統領とメドヴェージェフ首相の力関係・影響力の割合を表したものと言えるかも知れない。
<モスクワ裁判所、「プッシー・ライオット」メンバー3人のうち1人を釈放>
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記事元:HuffPost World
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